猫ひっかき病 ネコヒッカキビョウ

初診に適した診療科目

猫ひっかき病はどんな病気?

猫ひっかき病とは、バルトネラ・ヘンセレという細菌に感染している猫にひっかかれたり、咬まれたりすることによって引き起こされる感染症の一種です。
それほど深い傷でない場合にも感染するのが特徴です。引っかかれた部位は赤く盛り上がったようになり、リンパ節に腫れ、発熱、頭痛、食欲不振などの症状が現れます。
バルトネラ・ヘンセレはノミの一種であるネコノミに寄生しており、そこから猫へ感染します。
ネコノミは夏から冬に増加する傾向があるため、猫ひっかき病も同時期に流行がみられます。
ネコノミを介して猫から猫へも伝染します。そのためバルトネラ・ヘンセレは世界中のほとんどの飼い猫が感染しているとされる細菌ですが、猫ひっかき病として発症する例は多くありません。注意が必要なのは免疫力が低下している人で、感染が全身に広がり重篤な場合には死に至ることもあります。

通常ほとんどの場合は患部を温めて鎮痛薬を使用することで治癒します。感染が全身に広がった場合には抗菌薬を用いて長い期間をかけて治療が行われます。

主な症状

猫ひっかき病を発症すると、まず傷ができてから3~10日で丘疹・水疱ができたり化膿したりする症状が現れます。
その後傷が治ったとしても、2週間後にはリンパ節の腫れが硬くなり押すと痛むようになり、発熱、頭痛、体重減少、食欲不振などの症状も現れます。
リンパの腫れは、体内に侵入したバルトネラ・ヘンセレがリンパの流れを介して傷口と関連した部位のリンパ節へ移動するために起こるものです。
手や腕をひっかかれた場合には腋窩のリンパ節、足がひっかかれた場合には鼠径部のリンパ節に腫れが見られます。
まれにバルトネラ・ヘンセレが直接リンパに侵入して腫れや痛みを生じるケースがあり、これはあごや耳の下などの部位で見られます。

特に免疫が弱まっている人は重症化する場合もあります。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症やエイズなどを患っている場合には特に注意が必要です。
ただほとんどの場合は抗生物質を使用しなくても数か月ほどで症状がおさまるケースが多いです。

主な原因

猫ひっかき病は、バルトネラ・ヘンセレと呼ばれる細菌への感染が原因で発症します。
この細菌はネコノミの一種に生息しているもので、野良猫、飼い猫、犬にも寄生している場合があります。現在では世界中のほとんどの猫に生息しているとされています。
そのため猫にひっかかれた場合に限らず、犬にかまれた場合に感染するケースもみられます。
バルトネラ・ヘンセレは感染した猫や犬の赤血球の表面で増殖しますがそれによって猫や犬に現れる症状はありません。

バルトネラ・ヘンセレ猫や犬の唾液中に分泌されており、口移しで食べ物を与えたりキスをしたりすることから感染することもあります。
またまれなケースではネコノミに直接噛まれることで感染したり、猫とスキンシップを取った後にそのままの手で別の人に触れて感染した例なども報告されています。

予防のための対策としては、ノミを定期的に駆虫することで病原体が循環しているサイクルを断ち切ることが最も重要とされています。

主な検査と診断

猫ひっかき病の診断には主にPCR法と呼ばれる遺伝子検査の方法が用いられます。
感染したリンパ節に針を刺し、体液を採取する方法です。細菌のDNAの量を増やすことで早く細菌を検出できる点がメリットです。
この方法によってバルトネラ・ヘンセレの特徴的な遺伝子を確認することができます。同様に血液検査によってバルトネラ・ヘンセレの抗体を検出することで判断する方法もあります。
確定診断のためには血液や傷口の膿からバルトネラ・ヘンセレを検出する必要がありますが、重篤な状態を除きほとんど行われません。
免疫力が低下しているなど、治療のために細菌の特定が不可欠な場合には、血液から細菌を増殖させて種類を特定する培養検査が行われることもあります。
これらの検査でも診断ができない場合やがんが疑われる場合にはリンパ節から組織を採取する方法も選択されます。これをリンパ節生検と呼びます。

リンパの腫れが症状として現れる鼠径リンパ肉芽腫、化膿性炎、非定型抗酸菌症、結核など他の疾患が原因ではないことを判断することも重要です。
 

主な治療方法

猫ひっかき病は、ほとんどの場合は自然に治癒します。傷を温めて必要に応じて鎮痛薬を使用することで回復の助けとなります。
リンパ節の腫れや痛みがはっきりと現れている場合には抗菌薬を用いますが、明確な治療効果は認められておらず効果はそれほど高くないとされています。

特に免疫機能が低下している患者に対して感染が全身に広がった場合にはシプロフロキサシン、ゲンタマイシン、ドキシサイクリンなどの抗菌薬が用いられます。
数週間から数ヶ月間にわたり継続して使用しながら経過を観察します。

特に免疫力が低下している人の場合、感染を防ぐ予防法や、猫との接触を避けることも重要です。
猫や犬の爪を短く切ることやノミの定期的な駆除、接触後の手指の洗浄、傷口の消毒なども予防に有効です。
猫や犬を過剰に興奮させるとひっかかれたり咬まれたりすることにつながるため、注意が必要です。
また食べ物の口移しから感染するケースもあるため、そういった行為は避けることも重要です。