未破裂動脈瘤 ミハレツドウミャクリュウ

初診に適した診療科目

未破裂動脈瘤はどんな病気?

未破裂動脈瘤とは脳動脈にできた動脈瘤の中でも破れていない状態のものを指します。
脳動脈瘤とは脳の動脈のある部分がコブ状に膨らんだもので、血管の枝分かれした部分が血流に押されて膨らむことで生じます。

未破裂動脈瘤の多くは、すぐに破裂する危険性は高くありません。
破裂していない動脈瘤については、治療を急ぐ必要がないと判断されることが多いです。
ただ動脈瘤の大きさが10mm以上であったり、形がいびつなもの、家族にくも膜下出血の患者さんがいる場合には注意が必要になります。他に、未破裂でも動脈瘤が大きくなってまわりの脳や神経を圧迫している場合には、物が二重に見えたり、視力が低下したり、様々な症状をきたすことがあります。

動脈瘤が破裂した場合、くも膜下出血を引き起こします。これによって激しい頭痛と吐き気が初期症状として現れます。くも膜下出血が起こると約半数の割合で死に至る危険性があります。手術が行われた場合でも、後遺症が重く残る可能性が高いです。

主な症状

未破裂動脈瘤はほとんどの場合自覚症状はありません。
ただ未破裂動脈瘤が徐々に大きくなり周囲の神経を圧迫するようになると、頭痛やめまい、ものが二重に見えるなど、圧迫されている神経に関わる症状が現れる場合があります。

また、未破裂動脈瘤が破裂してくも膜下出血を引き起こした場合にはより明確な症状が現れます。突然の激しい頭痛、意識障害は中でも典型的な症状です。特に頭痛は経験したことのないほどの激しい痛みを感じるとされています。くも膜下出血は死亡率が高く、後遺症が残るリスクも高い疾患です。

未破裂動脈瘤が破裂して出血を起こす確率はそれぞれの瘤によって異なるものですが、総合すると約0.5~3%の確率で破裂を起こす可能性があるとされています。中でも破裂するリスクが高いのが、大きいもの、脳の後方にできているもの、いびつなもの、多数できているものとされています。また、喫煙者、高血圧、高齢者においては破裂のリスクがさらに高まるため特に注意が必要です。

主な原因

未破裂動脈瘤は脳動脈に発生するコブを指しますが、なぜコブができるのかについては解明されていません。

現時点でリスク要因とされているものには高血圧、血流の分布異常、喫煙などが挙げられます。
また、遺伝的な要因も関係している可能性もあります。これらが原因の一部となり、血管壁にストレスがかかることで慢性的な炎症を引き起こし、血管壁にコブができると考えられています。

特に動脈瘤が発生しやすいのは血管の枝分かれした部分です。できる場所は1か所とは限らず、複数の場所にできるケースも少なくありません。

またコブができる原因と同じく、破裂する原因も明らかになっていません。破裂するまでの流れとしては、まずコブに血液が流れ込み、それによってコブが大きく膨らみます。それによって血管壁が薄くなり、破裂すると考えられています。

未破裂動脈瘤が発生し、その後すぐに破裂するものもあれば、一度落ち着いた後に破裂するものなどさまざまです。中でも破れやすいとされているのは細長い形状のコブやいびつな形状のコブとされています。

主な検査と診断

未破裂動脈瘤は主にCTやMRIによる検査で発見されます。
未破裂の状態では症状が無いことがほとんどであるため、脳のMRIやCT検査をうけたり、脳ドックを受けた際に偶然発見されるケースが多いです。
中でもMRAと呼ばれる検査は脳血管の形状を詳しく把握するのに適しており、未破裂動脈瘤の大きさや形状までを確認することができます。
MRA検査は造影剤を使用しないことから患者の負担も少ない検査と言えるでしょう。

また脳動脈瘤が破裂しくも膜下出血を起こした場合には、CT検査によって出血した部分が白い塊として映ります。

未破裂脳動脈瘤が神経を圧迫している場合には頭痛やめまいなどの症状が現れ、そこから発見に至るケースもあります。代表的な発生部位は中大脳動脈、内頚動脈、前交通動脈、脳底動脈で、脳の底部の血管が分岐している部分に発生していることが多いです。

未破裂動脈瘤が見つかったとしても必ずしも治療が必要なわけではなく、小さな場合は経過観察となることも多いです。
部位や形によって破裂のリスクを想定し、年齢なども考慮した上で治療が行われます。

主な治療方法

未破裂動脈瘤の治療には、くも膜下出血の予防を目的として主に外科手術が行われます。
開頭クリッピング術か血管内コイル塞栓術のいずれかの方法で、よりリスクの低い方法が採用されます。

開頭クリッピング術は開頭して行われる手術方法で、脳動脈瘤の根にあたる部分をクリップではさみ、破裂や出血を防ぐ治療法です。
直接術部を確認しながら手術ができるため、確実性が高い点がメリットです。
また、問題となる部分の根本に対処できるため再発リスクも低い方法と言えます。デメリットとしては、正常な血管や神経を傷つけるリスクがある点です。

血管内コイル塞栓術は血管内の治療であり、足の付け根からカテーテルを入れて脳の血管まで到達させ、コブとなった部分にコイルを詰めていく治療法です。コイルを詰めることによって瘤内の血液が血栓のようになり、血液が流れ込むのを防ぎ、破裂のリスクを減らすことができます。正常な血管との境目が広い場合にはコイルだけでなくステントと呼ばれる金属の筒も詰めることで正常な血管にコイルが逸脱するのを防ぎます。