骨盤骨折 コツバンコッセツ

初診に適した診療科目

骨盤骨折はどんな病気?

骨盤骨折とは骨盤部に外部から強い力が加わることなどによって骨が折れた状態を指します。
骨盤は主に腸骨、恥骨、坐骨の3つの骨で構成されています。
骨盤骨には太ももの骨である大腿骨がおさまるくぼみがあり、これらによって股関節が形成されています。
骨盤骨折では1つもしくは複数の骨が骨折するケースが見られます。
事故などの強い外力によって生じる場合もあれば、骨の小片が剥離した場合や、骨粗しょう症の患者の場合にはわずかな力でも骨折を生じる可能性があります。

ほとんどの場合、骨盤骨折を生じると座れない、自力で体を動かせないほどの激痛を伴います。
また、大量出血を伴う場合にはショック状態を引き起こすことがあり、命に関わる場合もあります。
これは骨盤の内側には重要な臓器や血管が存在しているためで、ショック状態の場合、他の臓器も損傷を負っている可能性が高いです。

治療は重症度に応じて行われ、血管内治療、輸血、手術療法などが選択されます。

主な症状

骨盤骨折を生じると、主に鼠径部に非常に強い痛みが現れます。
歩いたりして骨盤を動かすと痛みはさらに強くなりますが、体位を変えることで症状が多少軽減する場合もあります。
そのため患者は痛みを抑えるために股関節や膝を曲げた体勢をとろうとします。
また骨盤骨折に伴って骨盤内の血管や臓器の損傷が起こるケースも多くみられ、その場合には出血斑、血尿、血便、低血圧、意識障害、排尿困難、尿失禁、性器出血などの症状も現れます。
骨の位置がずれることによって左右の脚の長さが変わる、患部が腫れてあざができるなども症状の一つです。
一方、軽度の骨折の場合痛みの症状もそこまで強くないケースが多いです。
重度の出血を伴う場合や他の臓器が損傷している場合、ショックを起こして死に至る可能性もあります。
また股関節のくぼみに生じた損傷は、生涯を通じて障害を残す可能性があるため特に注意が必要です。

外傷やケガをしていない場合に生じる骨盤骨折の場合、腰痛や坐骨神経痛、大腿骨近位部骨折と類似した症状が現れることが多いです。

主な原因

骨盤骨折の多くは交通事故、墜落外傷等の大きな外力が原因で起こります。
特殊な場合としては、若年者のスポーツ外傷として筋肉の付着部がはがれる剥離骨折や、高齢者の外傷として転倒などの比較的軽微な外力によっておこる骨盤骨折もあります。
高齢者の場合、骨粗しょう症を併発しているケースが多く、これによって骨折がしやすい状態にあると言えます。
また剥離骨折は、筋肉が急に収縮することで坐骨から骨の小片を引き剥がすために起こります。

骨盤は体幹を支える重要な役割を担っており、内部には消化管、泌尿器系臓器、生殖系臓器、動静脈、神経などがあります。
骨盤を構成する骨の一か所で骨折が生じているものを安定型骨盤骨折と呼び、複数箇所で骨の骨折が生じているものを不安定型骨盤骨折と呼びます。
安定型骨盤骨折は転倒などの比較的軽い外傷で生じることが多く、不安定型骨盤骨折は落下や交通事故などの強い外力によって生じることが多く、骨折部がずれやすい点も特徴と言えます。

主な検査と診断

骨盤骨折の診断にはX線検査、CT検査などが行われます。
大きな事故による骨盤骨折の場合、救急外来に搬送されるケースも多いです。
大きなけがや鼠径部の痛みから骨盤骨折が疑われる場合にはまずX線検査が行われ、ほとんどの場合その結果によって診断が可能です。
折れた骨片をすべて特定することを目的としてCT検査が追加で行われます。
この際、他の損傷部位が発見されることもあります。

骨盤骨折の種類は大きく分けて、寛骨臼骨折と骨盤輪骨折の2種類があります。
股関節は、骨盤側の寛骨臼と大腿骨側の大腿骨頭の2つの関節面が接してできているもので、寛骨臼骨折とは股関節の関節内骨折です。
骨盤輪骨折は寛骨臼骨折を除いた骨盤骨折です。いずれも、X線検査で診断します。
骨盤の形状は非常に複雑なため、CT検査により骨折の位置を詳しく調べる事で治療方針の決定にも役立ちます。
また、血管損傷や膀胱損傷などの合併損傷を調べる場合には、造影CTが用いられます。

主な治療方法

骨盤骨折の中でも大量出血を伴う場合は、緊急で止血処置が行われます。
骨盤周囲を一定の圧力で圧迫する器具などを用いて、骨折部を安定化させます。さらに血管造影検査によって損傷動脈を見つけ出して閉塞させる処置を行います。
止血処置が適切に行われれば、ショック状態からの離脱が期待でき、症状が安定すれば骨折の治療を開始できます。
下肢を牽引する事で骨折部のずれを減らすことができる場合は持続的に牽引します。

寛骨臼骨折はできる限り正しい整復位置に戻す事が重要です。
骨折のずれを残したまま保存的に治療した場合、骨折は癒合しても変形性関節症が進行するため、将来人工関節置換術が必要になる可能性が高くなります。
また手術は大量出血等の危険を伴うため、手術を行うかどうかは慎重に検討する必要があります。
骨盤輪骨折は、骨折の不安定性が強い場合に手術が検討されます。スクリュー、プレート、脊椎固定用のインプラント等を使用した方法が選択されます。
保存的治療と比べ、早期に車椅子や歩行練習が可能になる点がメリットと言えます。