ウォルフラム症候群 ウォルフラムショウコウグン

初診に適した診療科目

ウォルフラム症候群はどんな病気?

ウォルフラム症候群とはDIDMOAD症候群とも呼ばれ、糖尿病、視神経萎縮(視力障害)、尿崩症(多尿)、難聴などにさまざまな神経・精神症状を合併する遺伝性疾患を指します。
多くの場合、小児期に糖尿病を発症し、次いで視神経萎縮による色覚の異常や視力の低下を発症します。
糖尿病と視力障害の特徴的な症候が見られる場合に診断されます。10歳前後に発症する糖尿病が初発症状となることが多いです。

内分泌代謝系、精神神経系の広範囲に影響を及ぼし、尿崩症、難聴、尿路異常などの症状が現れることもあります。
ウォルフラム症候群の多くは遺伝子変異によるものと考えられており、原因遺伝子も確認されていますが、一部その遺伝子に変異が確認できないにも関わらずウォルフラム症候群を発症しているケースもあります。発症メカニズムについては現在も研究が進められています。

視力低下、難聴、神経症状は日常生活に大きく影響を及ぼします。誤嚥性肺炎に代表される合併症や感染症には予後に大きく関わるため特に注意が必要です。

主な症状

ウォルフラム症候群を発症すると、初期に現れるのどの渇き、体のだるさ、体重減少などが診断のきっかけになります。
また、インスリン依存性の糖尿病を10歳前後に発症するケースが多く、これに対してはインスリン治療が必要です。
膵臓からのインスリン分泌が極端に少ないインスリン依存性の糖尿病である場合が多いです。

また糖尿病の発症にやや遅れて色が判別しにくい、全て灰色がかって見えるなどの色覚の異常や、視力の障害が現れます。
また、尿が濃縮でないために尿の量や回数が多くなりのどが渇いたり、尿崩症などの尿路異常による症状を引き起こすケースもあります。
その他にも、感音性難聴などの聴力低下、歩行障害(運動失調)やうつ症状なども現れる可能性があります。
このようにウォルフラム症候群は多彩な合併症を発症する可能性があり、それに伴って生じる症状もさまざまです。

発病すると症状は進行性ですが、患者さんによっては一部の症候しか現れない場合もあります。

主な原因

ウォルフラム症候群は、WFS1と呼ばれる原因遺伝子の変異を原因として発症することが確認されています。
これによって現在では遺伝子による診断が可能になりました。日本においては患者の約6割にこの遺伝子の異常が確認されています。

WFS1とは主に小胞体に存在するタンパク質の一種でウォルフラミンと呼ばれています。
このタンパク質が欠損した細胞は小胞体ストレスに脆弱であるという特徴があります。
WFS1遺伝子の変異は常染色体劣性ウォルフラム症候群、常染色体優性低音感音難聴の2つの遺伝性疾患の原因となることが分かっています。

ただ発症の原因は遺伝子変異のみに限られておらず、多様性もあります。ウォルフラム症候群を発症していてもWFS1遺伝子に変異が見られない場合も多く存在します。
発病に至るメカニズムには不明な部分が多く現在も研究が進められています。

ウォルフラム症候群は難病に指定されている疾患で、現段階で日本における患者は約200人程度とされています。

主な検査と診断

ウォルフラム症候群の診断には小児期の糖尿病を発症と視神経萎縮による色覚の異常や視力の低下という特徴的な症状が合併していることから診断がくだされます。

詳しい診断の基準としては30歳未満で発症した糖尿病、視神経萎縮、WFS1遺伝子の変異の3つの項目のうち2つを満たした場合にウォルフラム症候群と判断されます。
また参考項目として感音性難聴、中枢性尿崩症、尿路異常、神経症状、精神症状の5つが挙げられており、この中の1つ以上の合併が見られれば遺伝子検査を行うことが多いです。

またこの診断に至るまでに血液検査、視力検査、遺伝子検査などが行われます。
視神経萎縮を判断するためには眼底検査、中心フリッカー検査、視野検査などが行われます。
進行性の両眼の視力障害、視神経乳頭蒼白、閾値低下、視野欠損などが特徴的な症状です。

視力を基準とした重症度の分類もあり、良好な方の眼の矯正視力が0.3未満である場合には重症と判断されます。

主な治療方法

ウォルフラム症候群の治療は根本的なな治療方法が未確立であるため対症療法、支持療法が中心となります。ウォルフラム症候群の症状は進行性で、段階に合わせた治療が必要です。糖尿病に対してはインスリン療法や尿崩症に対してはデスモプレッシンの投与を行う方法が一般的です。

ウォルフラム症候群に伴うインスリン依存性の糖尿病はインスリン非依存型糖尿病に比べると極めて少なく、糖尿病全体で見ても5%以下とされています。治療は自己注射によって毎日インスリンを補充する方法が用いられます。また、厳密な食事管理を行うことも症状悪化を防ぐために重要です。

ウォルフラム症候群に伴う尿崩症は抗利尿ホルモンの産生や分泌が低下する中枢性尿崩症にあたります。この治療においては主に外部からデスモプレッシンを投与し尿量調整を行う方法が標準的です。デスモプレッシンは通常は脳から分泌される抗利尿ホルモンで、尿を減らす役目を果たすものです。