単純性腎嚢胞 タンジュンセイジンノウホウ

初診に適した診療科目

単純性腎嚢胞はどんな病気?

腎嚢胞とは片側あるいは両側の腎臓に嚢胞ができる病気で、その中でも大きさが0.5~4cm程度の嚢胞が片側の腎に1~3個みられる場合に単純性腎嚢胞と呼ばれます。
尿細管(腎臓内の原尿が通る管)や、腎虚血、髄質などと関連する疾患ではないかとされています。

腎嚢胞の内部には液体が貯留しており、血液が濾過(ろか)された成分とほぼ同じものとなっています。
腎嚢胞は年齢を重ねるにつれ発症の頻度が増加するもので、 30才以下の方にできることは珍しく、小児にできることはまれです。
発症の原因やメカニズムは解明されていない部分が多いですが、腎嚢胞が多発する場合には遺伝性が疑われることもあります。

腎嚢胞ができただけでは特に問題にはなりませんが、腎嚢胞が大きくなることで圧迫症状、高血圧、水腎症、血尿などの症状を引き起こすことがあります。単純性腎嚢胞で腎臓の働きが低下することはないとされており、多くは無症状で治療は不要なケースがほとんどです。

主な症状

単純性腎嚢胞は、通常無症状である場合がほとんどで腎臓の機能や健康に影響するケースは少ないとされています。
しかし嚢胞が大きくなったことによって圧迫症状や高血圧、水腎症、血尿を来す場合がまれにあります。
その場合は腰部の鈍い痛みを感じるなどの症状が現れます。嚢胞液を穿刺吸引するなどの外科的処置が行われることが多いです。

また、孤立性の大きな嚢胞ができた場合は、圧迫症状を呈することがたびたびあります。
それによって腹部膨満感や腹痛を起こすこともあります。圧迫によるホルモン分泌の異常が原因で、高血圧や赤血球増加症が引き起こされることがまれにあります。

また腎盂の近くにできたものは水腎症を引き起こしやすく、水腎症を起こすと尿が停滞し、腎盂は腫大して嚢状となります。
腫大した腎盂により腎実質が圧迫されると、次第に腎実質が乏しくなり、腎機能障害が生じます。

また、嚢胞の中に血液が充満する出血性嚢胞、嚢胞破裂、尿路感染症、嚢胞内腎癌など合併症にも注意が必要です。

主な原因

単純性腎嚢胞は何が原因となって起きるかというメカニズムは解明されていない部分が多く、原因は不明です。
ただ腎臓に嚢胞ができる場合、生まれつきの先天性のもの、生後にできた後天性のもの、どちらかも不明なものとに分類されます。

遺伝性はないとする説もありますが、腎嚢胞が多発する場合には遺伝と関連するとされる報告もあり、その場合は家族性によるものです。
また、30歳以下には少なく、どちらかと言えば男性に多い疾患とされており、定期的な健康診断などを受けることによって症状が進行する前の発見に役立ちます。
単純性腎嚢胞は腎嚢胞がよほど大きくならない限り自覚症状がないため、検査で偶然見つかるケースが多いです。

また、腎臓は身体の中でも嚢胞が最もできやすい臓器のひとつとされていますが、近年では検査技術が向上したことにとって診断も進歩しています。具体的には超音波検査やCT検査、MRI検査の発達によるところが大きいです。

主な検査と診断

単純性腎嚢胞は主に超音波検査、腹部エコー検査、CTスキャンなどによって発見されることが多いです。
これらを使用すれば、腎臓に見られる腫瘤が腎嚢胞か腫瘍性のものかを見分けることができます。
健康診断における腹部エコー検査が近年普及していることや、他の疾患の検査などでCTスキャンを行った場合に偶然発見されるケースも多いです。

また、必要に応じて造影剤を用いた腎臓のレントゲン検査、超音波診断、コンピュータ断層撮影、血管撮影などより細かく腎臓の状況を確認する検査も行われます。
さらに腎嚢胞そのものを詳しく調べることができる嚢胞穿刺、嚢胞造影などの結果も踏まえて診断が下されます。単純性腎嚢胞に限らず、そのほかの嚢胞性の腎疾患も同様の検査が行われます。

嚢胞壁より悪性腫瘍や感染症が発生するなど他の合併症による症状がある場合には、疑われている疾患に適した検査が都度行われます。単純性腎嚢胞多くは治療の必要がないもので、これらのケースはまれと言えます。

主な治療方法

単純性腎嚢胞は基本的に無症状な場合が多く、合併症を伴う以外は治療の必要はないと言えます。
例えば腎嚢胞が大きくなったことで腰痛などの圧迫症状、高血圧、尿路の閉塞、水腎症、血尿などを引き起こしている場合には嚢胞内の液体を吸引する治療が選択されます。

まず腎嚢胞に細い針で穿刺し、中の液体を吸引してからアルコールなどで固定する方法が一般的です。
これによって再び液体が溜まってしまうことを防ぐ役割がありますが、アルコールを注入してもすぐに液体がたまってしまうケースもあります。
何度も再発を繰り返す場合には手術によって腎嚢胞を切除してメスで焼いてしまう腎嚢胞開窓術が用いられることもあります。状況によって腹腔鏡下嚢胞切除や外科的切除などが選択されます。

健康診断などで単純性腎嚢胞と診断された場合には、まず一度精密検査を受け治療の必要がないと判断されれば年1回程度の定期検査によって経過観察を続ける程度で問題ないでしょう。