ミエロパチー ミエロパチー

初診に適した診療科目

ミエロパチーはどんな病気?

ミエロパチーとは脊髄症とも呼ばれる脊髄の障害であり、特にレトロウイルスの一種であるヒトTリンパ球好性ウイルスI型(HTLV-1)の感染によって、脊髄に障害が起こる病気のことを指します。
成人女性が多く発症するといわれ、日本では九州や沖縄など、HTLV-1に対する抗体陽性者が多い地域で発症率が高くなる傾向があります。
症状としては歩行障害や排尿障害など。重症になると四肢が脱力し、筋委縮なども起こります。

HTLV-1は母乳や体液に含まれるウィルスであるため授乳や性交によってウイルスに感染し発症することが多いです。
ウィルスは神経へ移行して脊髄に入り込み脊髄に炎症反応が生じます。これによって脊髄の正常な機能が妨げられることでミエロパチーを引き起こします。

脊髄には運動と感覚に関連する重要な組織が多く集まっており、神経系の他の病変と比較すると四肢麻痺、対麻痺、感覚障害などを生じることが多い点も特徴です。

主な症状

ミエロパチーの中でもHTLV-1によるものは、慢性的な炎症反応をきっかけに発症します。
徐々に病気が進行するのが特徴で、数年単位の経過を経て発症するケースも少なくありません。

脊髄が障害を受けるため歩きにくい、つまずきやすい、足がもつれる、などの運動に関連する症状をはじめ、便秘、残尿感など排尿に関連する症状が目立ちます。
中でも代表的な症状は下肢の筋力低下と痙性による歩行障害で、多くの場合は左右対称に症状が現れます。歩行障害の症状が進行すると車椅子での移動が必要な状態になったり、座った姿勢を保持できない状態になるなど日常生活の質が著しく低下する恐れがあります。
さらに症状が進行した場合、腕の筋力低下が現れることもありますがかなりまれなケースと言えます。

運動障害はほぼ必ず現れますが、感覚障害や膀胱直腸障害、自律神経障害などは運動障害と併せて現れることがあります。排尿に関わる障害は初期症状として現れることも多いです。下半身の発汗障害なども特徴的な症状です。

主な原因

ミエロパチーの中でもHTLV-1によるものは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)への感染を原因として発症します。
感染の経路としては授乳を介して子供へ感染するケースや、性交渉によってパートナーへ感染するケースが代表的です。
これはHTLV-1ウィルスが母乳や体液に含まれているためです。このウィルスが感染するためには他者の体内に入ることが必須条件であり、その点で感染力は極めて弱いとも言えます。

また過去には輸血によってウィルス感染するケースもありましたが、現在では血液製剤に対してスクリーニング検査が行われているため輸血による感染の危険性はほぼ無くなっていると言えます。
ごくまれな例としては臓器移植による感染も原因の一つとして挙げられます。

HTLV-1感染細胞が増加したり活性化したりすることで脊髄の慢性炎症が起こります。
それによって脊髄組織が破壊、変性することによってミエロパチーを発症すると考えられています。

主な検査と診断

ミエロパチーの中でもHTLV-1によるもの診断は、血液や脊髄液の検査によってHTLV-1に感染していると確認する必要があります。
血液や脊髄液を調べることで、体内で産生される抗体を測定することができます。
抗体の測定方法にはPA法、CLEIA法、CLIA法、ECLIA法などが挙げられます。この検査で陰性の判定が出た場合は、HTLV-1感染ではないという結論になります。
陽性の中には実際には陽性ではない偽陽性が含まれる可能性があり、確認検査が行われます。確認検査を含めた2段階の検査で陽性を示した場合にはじめて診断がくだされます。

またPCR法と呼ばれる検査方法は、ウイルス特有の物質の検出を目的に行われます。
抗体の有無を調べる検査において確かな結果が得られなかった際にPCR法による検査を行うことで、より正確で信頼性の高い診断となります。

そのほかにも症状が似ている疾患の可能性を排除していくために必要に応じて血液検査やMRI検査が行われる場合もあります。

主な治療方法

ミエロパチーの中でもHTLV-1によるものの治療には、免疫調整作用に重点をおいた治療法が選択されます。
神経の炎症を抑えるステロイド、インターフェロンなどの薬剤が使用されることが多く、特にステロイドによる内服治療は奏効率が高いとされています。

また日常生活の質を改善も重要で、足の動かしにくさ、痛み、排尿排便障害などの症状を緩和するために、痛み止めの使用やリハビリテーション、自己導尿、杖の使用などが検討されます。
発症早期に歩行障害が進行しする場合には約2年以内に片手杖での歩行レベルになる可能性があり、治療やリハビリテーションの時期を逃さないことも大切です。
また、発症後長期にわたり症状が進行しなかったり、ある程度の障害が現れたところから進行しなくなるといったケースもあります。
この場合には定期的に経過観察を続け、症状の進行に備える必要があります。

ミエロパチーの中でもHTLV-1の治療においては症状が進行するスピードに応じた治療が選択されるため、その見極めも重要です。
これを評価するのに有効性が高いとされているのが髄液検査です。