菌状息肉腫 キンジョウソクニクシュ

初診に適した診療科目

菌状息肉腫はどんな病気?

菌状息肉腫とは皮膚T細胞リンパ腫とも呼ばれ、特定の白血球から発生するがんの一種です。
皮膚T細胞リンパ腫の一種で、紅斑期、扁平浸潤期、腫瘍期の3段階に分けられ、初めに皮膚に症状が現れます。
リンパ腫はBリンパ球、Tリンパ球どちらの細胞からも発症するリスクがありますが、特に皮膚T細胞リンパ腫の中で最も一般的なものが菌状息肉腫です。

菌状息肉腫は初期の段階では症状がわずかにしか現れず、徐々に増殖していくのが特徴です。
そのため初期の段階では気が付かれにくい疾患とも言えます。主な症状としてはまずかゆみを伴う湿疹が現れ、一部に厚みを帯びたり、小さなコブ状に変化していく場合があります。
また進行するとリンパ節や内臓に広がったり、白血病の一種であるセザリー症候群に進行する場合もあります。

また初期段階で皮膚の生検を行ったとしても診断が難しい場合が多いのも特徴です。これはセザリー症候群も同様です。疾患が進行するにつれて皮膚生検から診断が可能になります。

主な症状

菌状息肉腫を発症すると、湿疹や乾燥肌のような病変が体幹や手足に現れます。
紅斑期では大小さまざまな大きさと形状の紅斑が改善と悪化を繰り返しながら進行し、次第に拡大していきます。
また、色素沈着や皮膚萎縮も見られます。続く扁平浸潤期では紅斑部の皮膚が厚みを増したようになってややかたくなるだけでなく、色も紅褐色から紅色と変化します。
最後に腫瘍期では、表面平滑状態から徐々に潰瘍化していきます。表面にしこりが出てきたり、皮膚がびらんして、潰瘍となってきます。 弾性腫瘤であり、色調は暗赤色とです。
ドーム状に隆起し、腫瘍期に移行すると進行速度も速くなります。これに伴って内臓臓器及びリンパ節へ広がりを見せる場合があります。

早期の病変から菌状息肉腫を診断することは非常に難しいとされています。また、生検でも結果が得られないことが多いため早期発見が難しい疾患と言えます。

皮膚にある病変部分がごく限定的で、比較的早期の場合、ほとんどの人が症状は悪化せず、安定した状態を保つか自然に治癒します。早期に発見されてから10年で疾患に進行する割合は約1割ともされています。

主な原因

菌状息肉腫は成熟したT細胞(Tリンパ球)を元に発症しますが、そのメカニズムは分かっていません。
菌状息肉腫は非ホジキンリンパ腫の一種であり、リンパ腫は白血球に含まれるリンパ球から発生する悪性の腫瘍です。
リンパ球は感染を防ぐ役割を果たしており、Bリンパ球、Tリンパ球などの種類があります。
この中で成熟したT細胞から発症する疾患のひとつが菌状息肉腫です。皮膚リンパ腫全体のの約85%はT細胞から発症するとされています。
皮膚T細胞リンパ腫で見ると約半数が菌状息肉腫です。セザリー症候群もも細胞学的に菌状息肉腫と同じで、全身の皮膚に病変が現れる皮膚T細胞リンパ腫の一種です。

このような慢性T細胞リンパ腫を発症することはごくまれで、一般的には認知度の低い疾患と言えます。病名がつけられた頃はマッシュルームのような真菌症であるとされていましたが、非ホジキン性リンパ腫の一種であることが後々発覚しました。発症は50歳以降の中高年に多いとされています。

主な検査と診断

菌状息肉腫は基本的に皮膚生検で確定診断可能です。
しかし初期の段階ではリンパ腫細胞の量が不十分なために組織像が明確でなく、診断が困難なケースも多いです。
悪性細胞はT4+、T11+、T12+などの成熟T細胞です。

確定診断の前に、視診によってその特徴的な皮膚症状を確認します。
皮膚症状は足や腕にあらわれることもあれば、体幹に全体的に現れる場合もあります。
このような皮膚所見はベテランの医師でも判断が難しく、皮膚生検の結果と照らし合わせて経過を見ながら判断します。すぐには最終診断に至らないケースが多いとされています。進行すると皮膚生検でもリンパ腫細胞が明確に確認できるようになり、診断しやすくなります。

菌状息肉腫であると判断された場合、さらに詳しく病変を調べるために胸部、腹部、骨盤のCT検査や骨髄生検なども行われます。骨髄生検によって血液浸潤、リンパ節浸潤を確認することで診断された段階でどの病期であるかを確定できます。

主な治療方法

菌状息肉腫の治療は、症状が軽度であれば皮膚の局所療法が中心となります。
ただ皮膚に腫瘤や潰瘍が出てくる場合、これらは病気の進行を意味しており、抗がん剤による化学療法や放射線療法などの治療が検討されます。

皮膚の局所療法としては局所的ナイトロジェンマスタード療法や電子線照射療法と呼ばれる方法が特に効果が期待できるとされています。
これらの方法では照射のエネルギーが組織表面の5~10mmの部分に多く吸収されるためとされています。
コルチコステロイドやレチノイド、レチノイドなどの薬用クリームも頻繁に用いられます。これらの治療の効果は数年に渡って持続する場合があります。

一方皮膚に対する治療に効果が見られなかった場合には化学療法や放射線療法なども検討されます。これらはがん細胞を直接攻撃する方法で、副作用なども現れます。
皮膚T細胞リンパ腫が皮膚を越えて広がった場合には全身的治療が行われます。再発が見られる場合にも全身的治療が行われます。