親知らずの痛み オヤシラズノイタミ

初診に適した診療科目

親知らずの痛みはどんな病気?

親知らずの痛みは、親知らずが完全に生えず(半埋伏)に中途半端な状態が長く続くために周囲の歯や歯茎を圧迫することで生じると考えられていることが多いですが、実際には親知らずが周囲の歯肉を刺激し続けることによる歯周病が原因である場合が多いです。

親知らずはまっすぐに生えていることが少なく、多くは斜めに生えています。
そのため歯磨きがしにくく、歯周病が発症しやすいのが特徴です。親知らずの前に生えている第二大臼歯との間は特に磨きにくく、この部分に虫歯ができることも多いです。

親知らずは智歯とも呼ばれ、親知らずの痛みは智歯周囲炎によるものも多いです。智歯周囲炎は親知らずの周辺の歯茎に雑菌が繁殖し炎症を起こしている状態で、歯が痛む、歯茎が腫れる、顎全体が痛むなどが典型的な症状です。さらに虫歯や歯周病、智歯周囲炎の炎症が周囲の組織に入るこむと顎骨骨膜炎、化膿性リンパ節炎などを引き起こす場合もあります。これらを総称して歯性感染症と呼びます。

主な症状

親知らずによる痛みの具体的な症状は、その原因によっても異なります。
周辺の歯肉が腫れて痛みが出ている、隣の歯を圧迫して痛む、親知らずが生えていないにも関わらずその部位の歯肉に痛みがあるなどの場合があります。

歯茎に痛みや腫れを伴う代表的な疾患には智歯周囲炎が挙げられます。
症状が悪化すると膿の流出や咽頭いんとう、扁桃へんとうへの炎症が生じ、高熱などの全身症状につながる可能性のある疾患です。
また炎症が慢性化すると顎骨内に嚢胞を形成する場合があり、それによって開口障害を引き起こすこともあります。智歯周囲炎は数カ月から半年ぐらいの周期で再発を繰り返すことが多いです。

また、埋伏歯は顎骨内に埋伏して見えていない親知らずを指します。この場合にも隣の第2大臼歯を圧迫して痛みを生じるケースがあります。

その他には副鼻腔炎や顎関節症の痛みを親知らずの痛みとして感じるケースも多いです。副鼻腔炎では奥歯の部位に痛みを生じることがあり、顎関節症では顎関節の痛みが主な症状ですがまれに痛みが奥歯に放散することもあります。

主な原因

親知らずの痛みは親知らずに関連する病気が原因となります。中でも代表的なのが親知らず周囲の歯の虫歯や歯周病です。
親知らずは斜めに生えたり不完全に生えていることが多いため、食べかすなどが歯周ポケットに溜まりやすく、親知らずそのものや隣の第2大臼歯が虫歯になるリスクが高いです。
同様の理由で周囲の歯肉が歯周病になるリスクも高くなります。親知らず周辺の汚れに起因する歯周病は智歯周囲炎と呼ばれます。

大部分が顎骨内に埋伏している埋伏歯も痛みの原因と言えます。隣の第2大臼歯を圧迫するだけでなく、親知らずに虫歯を生じてその結果痛みを伴うことがあります。

歯根嚢胞も痛みの原因となる疾患です。歯根部にまで達した虫歯が、内部に水分を蓄えた袋状の嚢胞を形成する疾患で、嚢胞内に感染を生じた場合に痛みを引き起こします。

また、歯周病の多くは口腔ケアの不足や口腔内の乾燥が発症の要因となります。日ごろのケアや適度な水分摂取、定期健診、クリーニングなども予防のために大切です。

主な検査と診断

親知らずの痛みがある場合にはまず口腔内を直接確認することに加えて、パノラマX線写真などを用いて歯の状態を確認します。
特に智歯周囲炎の場合、歯冠周囲の骨の吸収像の有無が診断において重要なポイントです。
埋伏歯は歯の処置時のX線写真によって比較的容易に発見できますが、位置関係や状態をさらに詳しくしらべるために他のX線撮影をする場合もあります。
口腔内写真、顔面写真、オクルーザルX線写真、頭部X線写真、断層X線写真、CT、3DCTなどが必要に応じて用いられます。

親知らずは現状痛みが無い状態であっても斜めや横向きに生えている場合や完全に歯茎の中に埋まっている場合には痛みが強くなっていく危険性があるため抜歯が検討されます。
特に斜めに生えている場合は痛みを発生するリスクが高いといえます。
完全に歯茎の中に埋まっている場合、歯が露出していないため虫歯や歯周病のリスクはそれほど高くありません。しかし歯茎の中で周囲の骨や歯に影響を及ぼすことが多く、この場合は痛みがなくても抜歯が選択されます。

主な治療方法

親知らずの痛みには、原因となる疾患や症状に合わせた治療が行われます。
例えば智歯周囲炎の場合は慢性か急性であるかによっても治療法が異なります。

慢性型の場合、親知らずを覆っている歯肉の切除や抜歯が最も一般的な治療法です。
親知らずの生え方がまっすぐで、空間がしっかりと確保できる場合には歯肉切除が選択されることもありますが、ほとんどの場合は抜歯が選択されます。
親知らずの抜歯は術野が狭いため難しく、必要に応じて歯肉の切開や歯槽骨の削除、歯を分割するなどしながら慎重に行われます。
また、急性型の智歯周囲炎の場合には症状が進行すると排膿や開口障害、嚥下痛、顎下リンパ節の腫脹・圧痛・硬結をはじめ様々な症状が現れます。全身の倦怠感や発熱を伴う場合もあるため、まずは抗菌薬、鎮痛剤の投与が行われ、膿瘍が形成されている部分の切開などによって症状を和らげます。これらの処置によって急性症状が落ち着いた後に抜歯が行われることが多いです。