カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症

初診に適した診療科目

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症はどんな病気?

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症とは、イヌやネコなどの口腔内に常在してるカプノサイトファーガ・カニモルサスという細菌が原因で、犬や猫に咬まれたり、ひっかかれたりすることで感染・発症する感染症の一種です。
動物による咬傷事故の件数に対し、発症件数はかなり少ないことから発症に至るケースは非常にまれな感染症と言えます。
ヒトからヒトへの感染は現在のところ確認されていません。日本における患者の年齢は、40歳代~90歳代と中高年齢に発症が多い傾向があります。

ほとんどの場合症状は現れませんが、発症に至った場合には発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などが見られます。
免疫力が低下している人が発症すると重篤な症状を引き起こす場合があり、敗血症、髄膜炎から播種性血管内凝固症候群、ショック、多臓器不全に至り、死に至るケースもあります。
糖尿病、肝硬変、自己免疫疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患がある人は症状が悪化しやすいため特に注意が必要です。

 

 

主な症状

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症は、犬や猫に噛まれたりひっかかれるなどによって感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は1~8日とされています。
発症すると現れる症状としては発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などが挙げられます。噛まれたり引っかかれた部位が腫れるなど明瞭な病変は認められません。
重症例では、敗血症や髄膜炎を起こし、播種性血管内凝固症候群(DIC)や敗血性ショック、多臓器不全に進行します。
特に敗血症を発症した人の約30%、髄膜炎を発症した人の約5%で死に至る例が確認されています。
ただほとんどの場合は無症状で、感染していても症状が現れないケースが多くを占めます。
症状が現れたり、さらに重篤な症状へ進行するケースはごく稀です。

カプノサイトファーガ・カニモルサスは犬や猫の口腔内に常在しており、カプノサイトファーガ・カニスやカプノサイトファーガ・サイノデグミなども含めるとほぼすべての犬や猫が菌を持っていると考えられます。

主な原因

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症はカプノサイトファーガ・カニモルサスと呼ばれる細菌に感染することが原因で発症します。
基本的には犬や猫による咬傷・掻傷から感染しますが、まれに傷口をなめられたことで感染するケースも存在します。
カプノサイトファーガ・カニモルサスは、ほとんどの犬や猫が口腔内に保菌しているため、ペットとして飼育している犬や猫からの感染も多く報告されています。
また唾液の中にも細菌は含まれており、特にペットからの感染では食器を共有したり、キスをするなどによって体内に唾液が入ることで感染するケースも見られます。
この細菌は常在菌であるため、ノミやダニのように駆除することはできません。
猫や犬にとっては常に存在する菌であるため症状なども見られません。

健康な人でも、基礎疾患を持っている人と感染の件数にほとんど差はありませんが、重篤な症状に発展するリスクは基礎疾患を持っている人の方が高いと言えます。

主な検査と診断

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症の診断には血液検査や脳脊髄液検査、傷口の滲出液の検査などが行われます。
これらのサンプルを採取し、培養して菌を同定するものです。
また、培養したサンプルからPCR法によって遺伝子を検出する方法も一般的です。何らかの症状が現れて医療機関を受診した段階では、症状はかなり進行しているケースが多いです。
敗血症を発症し、急激に症状が悪化するケースも多く見られます。症状がらわれた場合には早期に判断して治療を開始することが重要とされているため、検査の結果を待たずに患者の臨床症状から判断して治療を開始する場合も多いです。血液培養では通常陽性を確認するまでに数日を要します。

軽症の場合は、現れる症状は風邪とよく似た症状であり創部の腫脹なども見られないため、カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症を積極的に疑うことは難しいとされています。
カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症と類似した症状が現れる疾患としては、同様に犬や猫から感染するパスツレラ症、猫ひっかき病などが挙げられます。

主な治療方法

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症に対しては、早期に抗菌薬等による治療を開始することが重要とされています。
ペニシリン系、テトラサイクリン系、第3世代セフェム系抗菌薬などが一般的によく使用されます。
ペニシリン系の抗菌薬を使用する際はβラクタマーゼ阻害剤と併せて用いることが多いです。
これはペニシリン系抗菌薬にはβラクタマーゼを産生する働きがあるためです。

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症に対しては、予防のための対策も重要です。
日ごろから動物との過度なふれあいを避け、触れあった後は手洗いを徹底することも予防に効果的です。
これはその他の一般的な動物由来感染症を予防する意味でも重要です。
犬や猫に咬まれることによって感染する細菌としてはパスツレラ菌、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などが挙げられ、破傷風や狂犬病などを発症する恐れもあります。
特に慢性疾患、免疫異常疾患、悪性腫瘍などの基礎疾患がある人や、高齢者においては症状が悪化するリスクが高いため特に注意が必要です。