下垂体腫瘍 カスイタイシュヨウ

初診に適した診療科目

下垂体腫瘍はどんな病気?

下垂体腺腫とは、脳下垂体にできる脳腫瘍の一種です。脳下垂体は頭蓋骨の底部・中心部にあるトルコ鞍という窪みの中にある豆粒大ほどのものです。
脳下垂体の上方には、ものを見るために必要な視神経が左右の眼球へ延びていき交叉しています。
また、脳下垂体の横には、脳に血液を送る重要な血管(内頸動脈)や眼球を動かす神経が通っています。脳下垂体はその大部分を占める前葉と小さな後葉の2部に分かれており、全身のホルモンの中枢として多くのホルモンを分泌しています。

下垂体腺腫は機能性下垂体腺腫と非機能性腺腫の2種類があり、機能性下垂体腺腫はホルモンを過剰に分泌するもので非機能性腺腫は逆にホルモンを分泌しないものです。、機能性下垂体腺腫は過剰分泌されるホルモンによっても症状が異なり、プロラクチンや成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモンなどがあります。

下垂体腺腫は脳腫瘍の中でも3番目に多いものですがほとんどが良性で、悪性なケースはまれです。

主な症状

下垂体腫瘍の症状には、大きく分けてホルモンが過剰に分泌されることによるホルモン異常症候群と、腫瘍が大きくなることによる局所の圧迫症状とがあります。
腫瘍が大きくなると視神経の視力や視野に関わる部分を圧迫し、視野障害が起こるのが特徴です。両目の外側の視野が欠けたようになる症状や、頭痛も代表的な症状のひとつです。

機能性下垂体腫の場合はホルモンの分泌が正常に行われないことで、それぞれのホルモンに関わる症状が現れます。プロラクチン産生腺腫では月経不順、無月経、性欲低下、勃起不全。甲状腺刺激ホルモン産生腺腫では動悸、体重減少、発汗過多、甲状腺腫。成長ホルモン産生腺腫では巨人症、先端巨大症と同様の症状。副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫では高血圧症や糖尿病、中心性肥満などです。

非機能性下垂体腫瘍ではホルモン分泌が止まることでホルモンを制御する器官の働き影響が出て、結果として頭痛や視力低下をはじめ、性欲低下や性的発達が遅延が起こることもあります。

主な原因

下垂体腫瘍は脳の中央部にある下垂体の組織に異常な細胞が増殖し腫瘍となります。身体中の多くの腺を制御してしまうことでホルモン分泌に影響が出ます。
しかし下垂体腫瘍はそのほとんどが良性で、悪性のケースはごくまれです。

下垂体腺腫の原因は明らかにされていませんが妊娠や出産、ホルモン療法を受けているなど、内分泌に関わる体内環境の変化がやや影響を与えるリスクがあると確認されています。現状、遺伝的な要素や生活習慣、食事、運動などが影響を与えることはないとされていますが、一部発症リスクが増加する可能性があるとされるものもあります。

リスク因子として挙げられているのは多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)症候群、カーニー複合、孤発性家族性末端肥大症などの遺伝性の疾患です。しかしこれらはあくまでもリスクを持つ可能性があるというだけで、はっきりと下垂体腺腫の原因とされるものではありません。リスクを持つ可能性がある人は医師に相談したり、定期的な検診を受けるなど対策を講じることが大切です。

主な検査と診断

下垂体腫瘍の検査では、頭部レントゲン、CTやMRIなどの画像検査や血液検査、尿検査、視力に関わる精密検査などが行われます。診断は主に頭部レントゲン、CTなどの画像検査で行われ、詳細をその他の検査で調べる場合が多いです。

画像検査では主に腫瘍の位置や大きさ、どの程度まで広がっているかなど腫瘍の状況を確認します。
MRIが診断に最も有効な画像診断とされており、造影剤などを使用することで腫瘍が広がる範囲が明確になります。

血液検査や尿検査は機能性下垂体腺腫の疑いがある場合に行うのが一般的で、血中や尿のホルモン値を調べます。このときホルモンの量が正常値よりも高値か低値であれば、下垂体腫瘍の徴候であると言えます。

さらに内分泌学的検査では、ホルモンの分泌を刺激する物質を投与して、一定時間毎にホルモンの変化を確認します。下垂体腫瘍の症状の特徴である視力、視野、眼底の検査も併せて行います。必要があれば、細胞や組織を摘出し、がんの徴候があるかどうかを顕微鏡下で観察する生検を行うこともあります。


主な治療方法

下垂体腺腫の治療には、外科療法、放射線療法、および化学療法の3通りの治療法があり、それぞれの腫瘍のタイプや大きさ、症状、年齢などにより治療法や組み合わせが決められます。

中でも一般的なのが経鼻手術と呼ばれる鼻から器具を脳の一部に挿入して腫瘍を掻き出したり切除する外科療法です。内視鏡を用いて同様の手術を行う場合もあります。
まれに腫瘍の位置などによっては開頭手術になる可能性もあります。
外科手術によって術前の視力・視野障害は8割程度改善するとされています。下垂体腺腫の治療では、手術後も定期的なホルモン検査、MRI検査、CT検査を行いホルモンを補う薬物治療を継続することが重要です。

放射線療法は手術で取り切れなかった腫瘍や、体内に残っているがん細胞を殺す、増殖を抑える目的で行われることも多いです。化学療法は生活の質の改善を目的に行うもので、がん細胞の増殖を停止させるために薬剤を用いる方法で長期の通院が伴います。