妊娠中毒後遺症 ニンシンチュウドクコウイショウ

初診に適した診療科目

妊娠中毒後遺症はどんな病気?

妊娠中毒後遺症とは、分娩後1ヵ月以上が経過しても高血圧や蛋白尿、浮腫が改善されずに残ってしまう状態を指します。
1年以上、または生涯にわたって症状が継続するケースもあります。妊娠中毒症後遺症は、妊娠中毒症のなかでも高血圧型,とくに重症例や長期持続例に多くみられます。
次回の妊娠の際、前回より症状が悪化したり重症な妊娠高血圧症候群になるリスクもあります。

妊娠中毒は現在では妊娠高血圧症候群と呼ばれています。妊娠高血圧症候群で見られる高血圧や蛋白尿などの症状は、基本的に分娩を終えると速やかに改善する場合がほとんどです。
経過を見ても症状が改善されない場合には、産後に降圧剤を服用することもあります。一人目の子供を妊娠した際に妊娠高血圧症候群と診断された場合、二人目の子供を妊娠した際にも発症する確率は通常の2倍とされています。

妊娠高血圧症候群は、その後の母体に対して高血圧や糖尿病、脂質異常症、脳血管障害、虚血性心疾患、腎疾患、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を発症するリスクを高めるとされています。

主な症状

妊娠中毒後遺症で現れる症状としては、分娩後も長い期間継続する高血圧、タンパク尿、浮腫、けいれん発作などが挙げられます。
浮腫、けいれん発作はまれな例と言えます。中でも注意が必要な症状は高血圧です。
妊娠高血圧症候群においては高血圧の基準は収縮期血圧140mmHg以上、もしくは拡張期血圧90mmHg以上と定められています。妊娠中に高血圧の症状が現れると子宮や胎盤で血流が滞りがちになるため、胎児の栄養不足や酸素不足を引き起こす可能性があります。
低栄養状態で育つ胎児は発育不全となりやすく、低体重での出産となケースも多いです。
また低酸素状態に陥ることで児子宮内胎児死亡するなど例もまれに存在します。

現在妊娠時の体重増加の目安はBMI18.5~25.0の場合、7~12㎏程度の増加が望ましいとされていますが、極端な食事制限は弊害が多く妊娠高血圧症候群が減少する根拠もないとされています。妊娠中毒後遺症の予防のためには、まず妊娠高血圧症候群を防ぐことが重要です。妊娠時の十分な休養や睡眠、適度な運動には一定の効果が期待できます。

主な原因

妊娠中毒後遺症の状態を引き起こす原因ははっきりとわかっていません。
発症のリスクが高くなる要因としては、高血圧、家族に高血圧の人がいる、肥満傾向、高齢などが挙げられます。
また血圧は過労、睡眠不足、精神的ストレスなどが原因となる場合もあります。

そもそも妊娠高血圧症候群を発症する原因も同じくはっきりとは分かっていません。ただ現在の時点で最も有力な原因とされているのが胎盤の血管の形成異常、血管内皮の増殖、腎障害、炎症性サイトカインです。妊娠高血圧症候群の母体では血管壁の再構成が不十分な可能性があると考えられています。
それによって胎児へ送られる栄養や酸素が不足することに母体が対応して、母体を高血圧状態にするという説があります。母体を高血圧状態にすることで胎児に少しでも多くの栄養素や酸素を流そうとする働きと言えます。そのほかに考えられている原因としては元々の子宮環境や、遺伝子的な要素を問題とする説もあります。

主な検査と診断

妊娠中毒後遺症は、主に妊娠中に妊娠高血圧症候群と診断されその症状が続くことで判断される場合が多いです。診断の基本となるのは血圧測定、尿検査です。
血圧測定では、約6時間以上の間隔をあけて2回以上、基準値を超える上収縮期血圧、拡張期血圧が見られた場合に高血圧と判断されます。
妊娠20週以降、分娩後12週の間にこのような高血圧が見られれば妊娠高血圧症候群と診断されます。

また、尿検査では尿中蛋白を測定し、蛋白尿が伴っていることも診断の助けとなります。
通常の妊婦健診で行われる尿検査はテステープと呼ばれる試験紙のようなものを使用しますが、より精密に測定を行う方法としては24時間のうち排泄された尿を溜めて行う24時間蓄尿と呼ばれる方法が有効です。より詳しく尿の総量や尿中の成分を調べることが可能です。

妊娠中毒後遺症の状態にある場合には、高血圧や蛋白尿の症状が治まるまで次の妊娠を控えるのが理想とされています。
そのため定期的に血圧測定や尿検査を行い、経過を観察することも重要です。

主な治療方法

妊娠中毒後遺症の状態にあり高血圧が続く場合は、血圧を下げる降圧薬の投与が行われます。
ただ軽症の場合には原則的に薬物治療は行われない場合が多いです。肥満に注意し、食事制限によって総摂取カロリーや塩分制限を行うなど食事管理の指導が一般的です。
妊娠中に妊娠高血圧症候群を発症した人は、発症していない人と比較して、産後にメタボリックシンドロームや腎疾患などを発症する例が多いとされています。
また高血圧はストレスなどの要因で悪化する場合があるため、安静により十分な睡眠とストレスをためない生活を送ることも重要です。

水分摂取制限や利尿剤の使用は血栓症の発症リスクを高める可能性があります。主治医の指示に従って使用することも重要です。

高血圧、腎臓の疾患、糖尿病などの持病がある人や、肥満体型の人、35歳以上もしくは15歳未満の人、多胎妊娠の人などは、特に妊娠高血圧症候群を発症しやすい傾向にあるため、症状が現れていない場合でも妊娠中の生活習慣には注意が必要と言えます。