お知らせ

体のあちこちにこぶ…IgG4関連疾患

医療ニュース
今回のホームページ制作に役立つコンテンツは、3月20日(金)日経らいふプラスに掲載の「体のあちこちにこぶ…IgG4関連疾患」をご紹介させて頂きます。


「IgG4関連疾患」は膵臓(すいぞう)や目など体のあちこちにこぶができて炎症が起こる病気です。従来、無関係と思われていた病気で、免疫グロブリン (Ig)というたんぱく質の値が高いという共通点が見つかり、一つのグループにまとめられました。症状によってはがんと間違われるケースもあるため、詳しい医師の診察を受けて識別することが大切だと専門家は訴えます。

IgG4関連疾患は病原体などから身を守る免疫システムが暴走し、自分自身を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一種です。膵臓や肝臓、肺、目、唾液腺、腎臓 などにこぶができます。膵臓にできると肌が黄色くなる黄疸(おうだん)が現れます。目では涙の量が足りなくなるドライアイ、唾液腺では唾液の分泌量が減り口の渇きを感じるドライマウスなどの症状が出ます。
 

共通点の報告

こうした症状の患者は以前から知られており、別々の病気と考えられていました。20年近く前から、いくつか種類がある免疫グロブリンの中でもIgG4というタイプの値が血液やこぶで高くなっているという共通点が報告され始めました。
そこで日本の複数の研究チームが、病気を一つのグループにまとめられると世界に提案してきました。
その結果、IgG4関連疾患という考えが定着し、医師の間でも徐々に認知度が上がってきました。間質性腎炎間質性肺炎などのごく一部に、IgG4関連疾患 が存在すると分かってきました。
国内でも厚生労働省の研究班が発足し、研究班の2008年の調査では、発症患者の平均年齢は62歳で、全国に約2万6000人の患者がいると推定されています。
IgG4の増加で起こる「自己免疫性膵炎」は、高齢の男性の患者が多く、男性が女性の3倍かかりやすいことなども分かってきました。
ただ予防法はなく、発症しやすさの違いがどこから来るのか、どんな仕組みで発症するのかなどよくわかっていない点も多いです。
IgG4関連疾患は診断がつくまで時間がかかることもあります。典型例はこんな感じです。

60代男性が突然、首もとの唾液腺が腫れた。近くのクリニックを受診したところ、こぶが見つかり、がんが疑われた。切除したが 組織を調べてもがん細胞は含まれておらず、男性は安堵した。
そのまま数年が過ぎ、今度は尿の色が濃くなった。さらに「黄疸が出ている」と 周囲にいわれて男性は病院を受診、超音波やコンピューター断層撮影装置(CT)で検査すると膵臓に腫瘍ができていた。血液検査でIgG4の値が多いことも分かり、患部を一部切り取って顕微鏡で調べるなどした結果、IgG4関連疾患だと判明した。

患者によっては唾液腺の次に膵臓、続いて肝臓といった具合に、いくつもの臓器にこぶが順番にできる例もあります。
こぶが体のあちらこちらにできるのは、がんに似ています。かつては膵臓がんと思って手術をしたら膵臓の炎症だったという場合もあったといいます。がん患者がIgG4関連疾患を発症する場合もあるといいます。

 

薬やめると再発

IgG4関連疾患の治療は、炎症を抑えるステロイドの飲み薬を使います。
大半の患者は、初めは多く服用し、半年かけて徐々に投与量を減らしていくと症状が治まります。
ただ、この方法では完全に治らない人も多いです。
症状がいったんよくなっても、薬をやめると3~5割の人で再発してしまうと専門家は指摘します。


この病気をがんと間違えて手術すると、臓器などが傷ついてしまうが、逆の場合も注意が必要です。がんにはステロイドが効かないため、がんによってできたこぶは小さくならず、成長してしまいます。
このため、厚労省研究班がIgG4関連疾患全体の診断基準を11年につくりました。一つまたは複数の臓器で腫れた部分がある、血液中のIgG4値が一定以上などを判断材料にして診断します。「医師も患者も正しい知識を得ることが最も大切だ」と専門家は口をそろえます。