大動脈瘤 ダイドウミャクリュウ

初診に適した診療科目

大動脈瘤はどんな病気?

大動脈瘤とは、大動脈の一部に瘤状のふくらみを生じる疾患です。 瘤ができる主な原因としては動脈硬化が挙げられ、血管壁がもろくなり高血圧になる影響によって瘤ができるとされています。
瘤ができた場合、本来直径2~3センチほどだった大動脈は1.5倍以上に膨らみ、限界を超えると血管が破れます。

動脈硬化は加齢に伴って進行するため、誰にでも起こりうる疾患と言えます。
中でも特に70~80代の患者が多いとされており、男女比では男性が女性の約4倍と、男性に多い点も特徴です。

大動脈瘤を発症すると約半数が亡くなると言われるほど致死率が高い疾患ですが、大動脈に瘤が出来た段階では自覚症状はまずありません。
ほとんどの場合破裂直前に激しい痛みに襲われ、破裂すると大出血を起こしショック状態になることも多いです。
大動脈瘤の破裂を防ぐためには自覚症状の有無に関わらず 定期健診などを受けることで、症状が進行する前に瘤を発見することが非常に重要です。

主な症状

大動脈瘤は瘤ができた段階ではほとんどの場合が無症状です。症状が無いため発見されにくく、そのまま症状が進行すると大動脈瘤の破裂によって明らかになるケースも少なくありません。
動脈瘤が破裂した場合、血液が血管の外に出て激しい痛みを伴います。そのまま死に至る可能性も少なくありません。

大動脈瘤が発生したて大きくなると周辺の臓器や組織を圧迫することがあります。この場合はまれに症状が現れることもあります。
具体的には、気管や神経が圧迫されることで声がかれた状態を指す嗄声や、物の飲み込みにくさを感じることがあります。
これは大動脈の一部である弓部大動脈の周辺に食べ物を飲み込んだり声を出したりすることに関わる重要な臓器があるためです。
また、大きな腹部大動脈瘤であれば、腰痛や腹痛の他、患者が拍動する塊があるのを触って自覚するケースもあります。また、破裂が迫っている場合には動脈瘤の部位に沿った痛みを感じるケースもあります。

主な原因

大動脈瘤は動脈硬化による血管の老化が原因となって発症することが多いとされています。
先天的組織異常を原因とする場合もあります。

大動脈は心臓から送り出された血液が初めに通る血管です。
心臓からの血圧を直接受けるため常に非常に強い圧力がかかります。
ここに動脈硬化や炎症、組織異常など血管が脆くなる要因が加わることで高い圧力に耐えられず血管が広がっていきます。その結果として大動脈瘤が形成されます。

糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙、ストレスは大動脈瘤を引き起こす要因となる代表的な因子と言えます。
また、要因となりうる先天性の結合組織疾患の例としてはマルファン症候群が挙げられます。
また細菌を原因とする感染症や外傷から大動脈を併発する例もわずかに存在します。近年では遺伝的な要因についても研究が進められており、二親等以内の親族に動脈瘤の患者がいる場合、そうでない人と比べ10倍以上発症しやすくなるという報告も確認されています。

主な検査と診断

大動脈瘤は自覚症状がなく、定期健診や他の疾患のための検査などで偶然に発見されるケースが最も多いとされています。
胸部レントゲン写真では大動脈の拡大が確認できたり、超音波検査では心臓に近い部分の大動脈瘤や腹部大動脈瘤が確認されることが多いです。
触診により偶然発見されるケースもまれにあります。

上記の検査や自覚症状などから動脈瘤が疑われる場合には、確定診断のためにCT検査やMRI検査などの画像検査が行われます。
複数の画像検査から大動脈瘤の位置や大きさ、血管の状況をより詳しく正確に確認することができます。
中には正確な三次元構造を再現できる検査もあります。
これらの結果から破裂の危険性についてもある程度予測することができるため、治療にも役立ちます。
特に仮性動脈瘤なら大きさを問わず発見された時点での治療が検討されます。胸部大動脈瘤の場合には最も太い箇所の太さが5.5cm、腹部大動脈瘤の場合には4.5cm~5cmを超えた場合、破裂の可能性が高い状態と判断できます。

主な治療方法

大動脈瘤の治療には人工血管置換術やステントグラフト治療と呼ばれる方法があります。
人工血管置換術は大動脈瘤を切除して人工血管に置き換える方法を指します。
破裂の前後に関わらず大動脈瘤の標準的な治療法とされていますが、患者さんの身体的な負担が大きい点がデメリットとして挙げられます。
特に胸部大動脈瘤の場合、一度心臓を停止させて治療を行う必要があり、脳梗塞や心不全、心筋梗塞などの合併症を引き起こすリスクがあります。
ステントグラフト治療とはカテーテルによって金属性のバネを血管内に入れ、瘤の中に血液が流れ込むのを防ぐ方法です。破裂を予防する目的で行われ、腹部では手術の半数以上で使われています。
患者の負担が小さいというメリットがありますが、動脈壁の損傷や脳梗塞や腎梗塞、腸管虚血、下肢虚血などの合併症リスクがあります。

食生活や運動などに普段から気を配ることは動脈硬化の進行を遅らせ、リスクを下げる効果が期待できます。
反対に高血圧や高脂血症、たばこはリスクを押し上げる要因となります。