臼蓋形成不全 キュウガイケイセイフゼン

初診に適した診療科目

臼蓋形成不全はどんな病気?

臼蓋形成不全とは、骨盤にある臼蓋と呼ばれる部分が不完全な形状である骨盤の形態異常の一種です。
臼蓋は骨盤のお椀のような形をしており、本来大腿骨がすっぽりとはまり込むようにできていますが、臼蓋形成不全の場合はかぶりが浅いため大腿骨がはまり込むことができず、不安定な状態になるのが特徴です。

小児期の臼蓋形成不全は、基本的には乳児期に超音波検査やX線検査で診断される画像上の診断名であり、問題となるような症状は現れていない場合が多いです。
ただ発育性股関節形成不全のように、大腿のしわが非対称であったり、脚の開きが悪いなどの特徴があります。

臼蓋形成不全は変形性股関節症の発症に至る場合があり、それによって股関節の痛みや疲れなどの症状が現れることもあります。
変形性股関節症は臼蓋形成不全である人が中高年になって発症する例が最も多いです。
臼蓋形成不全は特に日本人には多く見られ、股関節痛の患者の約8割が臼蓋形成不全であるとす報告もあります。

主な症状

臼蓋形成不全は、基本的には先天性のもので、小児期においては特に現れる症状は無い場合が多いです。
そのため成人になる前に自覚的に気が付くというケースは極めてまれと言えます。
成人以降になると股の痛みや、長時間立ったままでいると股関節が痛むなどの症状が現れるようになります。
股関節の痛みを生じ、医療機関を受診して発見に至るケースが多いとされています。
また成人になっても特に症状が現れなかったために発見に至ることがなく、妊娠など股関節に負担がかかる場面で発見され診断に至るケースも珍しくありません。

成人になってから変形性股関節症に移行することも多いです。
これによって現れる症状は重度の場合、歩行困難や長時間立っていられないなど日常生活に大きく影響を及ぼします。
股関節への障害が積み重なることによって徐々に進行するケースが多いです。

小さな頃から姿勢や歩き方に対して注意を受けていた人や、内股ぎみの人、座り方に特徴がある人などは臼蓋形成不全である可能性が高いとされています。

主な原因

臼蓋形成不全は、基本的には先天的な要因による骨盤の形態異常ですが、後天的に生じるケースもあります。
胎児期にいわゆる逆子であった場合や、平均よりも大きな赤ちゃんであった場合などにも発症が多い傾向があります。
出生後の生活習慣など、後天的な原因としてはスリングやおくるみで股を閉じる姿勢を長時間続けたりした場合に臼蓋形成不全を生じることがあるとされています。
また臼蓋形成不全はアジア人に発症が多く、中でも日本人に多くみられます。日本人では成人男性の0~2%、女性の2~7%が股関節形成不全といわれています。

日本人独自の生活スタイルなども影響を与えていると考えられています。
また出産、育児、仕事、家事、介護、スポーツなどを通じて股関節への負担が蓄積し、変形性股関節症へ移行するリスクがあります。
乳児期の臼蓋形成不全は基本的に自然改善します。

また乳児の臼蓋形成不全はかつて股関節の骨盤側に問題があると考えられていましたが、現在は子宮内の肢位などの影響によるものであると考えられています。

主な検査と診断

臼蓋形成不全の診断は、乳児、成人に関わらず最終的にはX線検査の結果から判定されます。
現れる症状や身体所見も診断に影響します。X線検査では主に臼蓋の発育状況、大腿骨のはまり具合などを確認することで重症度の評価も可能です。
股関節に痛みなどの症状が現れている場合には、骨の間の隙間が狭くなっていて、軟骨が減少している様子が確認できることが多いです。
基準となるいくつかの判定の目安や基準があるため、臼蓋形成不全の診断は比較的容易です。

それが後に変形性股関節症として発症してくるかを判断できないことが問題とされています。
より詳しく臼蓋の状態を把握するために超音波検査やCT検査、MRI検査などの画像診断が行われることも多いです。

臼蓋形成不全が変形性股関節症に以降する場合、30~40代頃に軽い痛みなどを生じるケースが多いです。
進行して軟骨がすり減ると股関節が常に痛くなり、末期には安静時にも痛みを生じるようになります。
脚・腰に違和感を覚えたら早期に整形外科を受診することも重要と言えます。

主な治療方法

臼蓋形成不全は、患者の年齢や現れている症状などから適した治療が行われます。
基本的に乳児期、小児期の場合は積極的な治療は行われません。
治療方法としてはリーメンビューゲルと呼ばれるひも型の装具を装着することもあります。
成人の臼蓋形成不全は変形性股関節症の前関節症にあたると判断し、軽症の段階から手術的な治療を行う場合もあります。

病状の進行をおさえる効果も期待できます。
手術方法としては骨切り術や人工股関節置換術が挙げられます。手術後には適切な時期にリハビリテーションを開始することも重要です。
変形性股関節症への進行を予防する手段としては股関節周囲筋の筋力トレーニングが効果的です。
臼蓋形成不全では股関節の安定性が低下した状態にあるため、筋力を強化することでその部分を補います。
程度の強い臼蓋形成不全の場合は、早期に変形性股関節症へ移行する傾向があるため臼蓋を大きくする手術などが行われます。
臼蓋形成不全は早期発見、進行予防が重要と言えます。