加齢黄斑変性 カレイオウハンヘンセイ

初診に適した診療科目

加齢黄斑変性はどんな病気?

網膜は眼球の奥にあって光を感じ取る膜です。網膜の中心、直径3mm程度の部分を黄斑といい、視機能に重要な部分です。加齢黄斑変性は、加齢に伴い黄斑が傷む病気です。萎縮型と滲出型に分けられますが、おもに滲出型についてお話しします。
加齢により黄斑に老廃物がたまったりして、網膜の中や後ろに悪い血管(新生血管)が形成されます。新生血管からは出血や漏れが生じるので、網膜がむくんだり、その構造が障害されることで症状が出ます。早期発見すれば新生血管からの漏れを抑え、症状の進行をなるべく抑える治療もあります。

主な症状

初期症状としては、視界の中心がかすんだり(視力低下)、暗く見えたり(暗点)、歪んで見える(歪視、変視)、色が分かりにくい(色覚異常)などです。諸外国では中途失明原因の上位に入っています。
片方の視力が低下すると、遠近感が分かりにくい、物が立体的に見えないなどの症状が出ます。加齢黄斑変性は気づかないうちに進行することも多く、普段両目で生活していると、見える方の目が異常のある目を補ってしまい、異常に気付きにくいので、時々健康診断などで片目づつの視力を測ることが大切です。
本を読んでいると、見ようとする文字だけ見えづらい、文字が欠ける、表などの格子模様がゆがむなどの症状があれば早めの眼科受診がすすめられます。

主な原因

加齢黄斑変性は黄斑部の老化により、処理しきれない網膜の老廃物による刺激が炎症を引き起こすことが原因と考えられています。炎症により網膜の中や後ろに新生血管が形成されることにより発症します。
喫煙は発症率を数倍は高めてしまいます。
また、食生活の欧米化や、紫外線の影響も考えられます。なお、高血圧、遺伝的要素なども要因となるようです。

主な検査と診断

加齢黄斑変性の検査方法には、いくつかあります。
自覚的な検査としては、視力低下が起こるため、矯正下での視力検査をします。また、等間隔の格子模様を見るアムスラー検査で、格子がどのくらい歪んで見えるか調べることもあります。

他覚的な検査としては、検眼鏡を使った眼底検査や眼底写真撮影が基本となりますが、網膜の断面を調べる光干渉断層計(OCT)、血管の状態を調べる造影検査(FA, IA)も重要な検査です。網膜の障害の場所や程度、網膜のむくみの程度や深さ、新生血管の勢いを調べます。最近は造影剤を使わずに網膜血管の状態を調べることのできる、OCTを応用したOCTAという検査も行われるようになりました。

これらの検査で加齢黄斑変性のタイプを調べて治療に役立てます。
早期発見にも有用性が期待される眼底自発蛍光検査(FAF)が行われることもあります。
各種申請に必要な場合は視野検査を行うこともあります。

主な治療方法

加齢黄斑変性の治療法には複数あり、抗VEGF療法、光線力学的療法、レーザー光凝固術があります。
そのなかでも最も多く行われている治療は、抗VEGF療法です。加齢黄斑変性では血管内皮増殖因子(VEGF)が大きな役割を果たしています。正常な体の中にも存在するこの因子は、加齢黄斑変性では新生血管を成長させ、そこからの漏れを促進させるので、この因子の働きを抗VEGF薬が抑えます。実際には目を洗浄して麻酔をし、抗VEGF薬を黒目のわきから目の中に注射(硝子体注射)します。心筋梗塞や脳梗塞になったことがある方には慎重に使用する必要があります。

最初の導入で月に1回、3か月連続で注射し、むくみがなくなった後も定期的に数か月に1回注射していきます。注射の間隔は、悪化を認めたとき(PRN)や悪化しない範囲内で期間を延長させて(T&E)行います。
治療は長期にわたることもしばしばで、中断してしまうと新生血管の勢いが増してしまい、視機能が低下するので、根気よく治療を続ける必要があります。

また、あらかじめ光に反応する薬剤(ベルテポルフィン)を体内に注射した後、その薬剤が新生血管に付着した頃、新生血管を含む範囲にレーザーを照射して新生血管を閉塞させる光線力学的療法も抗VEGF療法に追加されることがあります。治療後はしばらく日光が肌に当たらないようにする必要があります。
新生血管が黄斑の中心から離れていれば、直接レーザーで焼いてしまう方法もありますが、レーザーを当てた部分が見にくくなる恐れがあります。
網膜の下に多量の出血が生じた場合には、気体を目に注入し、出血を黄斑からどかせるような治療を行う場合があります。

治療ではありませんが、なるべく加齢黄斑変性にならないようにするビタミンE、ベータカロチン、亜鉛、ルテインを含むサプリメントを飲んだり、紫外線を避けたり、禁煙することも大事です。
いずれにしても、黄斑はとてもデリケートな部分で、一度傷むと回復しにくく、現時点では取り換えできない部分ですから、早期発見、早期治療が望まれます。