橈骨遠位端骨折 トウコツエンイタンコツセツ

初診に適した診療科目

橈骨遠位端骨折はどんな病気?

橈骨遠位端骨折は転んでとっさに手をついた際に起こる骨折です。
橈骨とは前腕を構成する骨の一つで、手首付近で橈骨が折れるのが特徴です。発症頻度が高く、特に骨粗鬆症のある人に多く見られます。橈骨は太く硬い骨ですが、骨粗鬆症などで骨の強度が低下している状態であれば、それほど強くない力でも骨折することがあります。

男女比で見ると、女性に多い傾向があります。手首に強い痛みを生じ、短時間のうちに腫れて来ます。
けがの仕方によっても異なりますが、手のひらをついて転んだ場合には食器のフォークを伏せて置いたような変形が見られる場合があります。
これをコレス骨折と呼び、その他にも骨折部の偏位によってスミス骨折、バートン骨折などの種類に分けられます。手がブラブラとなり力が入らず、折れた骨や腫れによって正中神経などが圧迫されて指がしびれる症状が現れることもあります。

治療にはギプス固定や手術などの方法があり、治療後は早くから手指や肘を動かして関節が硬まるのを防ぐことが重要です。

 

主な症状

橈骨遠位端骨折を発症すると手のひらをついて転んだ衝撃によって手首に強い痛み、腫れを生じ、変形の症状も見られます。
また関節可動域が制限され、手首を曲げることや手のひらを返すなど、自分の意志で手首を動かすことが困難な状態になります。
手のひら側を通る正中神経が折れた骨や腫れによって圧迫されると、親指から薬指にかけてしびれを生じる場合があります。
また、骨折のずれが大きい場合などには手関節の靱帯に合併損傷を生じるケースもあります。

骨折部が手の甲側にずれるものをコレス骨折、骨折部が手のひら側にずれるものをスミス骨折と呼びます。
コレス骨折は橈骨遠位端骨折の中で最も発症頻度が高く、手の甲が膨らんだように見えるのが特徴です。

橈骨遠位端骨折をそのまま放置すると骨が変形して固まり、2次的な障害を引き起こす例も多くみられます。
機能的な障害だけでなく遅発性に手指の腱が切れる、手指の先が痺れる手根管症候群を発症することもあります。

主な原因

橈骨遠位端骨折は手のひらをついて転んだり、自転車やバイクに乗っていて転んだりした際に起こります。
前腕の2本の骨のうちの橈骨が手首の部分で折れる骨折です。特に閉経後の中年以降の女性は骨粗鬆症で骨が脆くなっている傾向があり、つまづいて転んだなど比較的軽度の外力でも簡単に折れることがあります。若い時には骨折しない力でも骨折を起こすのが高齢者の骨折の特徴です。
また若い人では高い所から転落して手をついたり、交通事故などで強い外力が加わることで起こります。
骨折のずれが大きいケースが多いため手術が必要になる場合も多いのが特徴です。
子供に多いのは橈骨の手首側の成長軟骨板の部分に骨折が起きるケースです。走っていて転倒したり、スポーツでの転倒が原因となることが多いです。
子供の骨折は骨癒合が良いという特徴がありますが本来の形に戻っていく力が強いです。

いずれの場合も、前腕のもう一本の骨である尺骨の先端やその手前の部分が折れるケースが多く、その2か所が同時に折れる場合もあります。

主な検査と診断

橈骨遠位端骨折は、画像検査などを行う前に診察によって明らかな手首の変形や痛み、腫れなどを確認することで診断できる場合も多いです。
骨折が疑われる場合にまず初めに行われるのがX線検査です。X線検査では橈骨の手首側の骨折を明確に確認することができます。
骨の折れ方に応じて治療法も異なるため、折れた部分が単純で骨折線が一本か、小さい骨片が複数ある不安定な骨折か、骨折線が手首の関節に及んでいるかなどを慎重に見極めます。
これによってコレス骨折、スミス骨折、バートン骨折などの種類を判断します。

橈骨遠位端骨折はほとんどの場合、診断とX線検査によって診断が行われますが、X線検査で全体を把握できない場合にはCT検査やMRI検査など、より詳しい画像検査も行われます。
CT検査ではX線検査で判断が難しい関節内の骨折の転位を確認することができ、MRI検査はX線検査では判別できないような小さな骨折なども確認できる点がメリットとされています。
画像検査でポイントとなるのは、ギプス固定で治療が可能か、手術が必要な状態かを判断することです。

主な治療方法

橈骨遠位端骨折の治療にはギプス固定、手術による修復、リハビリなどが行われます。
骨折によるずれがほぼなく、症状も軽度であれば多くはギプスによる固定を1ヶ月程度行います。
ギプスを装着する際には腕の麻酔や静脈麻酔で痛みをとり、手を指先の方向に引っ張ってずれた骨片を元に戻す徒手整復を行います。

徒手整復などを行ってもずれが現れたり関節内に骨折が及んでいる場合には手術による治療が検討されます。
X線で透視しながら、鋼線を刺入して骨折部を固定する経皮鋼線刺入法や、骨片にピンを刺入してそれに牽引装置を取り付ける創外固定法、骨折部を直接開き、骨片を整復してプレート固定する方法などがあります。関節鏡を用いた整復固定なども一般的です。
手術後は手指、肩の自動運動を行って関節が固くなるのを防ぐリハビリテーションを行うことも重要です。

また子供の骨折の場合は、骨片の整復が不完全であったり、骨がある程度曲がった状態で癒合したとしても自家矯正力が旺盛なため、手術を必要としないケースがほとんどです。