甲状腺嚢胞

初診に適した診療科目

甲状腺嚢胞はどんな病気?

甲状腺嚢胞とは甲状腺腫と呼ばれる良性腫瘍の一種で、甲状腺の中に液体が溜まった袋状のものを指します。
甲状腺腫は甲状腺が大きくなった状態を指しており、その中でもしこりのようにはれるものを結節性甲状腺腫と呼びます。
結節性甲状腺腫の中でも良性腫瘍の場合いくつかの種類に分類されており、甲状腺嚢胞はその中のひとつです。
内部で変性や出血が起き、水風船の様に膨らんでいる場合がほとんどです。健康な人に頸部超音波検査を行うと約10人に2、3人の割合で小さな嚢胞が見られるという報告もあります。

大きなものの場合、手で触れてしこりと分かるようになります。ほとんどの場合痛みはありませんが、まれにしこりが突然大きくなった際に痛みを生じるケースがあります。

基本的に癌に変化することはないとされていますが、しこりの中に癌が混じっているケースは珍しくありません。良性腫瘍の一種であるため基本的には積極的な治療よりも経過観察となる場合が多いです。

主な症状

甲状腺嚢胞は甲状腺の中に液体の溜まった袋状のしこりを生じます。
甲状腺に生じるしこりのほとんどは良性で、健康的な人にも多く見られるものでありとりわけ珍しい疾患ではありません。
取り立てて目立った症状がないのも特徴です。しこりは球状の形をしており、痛みなどの目立った症状は基本的に生じません。
しこりが小さい場合には手で触れても分からない場合が多く、自覚症状がなく発症している人も多いとされています。
徐々にしこりが大きくなると、手で触れた時に明らかなふくらみや固さを感じるようになります。この時点で医療機関を受診し、発見されるケースも多いです。

まれに痛みが生じることがあり、特にしこりが急速に成長した場合などに見られます。
ただこの場合でも数日程度で痛みは収まる場合がほとんどです。またしこりが4cmを超えて大きくなるような場合には声のかすれ、食べ物を飲み込む際の違和感などの嚥下障害を生じるケースがあります。

主な原因

甲状腺嚢胞は甲状腺の袋状の構造物の中に、液体が貯留することでできます。
ヨードの不足を原因としてしこりを生じる場合があります。

甲状腺はノドボトケの下部にある蝶のような形をした器官です。
新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンを分泌するなど体全体に関わる重要な役割を果たしています。
甲状腺の病気の中には甲状腺嚢胞のような甲状腺腫瘍の他にも甲状腺機能の異常や甲状腺の炎症なども挙げられます。
これらを原因として甲状腺ホルモンの分泌に異常が起きたり炎症が起きたりします。甲状腺に関わる疾患は男女で比較すると女性に多い傾向があります。
また甲状腺腫瘍全体で見るその8~9割は治療が不必要なものです。特に甲状腺嚢胞は良性腫瘍の一種であり、手術などの治療が行われることは少ないと言えます。
超音波検査の普及によって近年ではごく小さな腫瘍を早期に発見できるようになってきました。甲状腺の病気の認知度が高まり、それに伴って検査を受ける人も増加傾向にあります。

主な検査と診断

甲状腺嚢胞の診断には主に超音波検査が行われます。
中に溜まった液体を注射器で吸い出した後、残ったしこりの部分から組織を採取して細胞診が行われます。
これによって良性腫瘍か悪性腫瘍化を判断することが可能です。これらの検査の前に甲状腺に実際に触れてしこりの固さや位置などを直接確かめる方法も有効です。
甲状腺嚢胞を確認するための特別な検査があるわけではなく、甲状腺腫瘍について詳しく検査する中で結果的に甲状腺嚢胞であることが明らかになります。

腫瘍が良性か悪性かの判断には超音波検査の他にも、CT検査、MRI検査、シンチグラフィーなどが用いられることもあります。また必要に応じて甲状腺機能や腫瘍マーカーを評価するために血液検査なども行われます。

検査技術の進歩もあり、甲状腺腫瘍についてはこれまで発見されにくかった10mm以下のごく小さなものまで発見できるようになりました。乳がん健診時の超音波検査の普及による結果とも考えられています。

主な治療方法

甲状腺嚢胞が発見された場合でも、多くの場合治療は行わずに経過観察となります。
なんらかの症状がある場合や腫瘍が大きくなる傾向がある場合には積極的な治療も検討されます。

しこりが大きい場合には中の液体を注射器で吸い出してしこりを小さくする方法が採用されます。
この治療法を行っても繰り返し大きくなる場合にはエタノール注入療法と呼ばれる方法もあります。
これはしこりの内容液を吸引した後に嚢胞腔内にエタノールを少量注入する方法です。エタノールを注入するとしこり部分に炎症を起こすことができ、嚢胞腔をつぶすことができます。
大きな切開も不要で負担が少ない点がメリットです。注入後に熱感や軽い疼痛を生じることがありますが、患部を冷却することなどによって改善します。
エタノール注入療法はPEITとも呼ばれ、特に甲状腺嚢胞に対して効果が期待できる治療法です。
最終手段として考えられている手術療法では、片側に存在する腫瘍と同時に腫瘍が生じている甲状腺の半分を摘出する方法が一般的です。