ホルモン産生腫瘍 ホルモンサンセイシュヨウ

初診に適した診療科目

ホルモン産生腫瘍はどんな病気?

ホルモン産生腫瘍とは特定のホルモンを過剰に作り出す良性の腫瘍を指します。
様々な部位に生じることがあり、代表的な例では下垂体腫瘍や卵巣腫瘍が挙げられます。
各ホルモンの産生細胞が腫瘍化することによって腫瘍自体が性ホルモンを産生し続けるという特徴があります。

卵巣腫瘍の場合は、性ホルモンの一種であるエストロゲンやアンドロゲンが過剰に産生されます。
エストロゲンの過剰産生によって主に女性に現れる症状としては、性早熟、月経異常、および閉経後性器出血などが挙げられます。
アンドロゲンの過剰産生の場合には陰核肥大、多毛、頭髪が薄くなる、にきびができる、声が低くなる、筋肉量の増加、性衝動が強くなるなど、主に男性的な症状が現れます。
下垂体腫瘍の場合にもさまざまなホルモンの産生に影響するケースがあり、増加するホルモンの種類によって症状はまったく異なります。

ホルモン産生腫瘍の場合、手術による切除や薬物療法による治療が行われます。

主な症状

ホルモン産生腫瘍によって現れる症状は、腫瘍がどの臓器に生じているかや、影響を与えているホルモンの種類によって異なります。

ホルモン産生腫瘍の中でも代表的と言える種類として下垂体腫瘍が挙げられます。
下垂体の前葉からは、乳腺刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン、抗利尿ホルモンなど、生体の維持に欠かせないホルモンが分泌されます。
例えばプロラクチンを産生する腫瘍の場合には乳汁分泌、無月経などが症状として現れます。
また成長ホルモンが産生される腫瘍の場合、末端肥大症と呼ばれる疾患を引き起こします。顔つきの特徴的な変化や、手や足が大きくなるなどの症状が現れます。

また、卵巣腫瘍の場合はエストロゲンと呼ばれる性ホルモンの一種を主に産生します。
伴って現れる症状としては不正性器出血、無月経、思春期早発などが挙げられます。ホルモン産生卵巣腫瘍は卵巣腫瘍の約2%を占めるとされています。

主な原因

ホルモン産生腫瘍を発症する原因ははっきりと解明されていません。
何らかの要因によって一部の細胞が腫瘍化し、それによって特定のホルモンが過剰に産生するものをホルモン産生腫瘍と呼びます。現在のところ、遺伝的な要因は関連していないとされています。
生活習慣や食生活などは、発症のリスクを高める要因の一つとして挙げられます。


下垂体腫瘍の場合、良性腫瘍の中でもホルモン生産腫瘍、非ホルモン産生腫瘍などに分類することができます。
ホルモン生産腫瘍の場合、特定のホルモンが過剰に産生されることで症状が現れることで発見に至るケースが多いです。
一方、非ホルモン産生腫瘍の場合は腫瘍が大きくなり周囲の組織を圧迫することで症状が現れ、発見に至るケースが多いです。

卵巣腫瘍の一部には、排卵回数や遺伝的な要素が発症に関連しているとされています。
エストロゲン産生腫瘍は性索間質性腫瘍の中に分類されますが、この腫瘍の発症に排卵回数や遺伝因子が影響しているかは不明です。

主な検査と診断

ホルモン産生腫瘍を診断するためには、それぞれの腫瘍を特定するための検査が行われます。
特に血液検査とMRI検査は腫瘍がある部位に関わらず重要な検査と言えます。

例えば下垂体腫瘍の場合には、各ホルモンの産生が続くことで症状が現れ、受診に至る場合が多いです。
下垂体腫瘍の場合、MRIを用いた画像検査が有効です。この検査によって比較的容易に診断を確定することができます。
さらに詳しく情報を確認するために血液検査も行われます。これによって正常値を保っているホルモンと、過剰になっているホルモンの数値を確認することができます。

卵巣腫瘍の場合には経腟超音波検査、子宮頸部や子宮内膜の細胞診、組織診、血液検査、MRI検査などが必要に応じて行われます。
経腟超音波検査によって腫瘍の可能性が疑われ、MRI検査によってはっきりと確認されるケースが多いです。
下垂体腫瘍の場合と同様に、血液検査では主にエストロゲン、アンドロゲンなどの性ホルモンの数値を確認します。

主な治療方法

ホルモン産生腫瘍の治療は、薬物療法や手術による腫瘍の切除が行われます。
卵巣腫瘍の場合、患者の年齢や腫瘍の大きさ、周囲との癒着などを含めて治療方針が検討されます。
手術の方法には卵巣腫瘍核出術、卵巣摘出術、付属器摘出術などがあり、治療後に妊娠を希望するかによっても治療法は異なります。

下垂体腫瘍の場合は、影響するホルモンによっても治療法が異なります。
プロラクチン産生腫瘍の場合にはブロモクリプチンなどの高い効果を示す薬があるため、薬物療法が選択されることも多いです。
手術によって完全に腫瘍が摘出できる場合には、その後完全に治癒が期待できます。
放射線療法も選択肢に挙げられますが、行われることは少ないと言えます。成長ホルモン産生腫瘍の場合には、手術が第一選択肢として行われ、薬物療法は手術後の追加治療として行われます。
腫瘍が大きい場合には全摘出できないケースも多く、残った腫瘍に対して薬物療法が行われます。