FD慢性胃炎 エフディーマンセイイエン

初診に適した診療科目

FD慢性胃炎はどんな病気?

FD慢性胃炎は機能性ディスペプシアとも呼ばれ、潰瘍がないにもかかわらず上腹部不快感、悪心(むかつき)、嘔吐などの消化器症状を訴えるものです。
食事をした後の胃もたれ感や早期飽満感なども症状の一部で、慢性的に続く点もこの疾患の特徴です。従来は腹部不定愁訴や慢性胃炎と呼ばれていました。

血液検査や内視鏡検査でも異常が確認されず、胃がんや胃潰瘍などはっきりした原因が特定できません。
胃の働きが悪くなることによって症状が出ているのではないか、という考えから機能性ディスペプシア(FD)と呼ばれています。
慢性胃炎は胃が炎症を起こしている場合に起こるため、機能性ディスペプシアと慢性胃炎は別の次元の病気とされています。

現在の日本では約10人に1人がかかるとされており、決して珍しい病気とは言えません。症状が起きることでごはんが食べられない、気持ちが塞いでしまうなど生活に支障をきたすケースは多く、生活の質を低下させてしまう点も問題です。
 

主な症状

FD慢性胃炎の症状としては、上腹部不快感、腹満感、悪心(むかつき)、嘔吐などですが、この他にも倦怠感、肩こり、手足の冷え、立ちくらみ、背部痛などの全身の不定愁訴を伴うことがあります。 精神状態としては、不安、心気、抑うつ、焦燥感などがあらわれます。

おおまかな分類では、食後のもたれ感や早期飽満感など普段の食事摂取に伴って起きる症状を食後愁訴症候群とし、心窩部の痛みや焼ける感じなどを心窩部痛症候群とされています。
心窩部痛症候群は食事接種の有無にかかわらず起きます。
食後愁訴症候群と心窩部症候群は療法の症状が入り混じっているケースも少なくなく、明確に線引きすることは難しいとされています。

症状が現れても検査で原因が見つからず、世間では認知度も低い疾患であるため、患者さんの気のせいであると思い込んでしまうこともあります。しかしそれによって精神的に思い悩み、症状が悪化することもあります。医師と患者さんが信頼しあって原因と特定することが大切です。

主な原因

FD慢性胃炎の代表的な原因は胃の運動機能障害をはじめ、知覚過敏、ストレスなどが挙げられますがそれらの単体が原因となることもあればいくつかが組み合わさっていることもあります。

胃の運動機能障害はFDの原因の中でも多いとされています。
胃は食べ物を貯留するため膨らむ適応弛緩、十二指腸へ食べ物を送り出す胃排出機能などの役割を担っています。胃の運動機能がうまく働かないと十分な食べ物が貯められない、胃のぜん動ができない状態になり胃もたれなどを引き起こします。さらに胃の知覚過敏が起こることでも、痛みや早期飽満感、胃もたれなどが起こりやすくなります。

睡眠不足や過労など身体的な負担、ストレスなどの精神的な負担も症状を引き起こす原因となります。不安やうつ、生育期の虐待歴とも関連することがあり、それらを背景に胃や腸の運動に変化が起こるとされています。遺伝的な要因も挙げられており、生まれつきFDになりやすいという人もいます。

主な検査と診断

FD慢性胃炎の検査には問診、胃カメラ検査などの内視鏡検査、必要に応じて胃排出機能検査やドリンクテストが行われます。

問診では症状についてやその頻度、期間、症状が起きる状況などを丁寧に確認していきます。
身体的、精神的なストレスがないかも併せて確認します。FDははっきりした原因が特定できないときに診断される疾患のため、症状を起こしうる胃がんや胃潰瘍などの病気がないかを調べるために内視鏡検査をはじめ血液検査、エコー検査、CT検査などが行われます。

治療を行う過程でさらに詳しく検査を行う場合には、胃排出機能検査、ドリンクテストによって病態を調べます。胃排出機能検査では胃から十二指腸へ食べ物を送り出す胃の働きに異常がないかを調べることができ、ドリンクテストでは胃の容量負荷耐性という胃の受け容れる働きについて詳しく調べることができます。ドリンクテストでは胃が受け容れられる容量を知ることで食事指導に活かすこともできるのがメリットです。

主な治療方法

D慢性胃炎の治療は薬物療法と生活指導によるものが一般的です。

薬物療法においては、胃酸の分泌を抑える酸分泌抑制薬や胃の動きを促す消化管運動機能改善薬を症状に応じて選択します。食後愁訴症候群と心窩部症候群の症状別に薬を使い分けるのがセオリーですが、その二つが入り混じった複雑な症状では明確に区別が難しいため、それぞれの患者さんに合わせて複数の薬を併用する場合もあります。また近年では六君子湯という漢方薬が用いられることもあり、特に胃もたれなどの症状に使用されることが多いです。

ストレスや不安、うつなど心理的な負担に対しては抗不安薬や抗うつ薬などが必要に応じて選択されます。薬物療法に関し、効果には個人差があります。薬の効果が現れるのは服用した約半数というデータも報告されています。

生活習慣や食習慣を改善することによって症状が改善するケースも少なくありません。治療にあたっては医師と患者の信頼関係も重要です。