食道器官支瘻 ショクドウキカンシロウ

初診に適した診療科目

食道器官支瘻はどんな病気?

食道器官支瘻とは食道や気管支に小さな穴が開いて食道と気管が瘻孔と呼ばれる通り道でつながった状態を指します。
食道と気管は全く異なる役割を果たす別の器官です。
気管は首から胸部にかけて腹側に位置しており、食道は背側に並んで位置しています。気管は空気の通り道で食道は食べ物の通り道です。

食道と気管に通り道ができることによって食べ物や唾液、胃液などが肺に流れ込み、せきや窒息、呼吸困難を引き起こします。
誤嚥性肺炎や気管支炎を発症することもあります。疾患が改善されない限り、これらの症状は繰り返し起こることが多いです。

食道器官支瘻は先天性のものと、後天性のものに分けられます。後天性の場合腫瘍や炎症の影響で瘻孔が形成されるケースが多いとされています。また気管食道瘻がみられる小児の場合、脊椎、心臓、腎臓、性器、耳、四肢の異常や発達の遅れなども同時に見られるケースが多いです。

先天性か後天性かに関わらず手術による治療が一般的です。

主な症状

食道器官支瘻の症状は先天性か後天性かや、瘻孔の位置、大きさ、食道から気管への角度によってもそれぞれ異なります。
先天性の食道器官支瘻の場合、食道が胃までつながっているかどうかによっても症状が異なります。
食道が胃がつながっていない場合、胎児や子供が飲んだ羊水や母乳が逆流しやすいため激しい咳込み、チアノーゼなどが症状として現れます。
また食道が胃までつながっている場合は気管支炎を繰り返したり、肺炎や食べ物などを飲み込んだ際の咳込みが代表的な症状と言えます。

瘻孔が肺に近い、大きいほど重度の肺炎を引き起こすリスクが高いです。同じく瘻孔の角度が急な場合も、食べ物が気管に入りやすいため肺炎につながりやすいと言えます。
乳児や幼児の段階で発見されるケースだけでなく、成人してから発見されるケースもあります。
特に無症状の場合、成人するまで発見されないケースが多いです。

後天性の食道器官支瘻の場合、瘻孔が形成される際にのどや胸部に痛みを生じます。
のどの異物感や物を飲み込みにくいと感じることが多いです。むせやすくなり、肺炎や気管支炎を繰り返すのも典型的な症状と言えます。

主な原因

食道器官支瘻は生まれつきによる先天性の場合と、合併症などによって発症する後天性の場合があり、どちらかによって発症の原因も異なります。
先天性の食道器官支瘻の場合、食道と気管の分化の段階で何らかの異変が生じ、食道と気管がつながったままの状態で生まれます。
食道の元となる器官はごく早い段階で形成が始まります。
食道と気管は役割も異なる別の器官ですが、元々はひとつの管が分化してできたものです。
食道が途中でふさがっており、胃側にの下部食道が気管と通じているケースが最もよく見られますが、通じ方はさまざまです。

後天性の食道器官支瘻は食道がんや放射線治療後、高エネルギーな外傷や炎症などを原因として発症します。食道がんの合併症として発症するケースが多く、食道がん全体の5~15%と高い確率で合併するとされています。食道がんが進行し気管に広がって、一部のがん組織が崩れ落ちることで食道と気管、気管支に瘻孔を形成します。

主な検査と診断

食道器官支瘻の診断には上部消化管内視鏡検査、気管支鏡検査、食道造影検査、胸部・腹部レントゲン写真、胸部CTなどが行われます。
上部消化管内視鏡検査や気管支鏡検査では、食道や気管の内部を観察できるため、瘻孔の位置や大きさなどを確認することが可能です。
食道造影検査は造影剤を用いて食道を撮影する検査で、多くは内視鏡検査と同時に行われます。明らかな瘻孔が造影でき、大きさや位置、瘻孔の角度まで確認できます。

胸部・腹部レントゲン写真は必要に応じて行われる検査で、腹部に溜まったガスなどを確認できます。
先天性の食道器官支瘻で重症な場合、腹部にガスがたまって膨満するケースがあるためこの検査が行われます。

胸部CT検査では末梢の気管支に形成された小さな瘻孔まで確認できるため、気管支鏡検査で確認できないような瘻孔も精密に観察できます。気管支鏡検査によって食道器官支瘻の可能性が疑われる際に、さらに詳しく瘻孔を調べたい場合に行われる検査です。

主な治療方法

食道器官支瘻の治療は先天性か後天性かによって方法も異なります。
先天性の食道器官支瘻の場合、手術による治療が一般的です。
食道と気管を正しい位置に戻すために瘻孔を切除し、食道と気管にある穴をそれぞれふさぐ方法です。
ただ子どもの食道気管支瘻は症状が悪化している場合には栄養療法によって状態が落ち着かせてから手術を行うケースが多いです。
その場合には中心静脈カテーテルなどが用いられます。

後天性の食道器官支瘻の場合も手術による瘻孔の切除と閉鎖が根本的な治療法と言えます。
末期がんなどで手術を行うことが困難な場合には内視鏡を用いて食道にステントを入れる方法が採用されます。
この治療によって食道から肺へ食べ物や飲み物が入り込むのを防ぐことができ、誤嚥性肺炎を防ぐことができます。
ステントによって食道が広がり、食べ物がのみ込みにくいなどの症状の改善が期待できます。食道がんを発症している場合にはその治療も行われます。