手舟状骨骨折はどんな病気?

手舟状骨骨折とは手関節にる8つの手根骨の1つである舟状骨が骨折することをいいます。
手関節には8つの手根骨があり、手首の親指側にある船底のような形をした骨を手舟状骨と呼びます。

手舟状骨骨折はスポーツ起こりやすい代表的なケガとしても知られており、転倒して手をついた際などに起こりやすいのが特徴です。
舟状骨は血行が悪い骨であるため非常に完治しにくい骨折とも言われています。
またエックス線検査においても、手舟状骨は他の指の列とは傾きが異なり、骨折線が見えにくいため捻挫を間違われてしまうケースも少なくありません。
骨折が発見されず、治療が行われずにいると慢性的な痛みや機能障害が生じるだけでなく、骨がつかないまま関節のように動く偽関節になりやすい点も特徴です。

受傷直後にはレントゲンに現れないこともしばしばで、手舟状骨骨折が疑われる場合には診断が確定しなくても丁寧な経過観察によって骨折がないかを確認することが重要です。

手舟状骨骨折の主な症状は?

手舟状骨骨折は、受傷した直後には親指を動かすと手首に近い親指の付け根の部分に腫れや痛みがあったり、その部位を押すと痛みを生じるケースが多いです。
しかし骨折による骨のずれが少ない場合は、あまり強い症状は現れません。患者本人も捻挫と誤って認識されてしまうのはこのためです。

また、治療が行われなくても受傷後しばらくして一時的に症状が改善し、治癒に向かっているような印象を受けることもあります。
しかし骨が適切な位置に戻らない状態では骨が分断されたまま放置されていることになります。これによって生じるのが偽関節と呼ばれる状態で、関節ではない部分が動くようになる状態を指します。

偽関節になると骨の変形が進行し、仕事をすると痛みが出たり、強く手を握ると痛みが出る、力が入りにくくなる、動かしにくくなるなどさまざまな機能障害を引き起こします。これらの症状によって手首全体の症状が重症化すると手術が必要になることもあります。

手舟状骨骨折の主な原因は?

手舟状骨骨折はスポーツや交通事故などの場面で、後ろ向きに転倒し、手首を反対に沿った状態で手をついたときに起こりやすいとされています。
サッカーなどをしている人にも多い怪我の一つで、10代〜20代に多いとされています。
舟状骨は、手首にある8つの骨(手根骨)の中で最もよく負傷する骨とも言われており、骨が治るまでには、3~4カ月かかるケースもあります。

舟状骨骨折の中でも骨の折れ方が様々あり、最も多いのは骨の中心部である舟状骨の腰部と呼ばれるくびれた部分がひび割れて骨折を起こすものです。
腰部を骨折してしまうと指先側から手首側への血行が滞りがちになるため組織が壊死してしまい、偽関節になりやすいとされています。

元より舟状骨は血液供給が少ない骨で、そのため骨が治癒せずに変性したりつぶれてしまう、癒合不全で元通りには再生できないというケースも5~10%ほどあります。これら適切な治療が行われた場合にも起こる可能性があります。

手舟状骨骨折の主な検査と診断方法は?

手舟状骨骨折が疑われる場合にまず行われるのが問診とX線検査です。
問診ではどのような状況で受傷したのか、痛みなどの症状についてなど丁寧に確認します。
また、舟状骨を触診することができる解剖学的嗅ぎタバコ入れと呼ばれる部位を圧迫すると痛みが出る場合には、手舟状骨骨折である可能性が高いと判断します。

続いてX線検査が行われますが、損傷後すぐの場合、通常の2方向のエックス線では舟状骨の傾きなどの問題から、骨折点が写らない場合があります。そのため4方向のエックス線検査を行い、さらにCT検査やMRI検査を行うことで確実性が高まります。CT検査やMRI検査の段階ではおおよそ骨折部分を確認できますが、費用面で用いられにくいのが現状です。

エックス線で骨折点が確認できないものの手舟状骨骨折の疑いがある場合、7~10日後に再度検査を行うことが多いです。治癒が数日分進むことで骨折点が見えやすくなることがあるためです。

手舟状骨骨折の主な治療方法は?

手舟状骨骨折の治療はギプスによる固定や消炎鎮痛薬が用いられます。
手舟状骨骨折は手舟状骨の血流が少なく完治までに時間がかかるため、最長で6~8週間程度、長期間での固定が必要です。
必要に応じて一部をネジで固定する場合もあります。これによって治療期間の短縮が期待できます。近年このような治療期間を短縮する治療法についても積極的に行われています。

また、受傷後に骨折した部分が偽関節となってしまったり痛みを伴う場合には外科的な手術も行われています。
具体的には骨を削り、別の部位から骨を取り出し、偽関節部に充填する大掛かりな手術です。専門の医師でも難しいとされる手術と言えます。

一般的に偽関節になる前段階であればギプスでの固定が選択されるケースが多いものの、高齢者においては長時間ギプスを装着することで必要な筋力の低下が懸念されます。また手首が固まったり、ギプスを外した後のリハビリも長期に渡ることが予想されるため、手術での治療を採用することもあります。

手舟状骨骨折の初診に適した診療科目