今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『胃や腸に穴があく「穿孔(せんこう)」は恐い!!』をご紹介させて頂きます。

胃や腸はとても丈夫な臓器ですが、それでもさまざまな病気によって穴が開いてしまいます。胃や腸に穴が開いた状態のことを「穿孔(せんこう)」といいます。
穿孔という言葉は医療用語であると同時に、工業用語でもあります。工業分野では例えば「分厚いコンクリートをダイヤモンドのドリルで穿孔する」といったように使います。「穿孔」とは「とてつもないモノに穴を開ける」という意味です。
胃や腸の穿孔は、それくらいの重大事なのです。

穴が開くと中身が漏れる

腸の中にはウンチが入っています。胃の中には食べ物がありますが、常温で数時間経過していることもあり不潔な状態といえます。ウンチや不潔な食べ物が内臓内に漏れ出ると、ショック死します。または、腹膜炎というとても重い病気を発症します。
胃には「胃壁」があり、腸には「腸壁」があります。こうした壁が、ウンチや不潔な食べ物を外に出さないようにしているのです。なので、胃壁や腸壁に穴が開く穿孔は、一大事なのです。
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かなり丈夫な胃腸を破るすさまじさ

胃腸はぶよぶよしていて、しかも、しわしわです。ぶよぶよもしわしわも、胃腸に弾力性を与えています。また胃壁や腸壁は何層にもなっていて強度があります。つまり胃も腸も、とても丈夫な「素材」なのです。
そんな胃腸に穴を開ける病気は、すさまじい病気ばかりです。穿孔の代表的な原因を紹介します。

大量の出血を引き起こす潰瘍

胃潰瘍や十二指腸潰瘍という病名は、ご存じの方も多いと思います。潰瘍とは「大きな傷」という意味です。潰瘍まで悪化していない傷は「糜爛(びらん)」といいます。つまり、糜爛が悪化して潰瘍になり、潰瘍が悪化すると穿孔するのです。
ただ潰瘍がすぐに穿孔を引き起こすわけではありません。前兆があるので、それを見逃さないことが大切です。
潰瘍はまず、胃や腸の血管を壊します。壊れた血管から血が噴き出すと、胃や腸の中にたまります。胃腸の入口は「口」で、出口は「肛門」ですので、その血は吐血または下血となって体の外に出てきます。
吐血とは、口から血を吐くことです。下血とは、肛門から血が噴き出ることです。吐血と下血こそが穿孔の前兆です。
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潰瘍以外の穿孔の原因

穿孔の原因は、潰瘍以外にもあります。外傷により、胃に穴が開くこともあります。またなんらかの原因で細胞が死んでしまい、その部分がもろくなって徐々に穴にまで進んでしまうこともあります。
ガンが進行して胃壁や腸壁を突き破る形で穿孔が生じることもあります。

薬が穿孔を引き起こすことも

胃腸に潰瘍や糜爛(びらん)や炎症がまったくなくても、穿孔を引き起こす人がいます。それはステロイドや鎮痛剤といった薬を長期間服用している人です。ステロイドは強い薬なので医師が厳格に管理しますが、鎮静剤は、頭痛、関節痛、生理痛などの人が服用するいわゆる「普通の薬」です。それが原因で穿孔になるので、注意が必要です。
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激痛が走ったら迷わず救急車

穿孔が起きたときの症状を紹介します。
完全に穿孔する1週間ほど前に、空腹時にお腹が痛くなることがあります。この段階ではまだ我慢できる痛みです。しかしそれから1週間が経ち、穿孔してしまうと突然激痛が走ります。歩くことができないほどの痛みです。その痛みは長時間継続します。
この激痛を放置するとショック死か腹膜炎による死が待っています。この状態になったら、迷わず救急車を呼んでください。

何重もの検査をやる理由

穿孔は原則、手術で治しますが、その前に検査が必要です。医師は患者のお腹を押します。それは穿孔の際に必ず現れる「圧痛(あっつう)」という痛みの症状の有無を調べるためです。圧痛とは「押すと痛みが増す」状態です。

次にX線検査を行い「穴」を確認します。胃も腸も空気が含まれているので、穿孔によって穴があれば、空気の漏れがあるはずです。X線検査で「穴とは断定できないが、穿孔の可能性も捨てきれない」としか分からない場合、次は超音波検査やCT検査を行います。
X線でも超音波でもCTでも「穴とは断定できないが、穿孔の可能性も捨てきれない」場合、最終的には医師が「目」で確認します。内視鏡検査です。胃の穿孔も、十二指腸の穿孔も、どちらも口から内視鏡の管を入れて見ます。

なぜここまで徹底的に検査するかというと、手術をするかどうかの判断をしなければならないからです。かつては潰瘍でも手術をしていましたが、現代はかなり重症な潰瘍でも薬で治します。現代医療は手術を回避できる方法を探すのです。
激しい痛みに悩まされる患者にしてみたら「検査なんていいから、早くこの痛みを取り除いてくれ!」となるでしょう。それでもこれらの検査は省略できないのです。
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治療の原則は手術

胃の穿孔または腸の穿孔が「確実」と判断されたら、緊急手術を行います。お腹を開いて、胃または腸を露出させて縫って穴を塞ぎます。
手術のメリットは、①入院期間が短くなる、②痛みから早く解放される、③死ぬ確率が減る――の3つがあります。

ただ、穿孔していても手術を回避できるときがあります。①若い人で、②血圧に異常がなく、③痛みに改善傾向が見られる場合、手術をしないで薬と安静で完治を目指します。

予防はストレス回避

穿孔の大きな原因は潰瘍ですから、潰瘍を予防することが、穿孔予防につながります。潰瘍の原因はストレスです。ストレスを生む日常生活を見直すことが、穿孔予防につながるのです。
また、穿孔の前段階の潰瘍は徐々に悪化していきますので、年1回の健康診断は欠かさないようにしてください。

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