アナフィラクトイド紫斑病 アナフィラクトイドシハンビョウ

初診に適した診療科目

アナフィラクトイド紫斑病はどんな病気?

アナフィラクトイド紫斑病とは、IgA血管炎とも呼ばれる、アレルギー反応による小血管の炎症に基づく紫斑病の一種です。
以前はヘノッホ・シェーンライン紫斑病、アレルギー性紫斑病などとも呼ばれていました。
3歳~10歳頃の子供に特に発症が多く、小児では最も頻度の高い血管炎とされています。また男女比は2:1となっており男児に多い傾向があります。
扁桃炎などの上気道感染症にかかった後、脚、臀部に紫斑が現れるとともに、関節痛や激しい腹痛などが起こります。腎炎を合併する場合もあり、合併した腎炎が重篤な場合には、腎不全に至るケースもあります。自然に治癒する場合もありますが、腹痛や関節痛などの症状が強く現れた場合には、日常生活への影響も大きいと言えます。

治療にはステロイド剤などを用いた薬物療法が行われます。合併して生じる腎炎には重症度に応じた治療法が行われます。適切な治療が行われるかどうかが予後にも影響を及ぼします。

主な症状

アナフィラクトイド紫斑病は、突然発症して数ヶ月にわたり症状が現れ、治まるという流れを繰り返すのが特徴です。
時間の経過を経て自然に症状は安定していくことが多いです。現れる症状としては出血班、浮腫、関節症状、腹部症状、腎炎などが挙げられます。

出血班はアナフィラクトイド紫斑病の典型的な症状で、足関節を中心にもり上がった出血斑が現れます。
上肢、躯幹、顔に生じることもあります。蕁麻疹のような発疹が現れ、徐々に紫色の出血斑となるケースが多いです。
浮腫は足関節、腓腹部、頭部、顔面、背部などに現れ痛みを伴うものもあります。関節症状はアナフィラクトイド紫斑病の患者全体の3分の2に見られます。足関節、手関節に痛みを生じ、ほとんどが両側性です。痛みによって歩行が困難になる場合もあります。腹部症状としては反復する強い痛みが特徴で、嘔吐を伴うこともあり、陰嚢や精巣にも腫れや痛みを生じることがあります。腎炎を合併している場合には約半数に尿異常がみられます。

主な原因

アナフィラクトイド紫斑病を発症する原因は現在のところ明らかになっていませんが、最も関連が深いと考えられているのがIgA抗体と呼ばれる抗体の一種です。皮膚や腎臓などの血管にこのIgA抗体が沈着することで炎症が引き起こされると考えられています。このIgA抗体は体を守る免疫システムのひとつです。

異常な免疫反応を引き起こす要因として挙げられるのが溶血性連鎖球菌、ブドウ球菌などの細菌や、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトパルボウイルス、肝炎、麻疹、風疹などのウイルスです。また先行感染としては扁桃炎などの上気道炎、副鼻腔炎を発症している例が確認されています。全体の約半数に、風邪などの先行感染があり、その後1~2週間程度でアナフィラクトイド紫斑病の発症にいたるケースが多いとされています。発症は秋から初夏にかけての時期が多く、夏は発症が少なくなる傾向があります。溶連菌感染の流行に同期して発症するという説もあります。

主な検査と診断

アナフィラクトイド紫斑病は皮膚症状や関節症状などの特徴的な症状から疑われ、血液検査や尿検査などが行われた上で診断がくだされます。血液検査では、アナフィラクトイド紫斑病の場合、赤沈亢進、CRPの上昇、末梢血白血球の増加などが確認できます。中でもIgA抗体の数値が上昇するのがアナフィラクトイド紫斑病の特徴とも言えます。また、腹部症状に対しては腹部超音波検査、内視鏡検査などを行い、別の疾患が隠れていないかを確認します。

血尿や蛋白尿などの腎機能障害が確認されている場合には腎臓の組織を一部採取して顕微鏡で観察する腎生検が行われる場合もあります。
また、確定診断には皮膚を採取して行う皮膚生検が必要です。皮膚生検は特に成人に患者に対しては積極的に行われることが多いです。

隆起性の紫斑を軸として、その他の症状を含めた診断を行うため皮膚所見が認められる場合には、診断は比較的容易と言えますが、反対に出血斑が見られないケースでは診断が困難なケースも多いです。

主な治療方法

アナフィラクトイド紫斑病を発症した場合には基本的に重症度に応じた対症療法が行われます。
軽症の場合は特別な治療を行わず、安静に努めることで改善することが多いです。
動きが激しいと出血斑は増加する傾向がありますが、症状が出血斑のみであればそこまで厳しく安静にする必要もありません。
ただ軽症であっても腎機能障害の悪化に注意して経過を観察する必要があります。

腹痛の症状などが強く現れている場合は入院による安静が必要です。また腎機能障害が強く現れている場合には副腎皮質ステロイド薬、免役抑制薬、透析による治療なども用いられます。
その他に使用される薬剤としてはトラネキサム酸、カルバゾクロム、血液凝固第XIII因子製剤などが挙げられます。
その他にも血漿交換療法や免疫グロブリン大量静注療法、扁桃摘出などが治療の選択肢となります。

数ヶ月間は再燃と鎮静を繰り返しますが、予後は良好とされています。腎障害があった場合には後に腎機能が低下したり、妊娠中に腎機能が悪化するなどの例もあります。