外傷性鼓膜裂傷 ガイショウセイコマクレッショウ

初診に適した診療科目

外傷性鼓膜裂傷はどんな病気?

外傷性鼓膜裂傷とは鼓膜が何らかの外力で破れてしまう状態を指します。
外傷性鼓膜穿孔〈せんこう〉とも呼ばれます。
直接異物があたって鼓膜が破れたり、気圧の急激な変化によるものなど原因には直接的または間接的なものがあります。具体的には耳掃除をしているときに何かにぶつかってしまったり、飛行機やスキューバダイビングによる急激な気圧の変化などが挙げられます。
木の枝や昆虫などの異物が入り込んだり、花火などの爆発、平手打ち、ボールがあたるなどの例もあります。

鼓膜がに穴が開くと痛みや出血、耳鳴り、難聴、耳閉感、めまいなどを引き起こします。破れた鼓膜はほとんどの場合、経過観察のみで自然にふさがります。まれに手術による治療が必要になるケースもあります。

嫌がる子どもに無理やり耳掃除をしない、耳掃除をするときには人のいない場所でするなど、外傷性鼓膜裂傷は日常生活における注意で予防することができます。気圧の急激な変化には耳栓をすることで予防効果が期待できます。

主な症状

外傷性鼓膜裂傷では耳の痛み、出血、難聴、耳閉感、耳なり、めまい等が典型的な症状と言えます。
まず鼓膜に穴が開いた瞬間に強い痛みを感じ、その後に出血や耳鳴りなどその他の症状が現れます。耳がふさがっているような耳閉感を伴う場合もあります。

また、動いたり回転したりしているように感じる回転性めまいや難聴、平衡感覚を失うなどの症状は重症な際に現れるもので、この状態になった場合は数週間程度の安静が必要です。
耳小骨の連結部分が分断されたり内耳が傷ついた場合には特に難聴の症状が強く現れます。

水や異物が中耳に入り込んで感染を起こした場合などでは、24~48時間の間に耳から膿が出ることもあります。膿が出ている場合、非常に強い痛みを伴う点が特徴です。この状態になると、鼓膜が自然に再生しにくくなるため感染予防には特に注意が必要です。

また耳が全く聞こえない、継続して激しいめまいがあるなどの場合には外リンパ瘻が疑われます。これは早期に手術による治療が必要な疾患です。

主な原因

外傷性鼓膜裂傷は直接的または間接的な外力によって起こります。
直接的な要因で最も多いのは耳かきや綿棒による耳掃除中の事故によるものです。
耳掃除中に子どもがぶつかる、転倒する、子どもの耳掃除の際に暴れるなどの例があります。
木の枝や虫が偶然耳に入ったりするケースもあります。また、間接的な外力では平手打ち、爆発、ボールが耳に当たるなどが挙げられます。

異物が耳に入りこみ鼓膜を貫通すると、耳小骨の連結が脱臼したり耳小骨が折れる場合もあります。その際、耳小骨の破片や異物が内耳に入り込むケースも多いです。

急な気圧の変化によって鼓膜が破れることもあります。気圧の変化でいえば、爆発、平手打ち、潜水は気圧が上昇した状態になる、飛行機に乗ったり外耳道が強く吸引された際には気圧が低下した状態になります。

まれに医師が耳の通り道を洗浄する際に誤って鼓膜が破れてしまうケースもあります。また、外傷性ではない鼓膜裂傷の原因として最も多いのは中耳炎によるものです。

主な検査と診断

外傷性鼓膜裂傷の診断には、まず耳鏡(じきょう)検査によって耳の中の状態を確かめます。
耳鏡検査は鼓膜に空いた穴が小さい場合には確認が難しいため、顕微鏡を用いてより精密な検査が行われることもあります。
これらの検査で診断が下されますがその前後に聴力検査を行う場合もあります。これによって難聴などを併発していないかを確認できます。

自然に治癒する目安となるのが開いた穴が3分の1程度で、感染症を起こしていない状態です。
この場合は基本的に経過観察となりますが、2か月以上にわたって症状が改善されない場合には手術も検討されます。同じく耳小骨の損傷がある場合にも手術となる可能性があります。

感染症の有無も治療法を検討する際に重要です。また、早期に治療の必要があるのが外リンパ瘻です。外リンパ液が内耳から中耳へ漏れ出し内耳の機能に障害が起きるものですが、まったく耳が聞こえない状態になったり激しいめまいが続くなどの症状が現れます。この場合手術によって外リンパ瘻を閉鎖する治療が行われます。

主な治療方法

外傷性鼓膜裂傷の治療は裂傷が小さく症状も軽度であれば基本的に耳の清潔と乾燥を保ち、点耳薬なども用いながら経過観察となります。
鼓膜は再生力が高いため、特別な治療を行わなくても自然に治癒します。治癒するまでは感染症を防ぐため、入浴や水泳によって耳に水が入るのを防ぐ必要があります。

一方、感染症が疑われる場合には抗菌薬や点耳薬を用いた治療が一般的です。穴は1~2ヵ月程度でふさがる場合が多いです。
必要に応じて鼓膜の再生を促す治療も検討されます。

中耳炎による耳垂れが続く、耳小骨の損傷が疑われる場合には鼓膜形成術などの手術によって治療が行われます。
穴が長期間ふさがらないと慢性中耳炎につながる可能性もあります。鼓膜形成術は鼓膜の穴を塞ぎ、新しい鼓膜を再生させる方法です。
鼓膜の形成する部分を固定するために、手術後しばらくは耳の中にガーゼを入れた状態を保つ必要があります。

また、鼓膜形成術の中でも術後のガーゼ固定が不要な接着法と呼ばれる方法もあります。日帰りや1泊程の入院で手術が可能になる点がメリットです。