日本紅斑熱

初診に適した診療科目

日本紅斑熱はどんな病気?

日本紅斑熱とは、紅斑熱群リケッチアの一種であるリケッチア・ジャポニカを起因病原体とする細菌感染症の一種です。
野山に入り、病原体をもつマダニに噛まれることによって感染すします。発症すると発熱、発疹、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。
潜伏期は2~8日とされています。全国で毎年200件前後の発症例が確認されており、特に9月、10月に感染が多いとされていますが全国的にマダニの活動が活発になる春から秋の長い期間にわたって注意が必要です。
マダニは日本各地に広く生息しています。キチマダニ、フタトゲチマダニ、ヤマアラシチマダニなど野山等に生息する様々な種類のマダニが日本紅斑熱を媒介しています。
媒介ダニは幼虫、若虫、成虫に限らず哺乳動物を噛んで吸血する特徴があります。人だけでなく野生のシカ、イノシシなどにも感染が見られます。
人から人への感染は確認されていません。

治療には主に抗菌薬が用いられますが、マダニに刺されないよう予防策を取ることも重要です。

主な症状

日本紅斑熱は、リケッチア・ジャポニカを運ぶマダニに噛まれてから潜伏期である2~8日を経て症状が現れるケースが多いです。
39度以上の熱、発疹、刺し口などが代表的な症状とされています。
マダニに刺されたことを自覚していない患者も多く、刺し口に気づいていないケースもよく見られます。
倦怠感、頭痛、全身痛などの症状が現れるケースもあります。
日本紅斑熱はツツガムシ病と呼ばれる感染症と非常によく似ており、判別が難しい面がありますが、潜伏期間でみると日本紅斑熱の方がやや短い傾向があります。
また日本紅斑熱を発症すると、播種性血管内凝固症候群と呼ばれる疾患を引き起こしやすいことでも知られています。
これは全身の臓器に血栓を生じやすくなったり出血を起こしやすくなるもので、結果として臓器障害を引き起こしたり重篤な場合には死に至ることもあります。
日本紅斑熱の発症直後に合併して発症する急性型と呼ばれるケースが多いとされています。

主な原因

日本紅斑熱はリケッチア・ジャポニカと呼ばれる細菌に感染することが原因で発症します。
名称の通り日本特有の感染症とされており、主に太平洋側の温暖な地域で発症が多く見られる傾向があります。
リケッチアの一種である細菌は、リケッチア・ジャポニカに限らず人などの細胞に感染することで増殖できるという特徴を持っています。
ダニやノミなどの昆虫に寄生しているケースが多く、中でも日本紅斑熱に感染する場合はマダニを媒介としています。
日本紅斑熱と比較されることの多い疾患として挙げられるのがツツガムシ病です。
ツツガムシ病はダニの一種であるツツガムシに噛まれることで発症する感染症で、刺し口と発熱、発疹が主要な三徴候である点が日本紅斑熱と共通している点と言えます。

野山等に生息しているヤマアラシチマダニ、キチマダニ、フタトゲチマダニなどが細菌を媒介するため、主に野山に入った際にマダニに噛まれて感染するケースが多いです。
天候などの影響も受けますが春〜秋にかけての感染が多く見られます。

主な検査と診断

日本紅斑熱は、主に血液検査の結果から医師によって診断がくだされます。
感染症法では四類感染症に位置づけられるため、日本紅斑熱が疑われる場合には地方衛生研究所や国立感染症研究所などで検査が行われます。
基本的に現れる症状は非特異的であるため、マダニの刺し口を探すことも重要です。腋窩、膝窩、臍、陰部、頭部、腕時計や下着で隠れている部分は見つけにくい場合があります。

血液検査ではIgG抗体、IgM抗体などのリケッチア・ジャポニカに対する抗体を確認します。遺伝子を検出することを目的にPCR法と呼ばれる検査方法を採用することもあります。
症状が進行すると播種性血管内凝固症候群を発症する場合があるため、各種臓器のマーカーを行ったり、血液の固まりやすさなども同時に確認します。
CRPの上昇、AST、ALTなどの肝酵素の上昇、血小板の減少などが特徴的な検査所見と言えます。

またツツガムシ病との判別には、発疹が四肢末端部に比較的強く出現する点や刺し口の中心のかさぶたが小さい点などの特徴を助けに判断します。
容易に区別できないことも多いです。

主な治療方法

日本紅斑熱は早期に疑い、適切な抗生物質を投与するなどの治療を行うことが重要です。
使用される抗生物質にはテトラサイクリンやニューキノロン系が挙げられます。
ツツガムシ病と鑑別が困難なケースもありますが、ツツガムシ病の治療で用いられるテトラサイクリンは日本紅斑熱に対しても有効とされています。
リケッチア・ジャポニカは一般的に使用されることが多いペニシリン系やセフェム系の抗生物質では効果がみられない点も特徴です。

日本紅斑熱に対するワクチンは存在せず、予防のための対策が重要です。
野山などは感染のリスクが高いことを理解し、農作業や森林作業などを目的に野山へ入る際には長袖、長ズボンの着用、ダニ虫除け剤の使用、作業後は早めに入浴するなどの対策が重要です。
マダニに対する虫除け剤としてはディート、イカリジンと呼ばれる成分が含まれたものが有効とされています。
万が一マダニに噛まれた際には発症を防ぐために速やかに除去する必要があります。
その際、潰したり頭部を残さないよう注意が必要です。