お知らせ

進化するがん治療機器(上)

医療ニュース
今回のホームページ制作に役立つコンテンツは、1月23日(金)日経新聞らいふプラスに掲載の「進化するがん治療機器」をご紹介させて頂きます。

がんの治療法は日々進化しています。
医療機器では、呼吸とともに微妙に動く患部に放射線を正確に当てたり、体内の様子を画面に映し出しながら細長い針を差し込んだりする装置が一部の医療機関で使われ始めました。
患者の負担を減らしながら治療効果を高める狙いです。
これらに携わる専門家は、「いずれ各地の医療機関にも普及させたい」と話しています。

京都大学病院の地下1階にある広い治療室に入ると、がんの放射線治療用の巨大な装置が目に入ります。高さ約3メートルで、ドーナツ状の輪が 縦向きに置かれ、中心部の空間にベッドに寝た人が入っていきます。
ベッドや輪が微妙に動き、複数の方向からがんの患部を放射線で狙い撃つことができます。
この装置は京大と三菱重工業、先端医療センター(神戸市)がつくりました。開発に参加した京大の横田憲治特定講師は「患者は息を止める必要がなく、負担も少ない。がんの形に合わせて照射できる」と利点を説明します。
放射線照射は外科手術、抗がん剤とともにがん治療の柱です。臓器を切除せずに済む利点があります。ただ、がんの周囲にある正常な組織に放射線が当たると、皮膚や粘膜が炎症を起こしたり、萎縮したりする副作用が出ることもあります。
特に膵臓がん肝臓がんは呼吸時に横隔膜の動きに伴い動きます。周辺組織への副作用を軽減するために放射線量を抑えると、十分な治療効果が見込めなくなる恐れがあります。また、放射線照射は抗がん剤と併用する例も多いです。抗がん剤投与によって傷んだ組織に放射線が当たると副作用がひどくなりやすいといいます。
京大の装置は複数のセンサーを駆使するとともに、放射線を出す装置のヘッドと呼ぶ素子の向きを逐次変えることができます。患部が呼吸などで動いても正確に追尾して放射線を照射できます。
さらに、放射線の強度をコンピューターで制御する強度変調放射線治療(IMRT)を組み合わせました。複数の放射線ビームを組み合わせ、がんに当たる放射線の形や範囲を常に変化させる仕組みです。
 

薬併用しやすく

これらの工夫で、患部に必要な放射線を当てながら、正常な組織へのダメージを抑えました。「新手法なら作用の強い抗がん剤とも組み合わせやすく、従来以上の治療効果を見込める」と京大の平岡真寛教授は強調します。
新手法を導入しているのは、京大病院と先端医療センター病院になります。京大病院では2013年6月に膵臓がんの患者に初めてこの手法を用い、昨年9月には肝臓がんの患者にも適用しました。
この2つのがんは、いずれも治すのが難しいです。たとえば「膵臓がん患者のうち、手術の対象になるのは約2割。手術ができない患者の余命は8カ月から1年程度の場合が多い」(先端医療センター病院放射線治療科の小久保雅樹部長)。
新手法では患者は通常、1回25分間程度の治療を3週間にわたり15回続けます。平岡教授は「10段階の強度の放射線を多数組み合わせて、グラデーション状に放射線の強さを変える」と話します。患部に十分な量の放射線を当てつつ、周辺の正常な肝臓組織が受ける線量を約15%減らせるといいます。
治療の中長期的な効果を見極めるにはまだ時間が必要だが、昨年4月に膵臓がんを治療した70代男性は、特に副作用もなく予定通り退院しました。その後は再発を防ぐため、抗がん剤治療を受けました。男性は現在、抗がん剤治療も終え、経過をみています。
 

健康保険の対象

がん治療の可能性を広げる新手法だが、どんながんに対しても適用できるわけではありません。呼吸などに伴って動き、近くに正常な腸管があるがんに限られます。膵臓がん肝臓がん以外には、胆のうがん腎臓がんが対象になるといいます。小久保部長は「がんが広がりすぎて腸管に付いた状態だと、この治療法を使いにくい」と説明します。
新型装置による治療については健康保険が適用されます。ただ、全国に普及するにはまだ時間がかかりそうです。がん治療を考えている患者に対しては、「どんな治療が可能か、まず現在かかっている医師や放射線の専門医に相談してほしい」と小久保部長は話します。


がん治療の可能性を広げる新手法だが、どんながんに対しても適用できるわけではありませんが
新型装置による治療については健康保険が適用されます。
がん治療は高額な治療費がかかります。
現時点では2病院での採用ですが、早い段階で全国に普及することを望みます。
前の記事
次の記事