流行性髄膜炎 リュウコウセイズイマクエン

初診に適した診療科目

流行性髄膜炎はどんな病気?

流行性髄膜炎とは細菌性髄膜炎の1つで、髄膜炎菌の感染でおこります。細菌性髄膜炎は肺炎球菌、インフルエンザ菌、型連鎖球菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌など様々な最近から発症する可能性がありますが、流行性のある髄膜炎の原因となるのは髄膜炎菌によるものがほとんどです。

伝染性が強く、知能低下などの後遺症を残すことがあり、乳幼児やお年寄りは生命にかかわる危険が高い病気です。冬から春にかけて流行しますが、近年は、まれになった病気です。

細菌性髄膜炎の症状のほかに、皮膚に紅斑(こうはん)や丘疹(きゅうしん)などの発疹が出たり、腰痛や下痢がおこります。全身症状が強く、皮膚や副腎(ふくじん)から出血してショック状態におちいる場合は、ウォーターハウス・フリードリクセン症候群といいますが、最近ではみられなくなりました。

症状の出始めは風邪の症状とよく似ているため、医療機関への受診が遅れたり、それによって治療の開始が遅れることもあり注意が必要です。細菌性髄膜炎と同様の治療を行います。

主な症状

流行性髄膜炎では、発熱、全身の倦怠感、吐き気、頭痛、粘膜の出血斑、関節炎など風邪に似た症状がまず現れます。そこからさらに症状が悪化するとけいれん、精神症状、発疹、項部硬直、意識レベル低下、血圧低下など命に関わる症状が現れることも少なくなく、死に至る可能性もあります。治癒した後に後遺症が残る可能性もあり、主に難聴や麻痺、てんかんなどの神経に関わる障害が多いとされています。

流行性髄膜炎は髄膜炎菌が気道から血液に入り込み、血流にのって中枢神経に侵入し敗血症から髄膜炎に発展する場合が多いですが、突然に発症しショック状態に陥る劇症型の場合もまれにあります。敗血症から髄膜炎には至らずに回復する場合がありますが、髄膜炎に至った場合は治療を行わなければ100%死に至るとされています。抗菌薬が治療に有効で早い段階で適切な治療を行うことで治癒するため、症状を甘く見ず早期に医療機関を受診することも大切です。 

主な原因

流行性髄膜炎を発症する原因は髄膜炎菌という細菌への感染です。この菌は健康な人も鼻咽頭に保菌している可能性があります。髄膜炎菌は咳や鼻水の中に含まれており、くしゃみなどの飛沫感染やキスなどの直接的な接触でも感染します。

髄膜炎菌を持っていても誰しもが発症するわけではなく、そのまま発症しない人もいます。注意しなければならないのが寮などの集団生活においては菌を持っている保菌者がいることで、集団の中で菌が蔓延してしまうことです。密集した環境下では細菌が人から人へ伝播しやすく、結果集団感染が起こってしまう可能性もあります。これが流行性と呼ばれる理由のひとつです。

流行性髄膜炎はアフリカを中心に世界各地で流行しましたが、日本では戦後に発生数が激減しています。1990年に入ると報告数は一桁台まで減少したデータもあります。健康状態の保菌者も日本では約0.4%程度とされており、他の国と比較しても低い数値となっています。

主な検査と診断

流行性髄膜炎の検査にはまず髄液検査、血液検査を行うのが一般的です。診断を確定するためには髄液、血液から分離培養を行って原因が髄膜炎菌であることを確認する必要があるためです。

髄液検査では腰骨の間に針を刺して髄液を採取します。採取した髄液に含まれる糖分、タンパク、白血球などの数値を測定します。髄膜内にある細胞の状態をみると、原因となる細菌や炎症が起きているかどうかを確認することができます。また、病原体となっている髄膜炎菌を調べるために顕微鏡で病原体の探して培養する培養検査、PCR法での検査も必要に応じて行われています。血液検査では、同じく培養検査を行ったり、臓器障害の程度も併せて確認します。

流行性髄膜炎は集団感染などの恐れがある緊急性の高い感染症のため、流行性髄膜炎と診断されれば医師が保健所に届け出を行うよう定められています。患者が学校に通っていた場合は、感染のおそれがないと医師に認められるまでは出席停止となります。

主な治療方法

流行性髄膜炎の治療法はペニシリンGなどの抗菌薬を用いての治療が一般的です。また、髄膜炎の初期治療に用いられる抗菌薬は髄膜炎菌に対しても効果を発揮するため、ペニシリンGと併用することで広範囲に効果が期待できます。検査結果を待つ間の早期治療としても有効です。


また、重篤な症状が現れた場合には補液、昇圧剤、抗けいれん薬などが各症状に合わせて用いられます。流行性髄膜炎は血圧低下やけいれんなどを引き起こすケースも珍しくなく、その場合には集学的な治療となることも多いです。

予防の観点から見るとワクチン接種も有効です。2歳以下の幼児にはあまり効果が期待できず、成人に対しての効果も数年程度しか持続しないとされているものの、例えば流行が懸念される国へ赴く前に接種するなど状況に応じて活用することが大切です。また、髄膜炎菌感染者と濃厚接触があった場合は予防的な観点から発症前でも抗菌薬を使用することもあります。