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がんと不妊(下)

医療ニュース
今回のホームページ制作に役立つコンテンツは、3月13日(金)日経らいふプラスに掲載の「がんと不妊(下)」をご紹介させて頂きます。


がん治療に伴って不妊になる可能性があるのは大人の女性に限りません。男性の不妊治療において「がんの治療前に男性患者に将来、子供を持つための精子凍結法を説明し、対応策も考える医療機関はまだ少ない」といいます。
 

精巣機能低下

血液や臓器などのがんを患う男性を放射線や抗がん剤で治療した場合、精巣の精子を作る機能が低下しやすくなります。薬の種類や放射線の照射量により一定期間がたてば機能が回復する例もありますが、精子数が十分に戻らない人や無精子症になる人もいます。
直腸がんなどの手術時に神経が傷つき、射精障害が出る可能性もあります。
自分で射精した精子を凍結保存し、必要なときに解凍して体外受精させれば、子を得ることは技術的に可能です。しかし、男性不妊を担当する泌尿器科医が全国的に少なく、がん治療医との連携も不十分なため、治療前の限られた期間内に凍結保存をする患者は少ないのが現状です。
そこで独協医大越谷病院は2015年6月にがん患者の精子凍結を担う専門のセンターを開設します。埼玉県や東京都などのがん治療病院とも協力する方針です。
 

男性がん患者の治療と生殖医療の流れ

凍結保存の料金は初年度2万円で、保管料が年1万円程度です。毎年約30人が新たに申し込んでおり保管数は約100件に達しています。
凍結保存をする理由として、安心してがん治療を受けられるといいます。また、精子凍結をしなかった場合でも、治療後に顕微鏡を使い精巣から受精可能な精子を見つけ出せる例もあります。

がんと診断

精子を凍結保存する
■治療(抗がん剤・放射線・手術など)
1)精子機能が回復→自然妊娠など

2)精子機能が低下し、戻らない→保存した精子を使った体外受精など

《精子を凍結保存しない》
■治療(抗がん剤・放射線・手術など)
1)精子機能が低下し、戻らない→顕微鏡を使い、受精可能な精子を探して体外受精など


小児がんの治療と生殖機能で直面する主な課題】
小児がんの多くは治るようになりましたが、治療の影響でさまざまな合併症が出ます。不妊もその一つです。
15歳未満で発症する小児がんの患者は年間2500人程度です。白血病などの血液のがんが約3分の1を占め、脳腫瘍などが続きます。治療技術の向上で、小児がん の7~8割が治る時代になりましたが、新たな懸念として浮かび上がってきたのが抗がん剤や放射線治療などの影響と考えられる合併症です。

数年から数十年という期間で患者の約7割に合併症が出るといいます。心筋症など命にかかわるものから聴力の低下、歯や骨の異常などさまざまです。生殖機能関連で はホルモン分泌に支障が出て、思春期になっても月経が始まらない女の子や男性ホルモンが増えない男の子なども報告されています。
思春期以降ならがん治療前に精子・卵子を凍結保存できますが、体が成熟していない思春期前は難しいのが現状です。そこで卵巣組織を凍結する試みも始まりました。

しかし、小児の場合は、年齢から不妊という状況を本人が理解できず、実施の可否を判断できないなどの問題点があります。
 親に説明することになりますが、我が子の命にかかわるがん治療に直面する中、将来の生殖機能の温存まで考えて判断するのは容易ではありません。通常の抗がん剤治療の場合、大人になってから自然妊娠が可能な例が多いことも問題を複雑にしており、医師が判断材料を提供しにくい状況にあります。

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NPO法人「日本小児白血病リンパ腫研究グループ」は、治療法と合併症の関係を示すとともに、小児がん患者の体の状態を長期間追跡して早めに合併症を見つけて対応する仕組みを整えてきました。今後は小児のホルモンの専門家などと連携し対策を充実させる方針です。