今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『メニエール病』をご紹介させて頂きます。
強烈なめまいや耳鳴りを引き起こすことで知られる「メニエール病」は、厚生労働省が特定疾患に指定している「難病」です。耳の奥に異変が起きて発症することは分かっていますが、「なぜその異変が生じるのか」という原因は分かっていません。

原因不明なので、根本治療ができない状況ですが、患者を苦しめる症状を軽減することはできます。それを対処療法といいます。対処療法は、早期に取り組むと、効果が大きくなります。

数十分以上の長い回転性のめまいが反復して起きたり、耳鳴りや難聴が強くなると、メニエール病が疑われます。さらに耳の奥を調べて、異変が見付かると診断が下ります。
耳の奥にある「蝸牛(かぎゅう)」と「前庭(ぜんてい)」と「三半規管」という3つの器官に異変が起きると、メニエール病が発症することが分かっています。ひとつずつ解説します。
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3つの器官とは…

蝸牛は「聞こえ」を司っています。音が蝸牛に到達すると、蝸牛につながっている神経が「音」を「電気信号」に変えて脳に伝えます。
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前庭は「重力を感じる」能力があります。私たちは目をつむっていても「重力の方向」が分かります。それは前庭が重力センサーになっているからです。もし前庭がなければ、「重力の方向」は、モノを床に落としてみて、それを目で観察しなければ分かりません。
「重力の方向が分かる」とはすなわち「上と下が分かる」ということになります。
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三半規管は「回転を感じる」能力があります。座面が回転する椅子に座って、目をつむって2~3回転してみてください。適当に止まったところで目を開けると、大体想像した通りの位置で止まっていると思います。目をつむっていても「大体これくらい回った」ということが分かるのは、三半規管のセンサーのお蔭なのです。

いかがでしょう、この3つの器官が異常をきたすと、メニエール病の症状が起きるのは当然だと感じませんか。「聞こえ」の蝸牛が壊れると耳鳴りや難聴になる、「重力」の前庭が壊れると上下が分からなくなる、「回転」の三半規管が壊れると回転性のめまいが起きる――といった具合です。
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共通した特徴とは…

この3つの器官には、共通したある特徴があります。それは器官内が「リンパ液」という液体で満たされているということです。リンパ液は、体内をゆっくり循環しています。血液も体内を循環していますが、血液は心臓という「強力なポンプ」で強制的に動かされているので、血液の流れは、リンパ液の流れより格段に速いです。

メニエール病では「なんらかの支障」が発生して、「蝸牛」「前庭」「三半規管」の中のリンパ液がうまく流れない状態が続いているのです。そのため3つの器官はパンパンに膨れているのです。「水ぶくれ」と同じ状態です。
残念ながら、冒頭で申し上げた通り、その「なんらかの支障」は解明されていません。

そこで大阪市立大学病院は、この「水ぶくれ」をいち早く見つける技術を開発しました。CTを使って「蝸牛」「前庭」「三半規管」を見ます。CTは多くの医療機関が持っていますが、同病院はCTが映し出した画像を、特殊な解析方法を用いて分析しています。ですので、CTがあればどの病院でもメニエール病を早期に発見できるわけではないそうです。

早期発見が実現できたことで、メニエール病と診断された人でも、血行改善のための軽い運動を指示されただけで、めまい耳鳴りが改善したという事例も報告されています。
(参考「メニエール病、早期発見…内耳の変形、CT画像診断」読売新聞2014年7月20日付)
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早期に発見できず、重くなったメニエール病の治療は、困難を極めます。めまいを鎮める「抗めまい薬」や、吐き気を止める「制吐薬」、そして気持ちを落ち着かせる「抗不安薬」などが処方されます。めまいが激しい場合は、医療機関で「抗めまい薬」を点滴投与することもあります。

治療では、ストレスの解消が必要になります。これも「ストレスを受けたからメニエール病が発症した」ということが分かっているわけではなく、ストレスがあるとメニエール病が悪化する患者が多いので、医師は「ストレスのない生活を送ってください」と指示するだけのようです。

メニエール病は、すぐに命にかかわる病気ではないのですが、生活が著しく困難になります。本人の治療に加え、周囲の気配りが重要な病気です。

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