急性化膿性甲状腺炎 キュウセイカノウセイコウジョウセンエン

初診に適した診療科目

急性化膿性甲状腺炎はどんな病気?

急性化膿性甲状腺炎とは、急性甲状腺炎とも呼ばれる病気で、名前のとおり、甲状腺や周囲に炎症が起こり化膿する疾患を指します。
亜急性甲状腺炎がウイルス感染によるものであるのに対して、急性化膿性甲状腺炎は細菌感染により起こります。
食道の入り口にある先天的な異常により生じる下咽頭梨状窩瘻と呼ばれる細い通り道から細菌感染するケースも多いとされています。
発症は12歳以下の小児に特に多く、左側の甲状腺に炎症を起こすケースがほとんどです。

急性化膿性甲状腺炎を発症すると甲状腺が腫れて痛みや発熱を生じ、食事で食べ物を飲み込んだり、つばを飲み込む際にも痛みを感じます。

治療には抗生物質の投与や、炎症して化膿している部分を切開して膿を排出する方法などが行われます。これらの治療によって膿が正常に排出されれば、症状も自然と回復していきます。しかし適切に治療を行った後も、かぜや扁桃腺炎を発症した後にそれらに続発する形で繰り返し発症するケースも珍しくありません。

主な症状

急性化膿性甲状腺炎の主な症状は、発熱と甲状腺部分の圧痛です。
食事や唾を飲んだ際にも痛みを生じます。また症状が進み炎症が強くなると、甲状腺にしこりができ、その部分の皮膚が赤くなり腫れが生じます。
初期の段階ではこのような皮膚の発赤は見られません。しこりは硬く、約80%の確率で甲状腺左葉に現れる特徴があります。
一般的に亜急性甲状腺炎と症状が似ているとされていますが、急性化膿性甲状腺炎はしこりは左右に動くことがなく、その点が亜急性甲状腺炎との違いと言えます。

甲状腺のう胞性腫瘍内に発症し、のう胞部分が腫大すると機関狭窄を引き起こすこともあります。また、炎症を起こしている部分が化膿して膿が溜まります。
根本的な治療のためにはこの膿を排出する必要があります。

また軽度の甲状腺中毒症を引き起こすことも多いです。血行性免疫不全による敗血症を発症している人が、急性化膿性甲状腺炎を併発するケースもあります。

主な原因

急性化膿性甲状腺炎は細菌感染を原因として発症します。
また細菌感染は下咽頭梨状窩瘻と呼ばれる細い通り道から細菌が侵入して起こると考えられています。
下咽頭梨状窩瘻は下咽頭から甲状腺に向かって走る瘻孔と呼ばれる細い管を指します。下咽頭梨状窩瘻はすべての人にあるものではなく、先天性の異常によって発生するものです。
のどから侵入した細菌は瘻孔を通り甲状腺に到達します。

その他に糖尿病や免疫抑制剤などによる血行性免疫不全を原因として発症するケースもあります。
敗血症を発症している人が急性化膿性甲状腺炎を発症した場合には多発膿瘍のうちの一つとして判断されます。

また、まれに穿刺吸引細胞診と呼ばれる検査によって細菌感染が起こるケースもあります。穿刺吸引細胞診は皮膚の上から針を刺し、腫瘍などの細胞を採取する検査です。特に他の疾患などで免疫が低下している場合、特に注意が必要です。その他には扁桃腺炎、扁桃周囲膿瘍、虫歯による感染症が広がって筋膜の間から甲状腺に感染を及ぼす場合もあります。

主な検査と診断

急性化膿性甲状腺炎の診断には問診や診察に加え、血液検査、頚部超音波検査、咽頭造影などが行われます。
問診では自覚症状の確認や、しこりが現れている場合にはそれが手で触れて動くかどうかなど触診による確認が行われます。

血液検査では炎症の程度、甲状腺ホルモンの値を確認することができます。
急性化膿性甲状腺炎は急性の細菌感染であるため、特に炎症を表す数値の上昇が顕著に現れるのが特徴です。

頚部超音波検査では甲状腺の形を確認したり、血流が変化していることを確認することができます。
ただ初期の段階では亜急性甲状腺炎との違いを判断するのか困難な場合があります。

咽頭造影とは造影剤を使用して下咽頭梨状窩瘻の有無を確認することができます。
急性化膿性甲状腺炎を発症している場合、高い確率で下咽頭梨状窩瘻を確認することができます。

必要に応じて穿刺細胞診と呼ばれる検査を行い、膿を採取して細菌培養を行うことも可能です。
この場合、のう胞内感染であれば茶褐色の内容液を採取できます。

主な治療方法

急性化膿性甲状腺炎の治療は抗菌薬による薬物療法や膿の排出、瘻孔の摘出などが行われます。
症状が現れている場合には抗菌薬を使用して細菌の増殖を抑えたり、殺菌する効果が期待できます。
この際、亜急性甲状腺炎と誤診されているとステロイド投与が行われ症状が悪化するケースがあるため注意が必要です。

膿がたまっている場合、膿を排出する治療も行われます。
切開排膿や持続ドレナージなどの方法があり、ほとんどの場合は膿を排出すると症状が落ち着き回復します。
症状が落ち着いたら、瘻孔の摘出手術を行うことで再発を防ぐことができます。その際、神経などを傷つけないよう十分注意する必要があります。
反回神経と呼ばれる神経に傷がつくと声がかすれるなどの影響が現れることがあるためです。
手術を行う前に色素を飲んで下咽頭梨状窩瘻を染色するのが一般的です。瘻孔を閉鎖する治療の方法としては化学焼灼療法や半導体レーザー焼灼療法などが挙げられます。