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耳を触る・言葉遅い・反応鈍い… 子供、中耳炎かも 気づかず放置、難聴の恐れ

医療ニュース
今回のホームページ制作に役立つコンテンツは、12月19日(金)日経新聞らいふプラスに掲載の「耳を触る・言葉遅い・反応鈍い… 子供、中耳炎かも  気づかず放置、難聴の恐れ」をご紹介させて頂きます。

風邪やインフルエンザが流行する季節は、子供の中耳炎も増えます。耳の痛みや違和感を言葉にしにくい子供では治療が遅れることも多いです。特に、痛みや発熱などを伴わないタイプは気づかず放置してしまうこともあり、難聴のリスクも出てきます。保護者は子供の状態に注意を払い、気になる点があれば早めに医療機関を受診するよう専門家は勧めています。

「耳をかいたり、耳の近くの髪を引っ張ったりするしぐさが増えたのがサインだった」。東京都内に住むC子さんは、2013年夏に当時1歳間近だった長男の異変に気づきました。上の子の影響で覚えはじめが早かった言葉の発語が急に止まり、話さなくなったり、発音があいまいになったりしているのも気になっているようです。「耳に何か異変があるかもしれない」と思い、近くの耳鼻咽喉科を受診したところ、「鼓膜がだいぶ白いですね」といわれ、耳が痛くならないことが多い滲出性(しんしゅつせい)の中耳炎の可能性が高いと診断されました。

C子さんの長男は今年7月、医療機関で鼓膜に小さなチューブを入れる手術を受け、すぐに発語も復活し、反応も見違えるように改善しました。C子さんは「たまたま気づいたが、見落としてもおかしくなかった」と振り返っています。

 

訴えられない小児


乳児本人は聞こえが悪くなっていますが、そのことを訴えられません。言葉の発語が遅い場合や反応が鈍いなと感じたら、原因のひとつとして滲出性中耳炎を疑ってみたほうがよいとの指摘もあります。

中耳炎は大人より子供が発症しやすい病気の一つで、鼓膜の奥の部分である中耳に何らかの原因で炎症が生じる病気です。中耳は耳管で口や鼻とつながっていて耳管は大人に比べて子供は平らで短く、このため鼻やのどに入った細菌やウイルスが奥に到達し、中耳にも届きやすいと考えられています。

中耳炎はいくつかのタイプに分けられます。一つは急性中耳炎です。風邪を引いたときなどに起こりやすく、肺炎球菌などの細菌やウイルスの感染によって中耳に急性の炎症が起き、鼓膜が赤くはれ上がります。耳の痛みがあり、発熱や耳からウミが出ることもあります。急性中耳炎は1歳までに子供の約6割が、3歳までに約8割がかかるといわれています。半年以内に3回以上、1年以内に4回以上繰り返した場合、特に反復性中耳炎と呼ばれ、さらに慢性の中耳炎になることもあります。

もう一つが滲出性中耳炎です。中耳に滲出液と呼ぶ水がたまり、量が多くなると鼓膜の動きが弱くなるなど聞こえが悪くなります。3~6歳児を中心に多く、子供の難聴の原因として最もよくみられます。このタイプの約半分は急性中耳炎の後に続いて起きます。決して珍しい病気ではありませんが、耳の痛みなどの症状があまりないため、見逃されるケースも多いとの指摘もあります。

 

治療手順を一本化


いずれのタイプも抗菌薬を使ったり手術をしたりして治療をします。滲出性中耳炎の治療については従来、国内に診療ガイドライン(指針)がありませんでした。そこで、日本耳科学会と日本小児耳鼻咽喉科学会が作成し、来春から医療現場で使われることになりました。医師により異なることもあった治療手順が、ガイドラインの活用で統一される見通しです。

ガイドラインの特徴は手術の時期を明確にしたことです。治療ではまず抗菌薬や消炎剤を使うなどし、3カ月間経過観察して効果がないと判断したら手術を検討するという手順を示しました。手術は鼓膜に直径2~3ミリメートル程度の小さなチューブを挿入する方法が中心です。鼓膜を少し切開して入れたチューブの穴から常に空気の出入りができるようにして、中耳を乾燥させて中耳の粘膜の炎症が改善するのを待ちます。

手術は1泊程度入院して実施する例が多いですが、入院しないで実施する医療機関もあります。チューブを入れる効果は高く、麻酔からさめた途端に、うるさいといって耳を塞ぐ子供も珍しくないとの臨床例もあります。原因として、これまでより聞こえがかなり回復するからだとされており、チューブを入れると7~8割は治るとの指摘もあります。

チューブには2~3年間つけておくタイプと、半年から1年で自然に外に抜け落ちるタイプがあり、日常生活に特に不便はなく、入浴も問題りません。ただし、水泳では主治医と相談の上、耳栓などを使う必要があります。

乳幼児期に耳の聞こえが悪くなると言葉の発達などに影響が出る恐れもあり、子供の様子を注意深くみることが大切です。そして、異変を見つけたら早めの受診が必要です。