伝染性単核球症

初診に適した診療科目

伝染性単核球症はどんな病気?

伝染性単核球症は、ヘルペスウイルスの一種にあたるエプスタイン・バール・ウイルスなどのEBウイルスに初感染することで発症する疾患です。
発熱やリンパ節が肥大することが特徴的な症状の急性感染症です。

EBウイルスの初感染は3歳までに約8割の人に起こりますが、ほとんどの場合、症状の現れない不顕性感染です。そのため、多くの人は抗体を持っており、重症化することはほとんどありません。

しかし、思春期以降に初感染が起きると、伝染性単核球症になる可能性が増大します。
日本では患者に届出をする義務がないため、正確な患者数は未確認です。推定では10~20歳代に最も多く、10万人あたり約1万2,000人といわれます。感染経路は唾液を介しているため、キス病(kissing disease)と呼ばれています。特異的な治療方法がないため、安静と対症療法で治療します。
ほとんどの場合、1〜2週間で平常の生活にもどることができます。薬の種類により、丘疹が出ることがあるため注意が必要です。

主な症状

ウイルスに感染してから4週間以上の潜伏期間を経て症状が現れ始めます。

1〜2歳児の乳幼児の場合は、ウイルスに感染しても微熱や扁桃腺が張れる程度で軽い症状しか現れません。
しかし、学童期に入ってから以降は、重症化しやすい傾向があります。
リンパ球が増加し、白血球減少が見られることが多く、倦怠感を感じます。38度以上の発熱や喉の痛み、発疹などが主な症状です。
アンピシリンなどの治療薬が原因で、浸出性紅斑様皮疹や丘疹が出てくる場合もあります。熱や喉の痛みは、約1〜2週間持続します。熱や喉の痛みが治癒された後も倦怠感が数週間または長い場合で数ヶ月続く場合があります。

重症化した場合は、肝機能異常、肝脾腫などを示す急性感染症、気道閉塞、ギランバレー症候群などあらゆるタイプの合併症にかかる可能性が大きいです。
肝脾腫は肋骨弓下を触診することで発見できます。
伴性劣性リンパ球増殖症候群を疾患している人は、伝染性単核球症を経て致死性伝染性単核症になる可能性が大きいため注意が必要です。

主な原因

伝染性単核球症の原因として最も多いのが口からの感染です。

例えばキスや飲み物の回し飲み、食器の使いまわしなどが具体例として挙げられます。これは伝染性単核球症の原因となるEBウイルスが唾液に多く含まれているからです。
EBウイルスは多くの人がすでに体内に持っているウイルスでもあり、その場合は症状が出ないことがほとんどです。また、乳幼児の頃に感染した場合には症状が出ない、もしくは軽く済むことが多いとされていますが、学童期以降の感染となると逆に症状は強く表れることが多いと言われています。

その他にサイトメガロウイルス(CMV)も原因となるウイルスですが、こちらの場合は唾液だけでなく輸血や性交渉によっても感染が広がります。
EBウイルス・サイトメガロウイルス(CMV)はどちらもヘルペスウイルスの仲間で、感染してしまうと症状がない場合でも体内にとどまり、周囲の人に感染を広げてしまう可能性があります。
また、再感染はしませんが、ヘルペスと同じように免疫力が低下した場合に発病することもあります。

主な検査と診断

脾臓の腫大や肝臓の腫大は腹部超音波検査(エコー検査)で確認できますが、急性肝炎と酷似しているため、エコー検査のみでの判断は難しいです。

頚部のリンパ節が肥大していることや臨床検査による症状のチェック及び、血液検査をして総合的に判断します。
血液検査で、症状の原因となるウイルスを特定し、炎症のレベルや肝臓機能の状況などを確認できます。
伝染性単核球症で増加するリンパ球を血液検査で確認すること、EBウイルスやサイメガロウイルス等の抗体を調べることで可能です。

しかし、検査の結果が出るまでに最大10日を必要とするため、その間に肝臓や脾臓にダメージを受けてしまう可能性があります。乳幼児が初めて伝染性単核球症に感染した場合は、あまり重篤な症状を持たず扁桃腺の腫れと軽度の発熱のみの症状であることから、伝染性単核球症と診断することは稀です。
ほとんどの場合扁桃腺炎と診断されてしまいます。

急性HIV感染症とも酷似した症状があるため、HIV感染症の可能性のある患者にはHIV RNAウイルスの定量とp24抗原の検出も行うことが推奨されます。

主な治療方法

特異的な治療法は今の時点ではまだ特定されていません。

そのため、安静とアセトアミノフェンなどを投与する対症療法が主な治療方法です。
治療期間は個人によりさまざまですが、1週間以内で20%の人が、2週間以内に50%が平常の生活に戻ります。重症の場合は、コルチコステロイドを投与すると有益である場合が多く見られます。基本的に安静にしておくことが最重要ポイントです。

しかし、発熱がおさまり、咽頭炎や倦怠感が和らいで患者自身が気持ちよく過ごせるのであれば、平常の活動に戻れます。
ただし超音波検査によって脾腫を観察し、焼失するまでは力仕事やサッカーなど他者との接触が多いスポーツは避けるべきです。

切迫した気道閉塞,重度の血小板減少,溶血性貧血などの合併症がある場合に、コルチコステロイドが投与されます。コルチコステロイドの投与によって、咽頭炎も軽減されます。アシクロビルを服用または静脈注射で投与するとEBV排出を減少に有用性がありますが、エビデンスはまだありません。