アルコール性肝腺維症 アルコールセイカンセンイショウ

初診に適した診療科目

アルコール性肝腺維症はどんな病気?

アルコール性肝腺維症とはアルコール性肝障害の一種で、常習の飲酒によって類洞壁細胞の1つ(伊東細胞または星細胞)が活性化して線維が増殖してきた状態を指します。

アルコールを過剰に摂取することによって肝臓の処理能力が低下して発症に至ります。
経過で見ると、まず肝臓に中性脂肪が蓄積しアルコール性脂肪肝を生じます。
この段階で生活習慣の改善や適切な処置が行われずにアルコールの摂取を継続すると脂肪肝が進行し、肝臓の細胞や静脈に細い線維を生じます。

大量の飲酒によって発熱、黄疸、下痢などさまざまな症状が現れます。
特に日本ではアルコール性肝腺維症の状態を示すアルコール性肝障害が多くなっています。
またアルコールの過剰摂取によってアルコール肝硬変を発症するケースもあります。
アルコール肝硬変を発症すると糖尿病、浮腫、腹水などが症状として現れ、進行すると肝性脳腫や肺炎、急性腎不全、消化管出血などを引き起こす可能性があります。
これらを発症すると早ければ1ヶ月程度で死に至る可能性があります。

主な症状

アルコール性肝腺維症の代表的な症状は主に大量の飲酒やアルコール肝硬変などによって生じる症状と一致します。軽症なアルコール性脂肪肝の段階では症状が現れないことも多く、定期検査で偶然に発見されるケースも多いです。お腹が張る、疲れやすい、食欲がないなどは初期に現れる自覚症状ですがあまり深刻に捉えず、見過ごされることも少なくありません。

大量の飲酒によって起こる症状としては発熱、黄疸、右上腹部痛、肝臓の圧腹、食欲不振、嘔吐、下痢などが挙げられます。これらの症状が現れた時点でアルコール性肝炎を発症している可能性があります。アルコール性肝炎が重症化すると、腎不全、消化管出血、肝性脳症といった重い合併症を伴います。この段階では禁酒した後も肝臓の腫れが継続します。

また、肝臓機能が低下してアルコール肝硬変に至った場合の症状としては腹水や黄だん、吐血、腹水、むくみ、昏睡状態などが代表的なものとして挙げられます。

主な原因

アルコール性肝腺維症はアルコールを大量摂取することによって体内でのアルコール処理に異常が起こることで発症します。
アルコールの処理は人間の体の中で処理される様々な物質の中でも最優先で行われます。
アルコールと脂肪は同時に処理することができないため、結果として肝臓に脂肪が蓄積していき脂肪肝の状態に至ります。
この脂肪肝が進行すると肝臓の細胞や静脈に線維を生じるようになり、アルコール性肝腺維症を発症します。
この線維化はアルコール性肝障害の比較的早期の段階から見られます。

アルコール性肝腺維症を含む、アルコール性肝疾患を発症しやすい条件としては大量の飲酒、8年以上に及ぶ長期間の飲酒習慣、アルコール性肝疾患にかかりやすい遺伝的な要因などが挙げられます。
また女性の方が男性と比較してアルコールによる肝傷害を発症しやすい傾向があります。
女性は男性の約半分の飲酒量でも肝傷害のリスクがあるとされています。これは消化器系のアルコール処理能力における男女の差が大きいためです。また肥満の人にも発症が多い傾向があります。

主な検査と診断

アルコール性肝腺維症の診断には血液検査が行われます。症状が重篤な場合を除き、ほとんどの場合は自覚症状がありません。
血液検査では特にGOT・GPT・γ-GPT値などの数値に注目して判断され、中でもγ-GPTが最も重要な数値です。
確定診断にはその他にも画像検査の結果なども含めて総合的に判断されます。

画像検査では超音波検査、腹部CT検査、MRI検査などが必要に応じて行われます。
これらの検査では肝臓の大きさや状態、腫瘍の有無などを確認することができ、脂肪肝や肝硬変を発症していないかも確認できます。
肝硬変の程度を図る検査方法として、肝硬度測定と呼ばれる方法が用いられる場合もあります。
簡易に行うことができる検査で患者への負担も少ない検査と言えます。また、肝臓の組織を採取して顕微鏡で確認する肝生検が行われる場合もあります。

問診によって飲酒歴やアルコールの摂取量などを確認することも診断の助けとなります。この際患者は過少に答える場合もあるため、家族や周囲の人に確認する場合もあります。

主な治療方法

アルコール性肝腺維症の治療としては禁酒によって病気の進行を阻止することが最優先となります。
高たんぱく・高ビタミンの食事療法とパンテチン、グルタチオンなどの肝庇護剤の服用が必要なこともあります。飲酒後の不快反応を起こす嫌酒薬などは必要に応じて使用されます。

基本的にアルコール性肝腺維症は肝硬変などを発症する前段階で、自覚症状も肝臓部に倦怠感を覚えるほどの程度なものです。
投薬治療する段階とは言えず、禁酒や適度な運動、睡眠など生活習慣の改善によって肝臓を健康体に戻すことが第一です。

アルコール性肝腺維症に限らずアルコール性肝障害は禁酒と食事療法が治療の基本となります。
アルコール依存症など精神的な治療が必要な場合には精神科の医師との連携も重要です。断酒を促す目的でのカウンセリングなどが行われます。

重度のアルコール肝炎に至っている場合にはステロイド剤による薬物療法や血漿交換療法による治療も検討されます。
アルコール性肝硬変は治療による回復はほぼ見込めず、肝移植による治療が検討されます。