小児ネフローゼ症候群

初診に適した診療科目

小児ネフローゼ症候群はどんな病気?

小児ネフローゼ症候群とは、尿から蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少する疾患です。
腎臓の糸球体に障害が起きることで発症します。血液中の蛋白が減少すると、血管の内側と外側の浸透圧を同じに保つ働きによって、血液中の水分が血管の外に出ていきます。
これによって皮膚の下の組織に水分が溜まり、むくみとして現れます。むくみ以外の症状としては高脂血症なども代表的です。
顔が腫れたり、手足が腫れぼったくなるなどの症状もみられます。特発性ネフローゼ症候群と呼ばれる原因をはっきりと特定できないタイプが最も多いとされています。

小児ネフローゼ症候群は約半数が5歳未満に発症し、男児の発症は女児の約2倍多いとされています。
日本においては小児10万人に対して約5人が1間で発症するという報告もあります。

治療は主にステロイド剤の内服を中心に行われ、多くの場合症状は改善しますが、再発するケースも多く見られます。
まれにステロイドに反応せず腎不全へと進行して透析が必要になる場合もあります。

主な症状

ネフローゼ症候群の小児に現れる症状としては、むくみ、高度蛋白尿、低蛋白血症、高コレステロール血症などが挙げられますが、これらには自覚症状が全くないケースも珍しくありません。

全身の中ではまぶたや顔や足などは特にむくみが目立つ部位と言えます。
むくみに伴って体重増加がみられることも多いです。また症状が進行していくと腎不全を引き起こす場合があり、高脂血症を合併することもあります。
尿量減少、胸水、腹水なども血液中の水分が減少し、組織に水分が増加することによって生じるものです。
また消化管がむくむことで腸の動きが悪くなり、吐き気、腹痛、下痢、食欲低下などの症状につながる可能性もあります。

尿中から失われるタンパク質には血液を固める働きに関連したタンパク質も含まれています。
それによって腹膜炎、肺炎、胃腸炎などの感染症や血栓症を生じることもあります。血液の量そのものの減少によって血圧低下、ショックを引き起こすケースもまれに見られます。

主な原因

ネフローゼ症候群は、腎臓の糸球体基底膜が障害され、血液中の蛋白が尿中に大量に漏れ出すことを原因に発症します。
正常な糸球体ではたんぱく質は尿中に漏れ出ないようになっており、それが何らかの要因で糸球体の細胞や構造に異常が生じるとたんぱく質が血管から尿に漏れ出ます。
しかしこの腎臓の障害が何を原因に起こっているかは明らかになっていない部分も多いです。
ネフローゼ症候群全体の中で最も多いとされているのが、明確な原因がわからい特発性(原発性)ネフローゼ症候群です。

糸球体腎炎と呼ばれる腎臓の病気によってたんぱく尿、血尿、身体のむくみ、高血圧などを引き起こす続発性のネフローゼ症候群も存在します。
具体的にはIgA腎症、紫斑病性腎炎、膜性腎症、ループス腎炎などが挙げられます。

また先天的な遺伝子異常によって発症するケースもまれにあるとされています。
この場合、生後間もない時期や乳幼児期からたんぱく尿などの症状が現れるのが特徴です。最終的に腎不全に至るケースが多いです。

主な検査と診断

ネフローゼ症候群の診断には問診、尿検査、血液検査、腎生検などが行われます。
主に尿検査において過剰なたんぱく尿、血液検査で基準以下のたんぱく濃度であるという二つの条件がそろっている場合には、ネフローゼ症候群と診断されます。
また問診によって自覚症状の有無や臨床症状を確認し、特発性、続発性、先天性のどれにあたるかを判断します。

診断が確定してから治療を開始する前には腎生検が行われるケースが多いです。
腎臓の組織を一部採取して詳しく確認する検査で、治療方針の決定などに役立ちます。
微小変化型と呼ばれるネフローゼ症候群の場合、ステロイド薬に対する反応が良いことで知られています。
小児のネフローゼ症候群は、9割異常を占めるため事前の腎生検を行わずに治療を開始し、効果が見られない場合に腎生検を行うという進め方も一般的です。
小児の場合には大半が特発性ネフローゼ症候群ですが、成人の場合にはさまざまな要因が考えられるため原因を特定する検査が重要です。

主な治療方法

ネフローゼ症候群の治療には、プレドニゾロンなどのステロイド薬を用いた治療が行われることが多いです。
特に小児における微小変化型ネフローゼ症候群の場合、ステロイド薬による反応は良好です。
ステロイド薬を用いた治療を開始後、約9割の患者が1週間程度でタンパク尿に改善がみられます。
ステロイド薬による改善が見られないステロイド抵抗性を持つ場合もあり、免疫抑制薬などが追加されるケースもあります。
多くの場合、ステロイド薬を使用し始めて4週間を目安に判断します。頻繁に再発を繰り返す場合にも同様に追加治療が行われます。
基本的にステロイド薬の効果が期待できる場合、再発を繰り返したとしても重篤な状態に陥るケースはごくわずかです。
治療の効果が見られず症状が進行した場合には、腎機能が低下して腎不全となり、透析や腎移植が必要になるケースも存在します。

またむくみ、高血圧、低タンパク血症に対して、食事療法や利尿薬などを使用した薬物療法も必要に応じて行われます。