今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『新しい毛の薬「ザガーロ」効果のほどは?』をご紹介させて頂きます。

新しい薄毛対策の薬「ザガーロ」(一般名デュタステリド)が2016年6月に発売されました。薄毛でお悩みの方、良かったですね!
――と言いたいところなのですが、「すぐに」「すごく」効果がある薬ではないようです。専門家は「現状維持で満足すべきでしょう」といっています。頭髪の悩みには、「悩んでいることを知られる悩み」もあります。人に聞けない毛の薬のことを簡潔に解説します。

2つの物質が元気を奪う

男性の薄毛には病名が付けられていて「男性型脱毛症」といいます。英語表記の「AGA」の認知度が上がってきましたので、この原稿でもAGAを使います。
AGAの原因は、実は解明済みです。男性ホルモンの「テストステロン」と「5α還元酵素」という2つの物質が「悪さ」をしているのです。
テストステロンは、5α還元酵素によってパワーアップして、「ジヒドロテストステロン」に変わります。このジヒドロテストステロンが、毛髪の「元気」を奪うのです。
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毛は変わった特徴を持つ

毛も、心臓や足と同様に「臓器・器官」のひとつです。しかし毛には、ほかの臓器・器官と異なる特徴があります。それは①短期間に成長し、②しばらくすると体から抜け落ちて、③また生えてくる、④①~③を繰り返す、という特徴です。
短期間に成長する臓器・器官(①)には、爪がありますが、爪は体から抜け落ちる(②)ことはありません。歯はまた生えてくる(③)のですが、生え変わりは生涯で1回で、繰り返す(④)ことはありません。
つまり①②③④の特徴をすべて持つ臓器・器官は、毛しかないのです。

細胞分裂で毛は作られる

毛に①②③④の特徴があるのは、毛の1本1本に「毛の工場」が備わっているからです。毛を作る工場のことを、「毛乳頭(もうにゅうとう)」といいます。毛乳頭は毛の根元にあります。
毛乳頭では「毛母細胞(もうぼさいぼう)」という細胞が細胞分裂を繰り返しています。これが「毛が作られる」ということになります。
毛母細胞が活発に細胞分裂するには、栄養が必要です。その栄養は毛細血管によって運ばれてきます。血管が毛乳頭に栄養と酸素を運び、毛母細胞の細胞分裂、つまり毛の製造を助けているのです。「頭髪の健康には血行の改善が欠かせない」といわれるのは、そのためです。

「テストステロン」は「5α還元酵素」によって凶悪化して「ジヒドロテストステロン」に変わります。このジヒドロテストステロンが、毛母細胞の細胞分裂を低下させるのです。毛母細胞の細胞分裂の回数が少なくなると、きちんとした毛はできず、産毛ができるだけで終わってしまいます。これが薄毛のメカニズムです。
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完全に毛がなくなった人には難しい…

それでは新薬「ザガーロ」についてみてみましょう。まず、残念なお知らせからお伝えします。AGA治療の専門家で、横浜労災病院皮膚科部長、齊藤典充医師は「AGA治療の基本は現状維持」と断言しています。つまり、ザガーロも、既に販売されている「プロペシア」も、服用したからといって薄くなった頭髪がふさふさになることはない、ということです。
さらに齊藤医師は、2つの薬を服用しても「完全に毛がなくなった人には難しいものがあります」とも述べています。
しかしそれでも、人類が「頭髪の現状維持」にまでたどり着いたことは、特筆に値するのです。

ザガーロVSプロペシア「効果は大差なし?」

それでは、ザガーロとプロペシアの違いをみてみます。実は違いは小さいです。テストステロンを凶悪化させる「5α還元酵素」には「Ⅰ型」「Ⅱ型」があります。ザガーロは、「5α還元酵素Ⅰ型」と「5α還元酵素Ⅱ型」の両方を抑制します。一方のプロペシアは、「5α還元酵素Ⅱ型」のみを抑制します。
「Ⅰ型」は全身の体毛に関係し、「Ⅱ型」は頭髪に関係しています。ですので、プロペシアでも十分効果があるのです。齊藤医師の印象では「大差ない」そうです。

ザガーロVSプロペシア「価格差は1割」

プロペシアは、1日1回、1錠を服用します。医師の処方が必要ですが、医療保険は使えません。全額自費です。医療機関によって料金が変わってきますが、月額7,500~15,000円程度です。

ザガーロも1日1回、1カプセルを服用します。ザガーロも保険は使えません。料金は月額8,250~16,500円です。ザガーロの方が1割ほど高いです。
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ザガーロVSプロペシア「肝機能障害、勃起不全も」

2つの薬ともに、肝機能障害の副作用があります。また勃起不全が、服用した2%の患者に現れるといいます。
2つの薬の大きな違いは、半減期です。半減期とは、薬の成分の血中濃度が半分に減るまでにかかる時間のことです。
プロペシアの半減期は3~4時間、ザガーロの半減期は3~4週間です。これだけ聞くと、ザガーロの方が良い薬のように感じるかもしれませんが、一概にそうとも言い切れません。
半減期が短いと、副作用が出てもすぐに治まる利点があるからです。AGA薬は、命や健康に関わる薬ではないので、半減期が短い方が良いともいえるのです。

まとめ

AGAは命に関わる病気ではありません。また、いわゆる「はげの男性」でも気にしない人はまったく気にしている様子はありません。しかし特に若い男性は、生きる気力がなくなるほど悩みます。つまりAGAもやっぱり「QOLの病気」といえるのです。