気分変調性障害 キブンヘンチョウセイショウガイ

初診に適した診療科目

気分変調性障害はどんな病気?

気分変調性障害とは持続性抑うつ障害とも呼ばれ、比較的軽度な慢性的なうつ状態が数年間続いている状態を指します。
うつ病と比較すると、比較的症状が軽いことと持続する期間が長いという点に違いがあります。
成人期早期に発症が見られ、特に25歳までに発症するケースが多い傾向があります。
症状としては気分の落ち込み、仕事に対してのやるきが起きない、などが代表的です。
その他にも不眠、自信喪失、集中困難、引きこもり、会話量の減少 なども挙げられます。
うつ病や不安障害などと合併しているケースも多く見られます。気分変調性障害は生涯有病率が約3~4%と決して珍しい疾患ではなく、治療が10年以上の長期に渡るケースが全体の約4割を占めます。男女比で見ると、女性は男性の約2倍発症しやすいとされています。

治療法としては薬物療法、精神療法などによって症状の安定を目指します。
再発も多い疾患であるため、環境を整えて負担やストレスを減らすことも重要です。

主な症状

気分変調性障害を発症すると、罪悪感、劣等感を強く持ち続けたり、焦り、不安感、不眠、過眠、抑うつ気分、食欲減退、イライラ、意欲の低下、集中力の低下、自尊心の低下などの症状が現れます。
基本的にはうつ病の診断基準を満たすほど程度が重くなく、慢性的な症状が2年以上継続します。
うつ状態で気力が低下した状態であってもさらなる努力を積み重ねようとする傾向があります。些細な失敗から絶望感にさいなまれたり、自分を肯定できない悪循環に陥るのが特徴です。また、自己主張や怒りを表現できなくなるというのも気分変調性障害の症状の一つと言えます。
子供や青年が気分変調性障害を発症した場合には、怒りっぽい気分が1年以上続くケースもあるとされています。

症状が長期に渡って継続するため、日常生活への影響が大きくなります。
対人関係、健康状態、社会機能、職業機能にも悪影響を及ぼします。
短期間に強い症状が現れるうつ病と比較すると軽く捉えられがちな側面がありますが、実生活への影響に関しては気分変調性障害の方が大きい面もあります。

主な原因

気分変調性障害は遺伝的な要因や性格、幼児期の過酷な体験、ストレスなどとも関連して発症すると考えられています。
複数の要因が重なることで発症するとされていますが、はっきりとした原因は現在のところ明らかにされていません。
不安が強い、ストレスに敏感であるなど本人の気質的な要因や、環境要因、遺伝要因が挙げられます。症状が長期にわたって漫然と続くため、患者自身がそういう性格だと認識しているケースも多いです。
症状が21歳以前に現れている場合を早発性、それ以降に現れた場合を晩発性と分類します。
最も発症が多い時期は思春期前後とされており、明確なきっかけなどもなく発症しているケースが多いです。
またその他の不安症やパーソナリティ障害と同時に発症しているケースも多く見られます。

気分変調性障害はうつ病レベルまで症状が強まったり、元のレベルに戻ったりを繰り返します。
短期間で回復するケースはうつ病と比較しても少なく、多くは治療期間も長期に渡ります。

主な検査と診断

気分変調性障害は特別な検査は行われず、定められた基準を元に医師による判断で診断が行われます。
診断には多くの場合WHOの策定したICD-10にある診断基準が用いられます。公的サービスを受ける際にもICD-10における診断名が基準とされることがほとんどです。
具体的な診断基準としては、2年以上続く慢性的な気分の落ち込み、数日から数週間程度の回復期間の存在、比較的軽症であるなど基本とし、それに加えて不眠や集中困難など細かく挙げられた症状を3項目以上満たす場合に診断されます。
また、医療機関で診断される場合にはアメリカ精神医学会が示した診断基準であるDSM-5が用いられる場合もあります。
DSM-5では持続性抑うつ障害という名称が使用されます。

気分変調性障害にはうつ病と重複する症状や傾向も多くありますが、症状の程度と持続する期間が大きな違いと言えます。
うつ病は症状が2週間以上続くことで診断され、気分変調性障害は症状が2年以上続くことで診断されます。
うつ病と診断された後に、症状や経過を見て気分変調性障害と診断名が変更されるケースもあります。

主な治療方法

気分変調性障害の治療には薬物療法や精神療法が用いられます。
発症の原因や程度、現れる症状はさまざまで、画一的な治療法はありません。
精神科や心療内科などの専門機関を受診し、その人にあった治療法で治療が行われることが最も重要です。

薬物療法では抗うつ薬、抗不安薬などが主に用いられます。
眠れない、食べられないといった生きていくための機能が低下している場合に薬物を用いた治療が検討されます。精神療法としては認知行動療法などがよく行われ、これはものの捉え方など思考パターンを見直し、ネガティブな思考を良い方向に修正していくものです。
性格の問題ではなく病気であるとまずは理解することが治療の一歩となります。
また、対人関係療法は対人関係が症状に深く関連している場合に行われる方法で、身近にいる重要な人との関係に焦点を当て、態度やコミュニケーションを見直すことでストレスの解消を図る方法です。

気分変調性障害の治療においては、症状を生活をする上で支障がでない程度に安定させることが第一目標となります。