成人期扁平足 セイジンキヘンペイソク

初診に適した診療科目

成人期扁平足はどんな病気?

成人期扁平足とは、成人期に発症する偏平足を指します。
扁平足とは、足の裏のアーチ構造にゆがみを生じ、土踏まずがなくなった状態を足です。
足のアーチには足への衝撃を吸収したりアキレス腱に加わる力をつま先に効率よく伝える役割を果たしています。
幼児のころから足裏が平べったく偏平足に近い状態にあり、大人になって発症した扁平足では、痛みなどの症状はあまり現れません。
一方中年以降に発症する扁平足は、内側のくるぶしの下に腫れや痛みの症状が現れることが多いです。
初期には足の扁平化は軽度ですが、徐々に変形が進行します。つま先立ちがしにくくなる、足が硬くなるなどの症状が現れるようになり、歩行が障害されるケースもあります。
歩行障害や姿勢の悪化は頭痛や腰痛にも繋がるため、結果として全身に影響を及ぼします。

成人期偏平足は加齢による靭帯や腱の変形、長時間の立位や歩行で負担がかかること無理な運動なども原因となって発症に至ります。

主な症状

成人期扁平足を発症すると、まずつま先立ちがしにくくなる症状が現れます。
初期には足裏の扁平化はそれほど目立ちません。また足関節の靭帯、腱の周囲に腫れや痛みが症状として現れます。
特に痛みが生じやすいのが内側のくるぶしの後方付近です。腫れや痛みは足の裏や外側に現れる場合もあり、損傷を受けている場所によっても異なります。
この痛みや腫れの症状は、内くるぶしの後方を通る後脛骨筋と呼ばれる部分に関係しています。
成人期扁平足を発症すると足関節が外反された状態になるため、後脛骨筋に負担や摩擦が生じることで痛みや腫れの症状を引き起こすものです。

さらに症状が進行すると足関節の柔軟性が無くなり、躓きやすくなるなど歩行障害などを引き起こします。
またつま先立ちや歩行によって扁平化は進行し、より目立つようになります。
また、姿勢が悪くなることで頭痛、腰痛なども見られます。また扁平足は親指の骨が扇状に開くため外反母趾を生じるケースも多く見られます。

主な原因

成人期扁平足は、主に内くるぶしの下を走る後脛骨筋腱の変性や断裂が原因で発症します。
足にはアーチ構造があり、効率よく体重を支える役割を果たしています。
内側のくるぶしの下に、アーチをつり上げる働きをする後脛骨筋の腱が通っています。
変性や断裂の原因としては加齢による腱のゆるみをはじめ、急激な体重増加、長時間の立位や歩行、無理な運動、足に合わない靴やヒールの着用、足首周辺の外傷や手術などが挙げられます。
後脛骨筋腱に変性や断裂が生じると筋力が低下して、足の裏のアーチが維持できない状態になります。
このように加齢や体重負荷によって断裂したものを後脛骨筋腱機能不全と呼びます。
これは成人期扁平足の最も多い原因とされています。発症は中高年の女性、太り過ぎの人に多い傾向があります。

また後脛骨筋腱は内くるぶしの下で方向を変えている点が特徴です。
この構造によって負荷を受けやすい上に血流障害がおきやすいと言えます。このことも腱が変性や断裂を起こすリスクを高めていると考えられます。

主な検査と診断

成人期扁平足は問診によって痛む場所や程度を確認したり、外観上の変形や腫れを診察によって確認することで比較的容易に診断することが可能です。
問診、視診が重要な診断材料となります。足が扁平化しアーチが無くなり、かかとが外を向くようになることで後ろから複数の足指が見えるようになる点も特徴の一つです。
肥満傾向にある人の場合、足裏の脂肪組織も厚くなるため足のアーチが正常でも扁平足のように見えることがあります。

骨の状態を確認し、重症度を判断する目的でより詳しいX線検査などの画像検査が行われます。
特に重症度は、立位で体重をかけた時の足のX線像から評価することができます。
成人期扁平足は立位時に土踏まずが形成さされていないことが診断のポイントとなるため、この時の足関節の角度が重要となります。
また、MRI検査では後脛骨筋腱断裂などを確認することもできます。腱の損傷はX線検査では確認できない部分です。
これらの検査の他にも足型を取って接している部分と接していない部分から土踏まずの形状を評価する方法もあります。

主な治療方法

成人期扁平足の治療は、痛みや腫れの症状に対しては鎮痛剤や湿布などを用いる保存的療法が中心となります。
安静、冷却、圧迫、挙上の4つが重要とされています。足のアーチ機能を補助する役割を果たすアーチサポート付きの足底板などの装具を使用することもあります。
足のアーチを人工的に引き上げることで、痛みの症状の改善が期待できます。

腫れや痛みの症状が治まったら足のアーチを鍛えるリハビリテーションや減量指導なども重要です。
アーチを支える足指の筋肉は、裸足で生活したり、足指を積極的に使うことでも鍛えられます。
ストッレッチ体操によって硬くなったアキレス腱をほぐす方法も予防に有効です。
また、適正体重を保つことも重要と言えます。症状が軽い段階で適切な治療やトレーニングを行うことは、重症化を防ぐためにも重要です。
これらの治療で改善がみられないような重症例や先天的な原因で扁平足を発症している場合には、手術が必要になることもあります。
腱移行術や関節手術などの方法が選択肢となります。