ジフテリア ジフテリア

初診に適した診療科目

ジフテリアはどんな病気?

ジフテリアとははジフテリア菌と呼ばれる細菌の感染によって生じる上気道粘膜の疾患です。
感染力が非常に高く、咳やくしゃみなどに含まれるジフテリア菌によって感染が広がります。
のどの痛み、発熱、首のリンパ節の腫れ、倦怠感など代表的な症状で、のどの奥に厚い膜ができ気道を狭めることで息苦しさを感じる点も特徴です。

症状が進行すると心臓や腎臓、神経にも影響が現れ致死率の高い疾患としても知られています。治療を受けた場合でも100人に約10人が亡くなるというデータもあり、患者が子供や高齢の方など免疫力が低い場合にはさらにその割合が高くなるとされています。かつては死亡原因の上位を占めていたこともありました。

日本では予防接種が行われるようになったことで発症状況は激減しており、現在のところ1999年を最後に感染は報告されていません。世界的に見ても予防接種の効果は認められていますが、いまだに流行を認める地域も存在します。

主な症状

ジフテリアは潜伏期間が通常2~5日ほどあり、その後に鼻水や発熱、喉の痛み、筋力低下、唾液腺やリンパ節の腫れ、激しい嘔吐などが症状として現れます。
中でものどに形成される厚い灰色の偽膜は特徴的な症状と言えます。
偽膜はのどから下気道にまで広がって形成され、かすれ声、犬がほえるような咳、呼吸困難を引き起こします。
偽膜による気道閉塞が原因で死に至るケースもあります。また偽膜形成で起こるのどの痛みから食事の摂取量が少なくなります。

ジフテリア菌からできる毒素が血液の流れにのって心臓の筋肉に炎症を起こし、心筋炎を合併することもあります。この症状が悪化すると心臓の動きが弱くなり心不全や突然死を引き起こす可能性があります。これは発症早期や回復期に現れることが多く、ジフテリアの合併症の中でも最も重い合併症です。

さらにのどの神経や手足の神経に影響を及ぼして筋力の低下を招いたり、呼吸筋まひによって呼吸ができない状態につながることもあります。

主な原因

ジフテリアはジフテリア菌に感染することが原因で発症します。
ジフテリア菌には毒素を生み出し、体の組織を破壊する力があります。
咳やくしゃみによる飛沫感染や、鼻水やタオル、ドアノブなどを通じて感染する接触感染によって周囲の人に広がります。感染力が高く致死率も高いため、予防策としては予防接種による感染防止が最も有効とされています。心臓、腎臓、神経系に損傷を与えるのは一部の種類のジフテリア菌であり、これらは特に強力な毒素を出すのが特徴です。

口やのどの粘膜表面やその周辺で増殖して炎症を起こすものを、呼吸器ジフテリアと呼ばれます。ジフテリア菌は主に毒素を産生することで特有の症状を引き起こしますが、毒素をもっていないジフテリア菌がジフテリアの症状を引き起こすこともあります。偽膜は毒素によって生じる細胞が死んだ塊と言えます。

また軽症のジフテリアの場合、衛生状態の悪い場所で暮らす成人に発症することがあり皮膚症状のみが現れる点が特徴です。

主な検査と診断

ジフテリアの検査では咽頭や扁桃に形成される偽膜をぬぐい取って採取し、グラム染色などの検査が行われます。
グラム染色はジフテリアの検査においては代表的な簡易検査で、ぬぐいとった検体の細菌を染色し、顕微鏡で観察する方法です。
グラム染色の結果と現れる症状から時間をかけずにジフテリアを疑うことができます。確定診断のためにはジフテリア菌を分離してさらにくわしい検査が行われますが、検査結果が出るまでに数日程度の時間がかかるのが難点です。またPCR法と呼ばれる方法でジフテリア毒素に関連した遺伝子を特定する方法もあります。

問診ではジフテリアの予防接種が済んでいるかを確認します。予防接種を受けておらず、偽膜の形成など特徴的な症状があればジフテリアが疑われます。ジフテリアは治療を早期に開始する必要があり、確定診断の結果を待たずに治療を開始するケースも多いです。また、最も注意すべき心筋炎を発症していないかを確認するために心電図検査が行われることもあります。

主な治療方法

ジフテリアの治療では主に抗毒素療法や抗菌剤での治療が行われます。
抗毒素療法はジフテリア菌の毒素を緩和させる薬を筋肉や静脈に注射する方法で、ヒト以外の動物から作成されたジフテリア抗毒素と呼ばれる血清を使用する点が特徴です。
これによってアナフィラキシーショックなどの強烈なアレルギー反応を生じる可能性があります。これは人間とは異なる異物を体内に摂取するために起こりうる反応と言えます。

また、ジフテリア菌そのものを殺すため、入院によってペニシリンやエリスロマイシンなどの抗菌剤の投与も行われます。
ジフテリア菌の感染力が高いため、隔離して治療が行われます。投与は2週間程度続けられ、投与が終了してから培養検査が行われ細菌が死滅したことを確認します。
培養検査の結果が出るまでは隔離が続きます。皮膚ジフテリアの場合にも同様に抗菌剤を投与して皮膚のただれた部分も洗浄します。

特に小児に呼吸器ジフテリアの症状がみられる場合には早期に治療を開始する必要があり、集中治療室で治療が行われます。