ベーチェット病

ベーチェット病はどんな病気?

ベーチェット病とは全身性の炎症性疾患で、さまざまな部位に炎症が繰り返し起こる点が特徴です。
難病指定されている疾患で、日本や韓国、中国、中近東、地中海沿岸諸国で多く見られます。
男女共に発症する可能性がありますが、10代後半から30代前半にかけての発症が多いとされています。

初期症状として口腔内に「アフタ」と呼ばれる腫瘍ができます。その後陰部にも同様の腫瘍が出来ます。進行すると目に強い痛みが生じたり、視力の低下、膿が溜まるなどの症状があり、失明してしまうこともあります。片目のみの場合もありますが、ほとんどは両目に同じ症状があります。その他、手足、肩の関節炎、脊椎、末梢神経が侵されるための麻痺症状、血管の変異などを併発させます。重症の場合には内臓、神経、血管にも炎症が及び、命に係わる場合もあります。

白血球の機能が過剰になることで急性の炎症を引き起こしていると考えられていますが、はっきりとした原因は明らかにされていません。

主な症状

ベーチェット病の典型的な症状は口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍、眼症状の4つです。
その他にも副症状として、関節炎や血管、消化器、神経、副睾丸炎などにも炎症が起こる可能性があります。

口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍とは、ベーチェット病を発症したほぼすべての人にできる潰瘍です。
口唇、頬粘膜、舌、歯肉、口蓋粘膜などに円形の腫瘍ができ、再発を繰り返します。

皮膚症状としては、下腿伸側や前腕にしこりや発疹が現れるものです。また、にきびのような皮疹が顔、頸、胸部などに現れたり、足の皮膚表面に近い血管に血栓性静脈炎などを引き起こします。

陰嚢、陰茎、亀頭、大小陰唇、膣粘膜などに痛みを伴う腫瘍ができる場合があり、これらを外陰部潰瘍と呼びます。口腔内アフタ性潰瘍と見た目が類似しています。

眼症状はベーチェット病の中でも重要と捉えられています。多くの場合両目に症状が現れます。虹彩毛様体炎によって眼の痛み、充血、羞明、瞳孔不整が現れたり、網膜・絡膜炎を起こし視力が低下するなどの障害が蓄積され失明することもあります。

主な原因

ベーチェット病のはっきりとした原因は現時点では明らかになっていません。
遺伝的な要因に関しては近年研究が進んでおりメカニズムの解明が期待されていますが、ベーチェット病の家族内発症はそれほど多くないとされています。

現在発症の流れとして考えられているのが、生まれ持った体質に、病原体や環境要因など外的な要因が加わってベーチェット病を発症するというものです。
原因のひとつには虫歯菌やヘルペスウイルスなどを含む細菌やウイルスなどの微生物との関連も挙げられています。
現在のところでは、遺伝的な要因でベーチェット病になりやすい体質の人に、これらの微生物が侵入することで異常な免疫反応を起こし、それが発症のきっかけになるのではないかとする説があります。白血球は免疫を司る役割を果たしており、白血球の好中球という細胞が過剰に働くと急性の炎症や強い炎症を起こす可能性があります。白血球の型である ヒト白血球抗原の中でもHLA-B51、HLA-A26などに発症ケースが多いとされています。

主な検査と診断

ベーチェット病の検査や診断には現れている症状や血液検査、病理検査などをもとに診断が下されるケースが多いです。
特に注目すべきは口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍、眼症状の4つの症状で、これらすべてが現れているものを完全型ベーチェット病と呼びます。
また、この中からいずれかの症状3つが現れているものを不全型ベーチェット病と呼びます。

血液検査では白血球の数値を調べることで炎症の程度が分かります。また、ベーチェット病の特徴として皮膚が過敏になる症状があるを確かめるために、皮膚に針を刺しその反応を見る検査なども行われます。レンサ球菌への過剰反応も特徴的な症状の一つで、レンサ球菌を皮膚に少量のせ、その部分の皮膚に針で傷つけ反応を観察するプリックテストが行われることもあります。その部分が赤く腫れていれば陽性と判断されます。

さらに皮疹の組織を採取して確認する病理検査や、吐血や下血がある場合には内視鏡検査、視力低下が見られる場合には細隙灯検査、神経症状がある場合には髄液検査、頭部MRI検査など症状に応じた検査も行われます。

主な治療方法

ベーチェット病に治療では薬物療法を柱に治療が行われます。症状は多岐にわたり、それぞれの症状や重症度にあった薬が用いられます。
炎症発作全般に関して、炎症と免疫の働きを抑える非ステロイド系消炎鎮痛剤は代表的です。消化管・血管・神経にまで症状が広がっている場合は免疫抑制剤も用いられます。

口内炎や外陰部潰瘍には副腎ステロイド軟膏などの塗り薬や飲み薬が効果的であるとされています。
また、目の症状に対しては点眼薬、散瞳薬などが用いられます。近年保険適応となった生物学的製剤は視力の改善が認められ、ベーチェット病治療に欠かせないものとなっています。

また炎症を抑える以外にそれぞれの症状に適した対処療法による治療も行われており、例えば関節炎の痛みは鎮痛薬、血栓症には抗凝固剤などが用いられます。消化管に穴が開いてしまうなど手術が必要になるケースもあります。

疲れやストレスによっても悪化・再発しやすいとされているため食生活や生活リズムを整えたり禁煙なども予防の一種として重要とされています。

ベーチェット病の初診に適した診療科目

ベーチェット病に関連する病名