上腕骨顆上骨折 ジョウワンコツカジョウコッセツ

初診に適した診療科目

上腕骨顆上骨折はどんな病気?

上腕骨顆上骨折とは小児に最も多い骨折のひとつで、肘周辺の骨折の6割を占めます。
小児に起きやすい点が特徴ですが、交通外傷やスポーツによる外傷で成人にも生じることがあります。
転倒して手をついた時や鉄棒からの転落なども小児における上腕骨顆上骨折に多い原因です。

肘に激しい痛みと腫れを伴い、痛くて肘が動かせないなどの症状が現れます。
周辺の神経や血管を損傷してしまうリスクがあり、受傷後なるべく早く治療を開始する必要があります。
骨折片によって神経や血管が損傷されると、手や指にしびれが生じたり動かせなくなるなどの症状も現れます。また、治療が行われずに放置されると変形したまま骨が癒着してしまう可能性もあります。

基本的には保存療法による治療が行われます。骨折した部分が大きくずれている場合や、神経や血管を巻き込む危険性がある場合には手術が行われることもあります。骨折転位の程度からどちらの方針で治療を行うかが決定されます。

主な症状

上腕骨顆上骨折では、肘のはれ、痛み、皮下出血、骨折部の異常な動きが現れ、肘が動かせなくなるなどの症状が現れます。

また神経や血管が傷ついてしまう合併損傷がある場合、手首の脈拍が弱くなり、手や指のしびれ感、異常感覚、運動障害が起こり、色調が蒼白や暗青紫色になります。
重症な場合には血液の流れが悪くなり、指が固まって変形してしまうフォルクマン拘縮を引き起こすこともあります。手足に十分な血液が回らなくなることで前腕や手の壊死などにつながることもまれにあります。神経や血液が損傷している場合は特に、壊死など重い症状につながる危険があるため早急な手術が必要になります。

また、早期に治療が行われずに骨がずれた状態で癒着してしまうと、骨の変形が後遺症として残ることがあります。肘をまっすぐに伸ばしても内側に曲がったようになってしまう内反肘や、逆に外側に曲がったようになってしまう外反肘などが典型的です。子どもにも多い骨折のため、後遺症を残さないためにも適切な治療を早期に行うことが大切です。

主な原因

上腕骨顆上骨折はそのほとんどが外から強い力がかかり、肘が反り返ることが原因とされています。
具体的には転倒した際に、肘を伸ばした状態で手をつくと上腕骨顆上骨折を生じやすいです。
上腕骨の骨折にはいくつか種類があり、中でも上腕骨顆上骨折は上腕骨を構成する遠位部、関節包の外側で生じる骨折を指しています。

上腕骨顆上骨折は特に子どもに多い骨折と言われていますが、これは子どもの動きが活発で運動量が多いのに対し、運動能力が成人に比べ完全ではないためです。また子どもは骨も成長過程であり、骨の表面を形成している骨皮質も薄く、断面積が小さいことも大きな要因です。

上腕骨顆上骨折が起きやすいシーンとしては、子どもの場合は鉄棒や雲梯などからの落下が具体例として挙げられます。また、成人の場合には交通事故、転落、スノーボード中の転倒も多いです。高齢の場合には階段や段差でのつまづきによる転倒などの比較的衝撃が少ないシーンでも骨折に至る例があります。

主な検査と診断

上腕骨顆上骨折は主に問診やレントゲン検査によって診断が行われます。
まずは問診によって受傷したときの状況や時期を確認し、肘に腫れが出ているかなども確認していきます。
多くの場合は受傷時の状況を本人や周囲の人が把握しており、肘の痛みやアザなどから上腕骨顆上骨折が疑われます。

上腕骨顆上骨折が疑われる際に用いられる最も一般的な検査がレントゲン(エックス線)検査です。大きな骨折の場合は、この検査によって骨の損傷の程度が比較的容易に確認することができます。子どもの場合、肘関節の中でも異なる部位である上腕骨外顆骨折と見分けが難しかったり、肘内障という橈骨頭が脱臼してしまう病気と間違えられやすいです。子どもで軽症の場合はこのようにレントゲン検査のみでは判別が難しい場合がありますが、腫れの程度、痛みの持続、超音波検査などの検査結果も併せて総合的に判断されます。

その後の治療に関わるため、血管や神経の損傷がないか、骨折部のずれがどの程度かなどに注目して検査が行われます。

主な治療方法

上腕骨顆上骨折の治療には発生直後の処置も重要です。まずは安静、患部を冷やす、圧迫する、骨折部位をなるべく心臓より高く上げるようにします。
成人はもちろん、子どもは特に腫れがひどく出ることが多いため、この4点は応急処置の中でも特に重要なポイントです。

骨折している部分の骨のずれが少なく、血管や神経にも異常がない場合には手術は行われず、保存的療法が選択されます。ギプスやシーネなどの器具を用いて固定し、必要に応じて皮膚の上から骨や関節を整復徒手整復が行われます。固定後は安静を保ち、骨が癒着するまで経過を観察します。

骨のずれが大きい場合や、血管損傷があるなどの場合は手術が選択されます。骨を固定するために皮膚の上から鋼線を指す方法や、血管が損傷するなどで血液の流れが悪い場合には血行再建術などの方法があります。特に早期に手術が必要になるのは神経や血管が損傷されているケースで、重症になると前腕や手の壊死につながるケースもあります。