縦隔炎

初診に適した診療科目

縦隔炎はどんな病気?

縦隔炎とは縦隔が感染を起こし、炎症が生じている状態を指します。
縦隔とは胸郭の入り口部を上方に、下方は横隔膜、前方は胸骨、後方は脊柱によって囲まれた胸部にある空間で、心臓や大動脈、食道、胸腺、甲状腺など、多くの臓器がその中に存在します。
縦隔炎は突然起こる急性の縦隔炎と徐々に発生する慢性の縦隔炎とに分けられます。
特に慢性の場合、多くは長期間刺激にさらされたり感染症が長引いた結果として発症することが多いです。

縦隔炎は、ほとんどの場合感染症によって発症します。
この感染症は食道の裂傷や胸部の手術を原因として感染するケースが最も多いとされています。
症状としては強い胸の痛み、息切れ、発熱などが典型的なものとして挙げられます。発熱や悪寒は感染症の症状である場合も多いです。手術後に発症した場合には手術で切開した部分部から液体が漏れる場合もあります。徐々に現れる息切れは慢性線維性縦隔炎の代表的な症状でもあります。

主な症状

縦隔炎を発症すると自覚症状として胸の痛み、呼吸のしづらさなどが現れます。
つばや食べものを飲み込んだ際に痛みを感じる場合もあります。
縦隔は胸部にあるため、これらの胸部症状が現れやすいという特徴があります。突然胸部に強い痛みや息切れを生じた場合は食道が裂けたことで生じた可能性があります。

また胸部症状がはっきりせず、全身的な症状だけが出現する場合もあります。発熱や頻脈などが例として挙げられます。
また顔や首、胸の皮膚が赤くなるといった症状や、感染症の症状として発熱や悪寒などが現れることもあります。感染が重症化すると敗血症ショックにつながるおそれがあるため経過には注意が必要です。適切な治療がされずに放置されると炎症が広がって命に関わる可能性もあります。

また慢性の縦隔炎の場合、急性の縦隔炎と比較して症状が乏しいという特徴があります。そのため自覚症状がまったくなく、他の疾患の検査などによってはじめて発見されるケースもあります。

主な原因

縦隔炎は縦隔に細菌が入り込んで感染することを原因として炎症を引き起こします。
本来縦隔内は無菌状態であるため、感染すると重症化しやすい傾向があります。
細菌感染は内視鏡検査や異物誤嚥による食道の穿孔・破裂が原因で起こることが大半で、単一の細菌感染の場合もあれば複数菌によるものもあります。
手術後に発症するケースも多く、心臓、食道、肺など胸(胸腔内)の手術の中でも特に多いのが胸骨を切る手術をした場合です。
胸骨正中切開と呼ばれる処置は心臓移植、心臓弁の手術などで行わるもので、胸骨の部分を縦に切開し胸骨を2つに分けて開く処置を指します。

また、抜歯後に細菌感染したり、扁桃周囲炎による口や喉の感染、食道穿孔、気道損傷、結核などの感染症、縦隔気腫、気胸なども例として挙げられます。
また免疫力が低下している人も感染を起こしやすいとされており、糖尿病を患っている人などは注意が必要です。

また無理な嘔吐、胸部のけがなどによって食道が裂けてしまった場合や、ボタン電池などの腐食性物質の誤飲によって食道が裂ける例もあります。

主な検査と診断

縦隔炎の診断には胸部X線検査、CT検査、MRI検査などの画像検査が行われます。
胸や食道の手術を行ったばかりであるなど、縦隔炎の原因となる状態が明らかな場合は症状から診断をくだす場合もあります。
結核などの感染症にかかっている場合にも縦隔炎が疑われます。突然発生する急性の縦隔炎は非常に激しい症状を伴います。
原因となる無理な嘔吐や誤飲について覚えていない人や、幼児のようにそれを伝えることができない人でも、強い症状から縦隔炎を疑うことは可能です。

確定診断には、胸部X線検査かCT検査が必要です。MRI検査では炎症や膿瘍の有無をより詳しく確認することができます。また穿刺吸引細胞診と呼ばれる方法で採取した液体を顕微鏡で調べる場合もあります。この検査は胸骨正中切開を受けた患者が縦隔炎を発症した際に行われることが多いです。

必要に応じて血液検査によって全身の炎症の程度、他の臓器へ影響があるかなども調べます。

主な治療方法

縦隔炎の治療は抗菌薬などによる内科的治療か手術が検討されます。
内科的治療では感染症治療のために抗菌薬による治療が行われる他、保存的治療が選択される場合もあります。
特に気管や食道に穴が開いたことによって発症した縦隔炎の場合は点滴で栄養を補給し、穴がふさがるまで絶飲絶食を保ちながら経過を観察します。

手術の場合は膿を排泄するための頚部ドレナージ治療、開胸術による縦隔、胸腔ドレナージ・洗浄治療などの方法があります。
また裂けた食道を修復することを目的とした手術も必要に応じて行われます。食道がんや扁桃周囲炎、抜歯を原因として発症している場合は、経過が不良である場合が多いとされています。また、一度重症化してしまうと治療に時間がかかったり、治療が困難になるケースもあります。

特に急性の縦隔炎は重症化すると命に関わるケースもあります。早期の段階で医療機関を受診し、適切な処置を受けることで重症化を防ぐことが大切です。