甲状腺腫瘍

初診に適した診療科目

甲状腺腫瘍はどんな病気?

甲状腺腫瘍とは首の前面にある甲状腺にできる腫瘍を指します。
良性腫瘍かいわゆるがんである悪性腫瘍かに分類されます。
良性腫瘍には濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫、嚢胞などの種類があります。一方悪性腫瘍は乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、低分化がん、未分化がん、その他の悪性リンパ腫などに分けられます。
中でも乳頭がんは甲状腺の悪性腫瘍の9割以上を占めます。

甲状腺に腫瘍ができると声のかすれや物が飲み込みにくくなるなどの症状が現れます。
その他にも甲状腺ホルモンに関連した症状が現れます。気が付きやすい自覚症状としては首の腫れが代表的です。甲状腺腫瘍は20~50歳代の女性に多い傾向があります。

甲状腺に腫瘍が見つかった場合、まずは超音波検査が行われます。悪性の可能性があれば精密検査によって良性か悪性かを調べますが、実際に手術を行わないと区別できないことも多いです。

甲状腺の腫瘍は悪性の場合でも根治が期待できるものがほとんどです。

主な症状

甲状腺腫瘍があっても、予後のよい乳頭がんや濾胞がんでは甲状腺のはれ以外には自覚症状がない場合が多いです。
そのため健康診断やかぜなどで医療機関を受診して偶然に指摘されることがほとんどです。
腫瘍が大きくなるにつれて甲状腺のしこりや甲状腺全体の腫れが目立ち、前頸部に違和感を感じるようになります。
特に 悪性度の高い未分化がんでは、甲状腺のはれが急速に大きくなり、痛みや発熱などの症状が現れる場合もあります。またさらに症状が進行すると、大きくなった腫瘍が周囲を圧迫して声がかすれたり、物が飲み込みにくくなったり、呼吸困難を引き起こす可能性があります。

甲状腺はホルモンを産生する役割を担っており、特に腫瘍によって甲状腺ホルモンが過剰になると発汗、疲れやすい、動悸、下痢、体重減少、手足の震え、食欲亢進、眼球突出などの症状を引き起こします。反対に甲状腺ホルモンの作用が低下した場合には脱毛、皮膚の乾燥、体重増加、むくみ、しびれ、眠気、便秘、記憶力の低下、うつ症状などの症状を引き起こします。

主な原因

甲状腺腫瘍の一部は良性、悪性を問わず遺伝子の異常により発症するとされていますが、多くは原因不明のものです。悪性腫瘍に関してはがんの種類によって進行のスピードや伴って現れる症状も異なります。

良性の甲状腺腫瘍はヨードの不足などを原因として甲状腺の一部にしこりのようなできものを生じます。大きく腫れる場合には橋本病やバセドウ病などが疑われます。また、悪性の甲状腺腫瘍には放射線を原因とするものや、橋本病に続発してできるもの、遺伝子異常を原因とするものなどがあります。中でも悪性腫瘍の一種である髄様がんは約4割が遺伝によるものとされています。ただし、その他の種類においては家族性によるものは1割にも満たないとされています。

また、若年期に放射線を大量に被爆することでも甲状腺がんを発症するリスクが高くなるとされています。これは広島・長崎の被ばく者やチェルノブイリ原発事故の被ばく者を研究した結果から明らかになりました。

主な検査と診断

甲状腺腫瘍の診断には、まず実際に甲状腺を触知して腫瘍の大きさや固さ、可動性などを確認し、痛みの有無については問診でも確認します。

甲状腺に腫瘍が見つかるとまず甲状腺機能検査によって血液中の甲状腺刺激ホルモンの量を測定します。この結果から甲状腺の活動が過剰になってる場合には腫瘍から甲状腺ホルモンが分泌されているのかを調べます。この結果から甲状腺機能亢進症や橋本甲状腺炎であるかを確認することができます。

さらに甲状腺腫瘍の診断において最も重要な腫瘍の性状の評価のために、超音波検査、CT検査、MRI検査、シンチグラフィーなどの検査が行われます。超音波検査では大きさはもちろん内部が細胞で詰まっているのか液体なのかなども確認できます。さらに必要に応じて病変部位から検体を採取して行われる病理検査なども行われます。特に悪性腫瘍が疑われる場合に行われることが多いです。

近年では頸動脈超音波検査やPET検診の普及によって、偶然甲状腺内に腫瘍が発見されるケースも増えています。

主な治療方法

甲状腺腫瘍の中でも良性の甲状腺腫瘍の場合の多くは積極的な治療は行われず、経過観察とななります。
甲状腺機能亢進症を発症している場合には内服薬や手術療法、アイソトープ療法などの選択肢があります。
反対に甲状腺の機能が低下している場合には甲状腺ホルモンの補充療法が選択されます。
また、腫瘍が大きく美容的に気になる場合や圧迫症状が強い、悪性腫瘍の合併が疑われる場合には良性であっても手術が検討されます。

悪性の甲状腺腫瘍に対する治療はその危険度に応じた治療が選択されます。
危険度が低い場合には、悪性であっても過剰に治療は行わずに経過観察となる場合もありますが、多くは手術が選択されます。危険性が高いと判断される場合には手術以外にも、放射線ヨウ素治療、TSH抑制療法などの治療法が検討されます。放射線ヨウ素治療は術後の再発や、遠隔転移がある場合にも行われます。

また手術が行われる場合には、声を出す、食べ物を飲み込むなどの機能に近い部位に対して治療が行われるため特に慎重さが求められます。