プラダー・ウィリー症候群 プラダー ウィリーショウコウグン

初診に適した診療科目

プラダー・ウィリー症候群はどんな病気?

プラダー・ウィリー症候群とは乳児期の早期に重度の筋緊張低下、摂食障害を生じ、徐々に過食と病的肥満症を生じる疾患です。
プラダー・ウィリー症候群は出生児の約15,000人に1人の割合で発症が見られ、難病指定されています。
生後間もない重度の筋緊張低下によって呼吸や哺乳が障害されます。
また中度の知的障害を合併するケースも多いとされています。外性器の低形成、小さな手足、特徴的な顔つきなど典型的な症状として挙げられます。

発症の原因は、父親由来の15番染色体のq11とq13の間の遺伝子が欠けていたり、突然変異によって発症すると考えられていますが発症のメカニズムとしては明らかになっていないことも多いです。
最も多い発症の原因としては15q11-q13の父性染色体微細欠失が挙げられ、プラダー・ウィリー症候群全体の約7割がこれに該当します。

治療としては早期の療育や栄養管理、成長ホルモン療法などが行われます。中でも栄養管理が最も重要とされています。

主な症状

プラダー・ウィリー症候群を発症すると、内分泌学的な異常としては肥満、糖尿病、低身長、性腺機能不全、神経学的な異常として発達遅滞、筋緊張低下、性格障害、行動異常などが現れます。
乳児期早期から重度の筋緊張の低下、摂食障害が現れます。
そのため哺乳がうまくできなかったり、呼吸が障害される場合が多いです。

乳児期後期から小児期早期頃には過食が見られるようになり、摂食をコントロールできなくなる病的肥満症が徐々に進行していきます。
運動発達や言語の発達が遅れがちで、認知障害とほぼずべての患者に見られる症状です。
行動にも特徴があり、かんしゃく発作、頑固な性格、他人を操作しようとする、強迫的性格などが具体的な例として挙げられます。

性腺機能が低下した場合、性器形成不全、思春期発育不全、不妊などの症状が現れます。
この場合に男女における差はありません。まれに現れる症状としては斜視、背骨が左右に弯曲する側彎などがあります。
インスリン非依存性糖尿病は肥満と同時に発症する場合がほとんどです。

主な原因

プラダー・ウィリー症候群を発症する原因は、父親由来の遺伝子の異常や変形によるものが多いとされています。
15番染色体にあるアンジェルマン症候群領域と呼ばれる位置を15q11.2-q13と言います。
この15q11.2-q13の位置にある父親由来の遺伝子がうまく作用しないことでプラダー・ウィリー症候群を発症します。そのうち約7割が遺伝子が欠けていたり,突然変異を起こしたりしているものです。
約2割は1対の第15染色体の中で父親から受け継いだものがなく、どちらも母親に由来する母性片親性ダイソミーがあります。
その他には15番染色体に関わる転座や逆位などの染色体異常などが挙げられます。ただ発症のメカニズムに関しては不明な点もいまだに多く、現在も研究が進められています。

事前に家系で遺伝的原因が明らかになっている場合には出生前診断も可能とされています。
また上の子供がプラダー・ウィリー症候群であっても、その次の子供に発症するケースはまれで、確率は0.1%以下という報告もあります。

主な検査と診断

プラダー・ウィリー症候群の診断には広く用いられている診断基準があり、その基準とメチル試験によってほぼ確定されます。
また遺伝子診断や遺伝カウンセリング 、合併している疾患を調べるために必要な画像検査や血液検査などが行われます。

メチル試験とはDNAメチル化解析とも呼ばれるもので遺伝子を詳しく調べることができる検査です。
それ以外にも基本的には15番目の染色体についてさまざまな方法を用いて欠損や変異がないかと調べます。
これらの遺伝子の検査は症状などからプラダー・ウィリー症候群が疑われる場合に行われます。
メチル試験は有効性が高いとされているものの、保険適応外の検査であるためそれに継ぐFISH法によって検査が行われるケースも多いです。

基準として示されている典型的な症状は年齢別となっており、例えば生後~2歳では筋緊張低下を伴う哺乳不良、2歳~6歳では哺乳不良の既往を伴う筋緊張低下、全般的な発達遅滞などが挙げられ、6歳~12歳、13歳~成人とおおまかに4つの区分に示されています。

主な治療方法

プラダー・ウィリー症候群に有効な治療としては栄養管理、運動療法、成長ホルモン補充療法、インスリン治療、向精神薬などの方法から症状の程度に適した方法が選択されます。
染色体異常を根本的に治療することはできません。

最も重要とされている食事療法では、主に摂取カロリーの制限を行い肥満にならないようコントロールします。
3~4歳頃の場合、身長1cmあたり10Kcalが目安となります。プラダー・ウィリー症候群の患者は摂取カロリーを控えていても肥満になりやすい傾向があります。
運動療法では水泳などの適度な運動を継続することで肥満を予防します。
まったく運動をしなくなると短期間で急激に体重が増加し、肥満となるケースも多いためです。

成長ホルモン補充療法は身長促進、体組成改善、筋力向上に効果的です。
ただこの治療によって糖質代謝、呼吸障害、側弯症などの影響が現れることがあるため、治療中は慎重に経過を観察する必要があります。性ホルモン補充療法も選択肢のひとつですが、あまり行われないことが多いです。

その他、糖尿病を発症した場合はインスリン治療などが行われます。