遺伝性出血性毛細血管拡張症はどんな病気?
遺伝性出血性毛細血管拡張症とは、先天的に毛細血管が薄く脆弱なために、血圧によって拡張するなど血管に異常が現れ、出血を起こす疾患です。オスラー病とも呼ばれており、難病にも指定されている疾患です。
日本では約5000~8000人に1人の割合で遺伝性出血性毛細血管拡張症の遺伝子を持つ人が見られ、その中の一部の人が発症します。遺伝性の疾患で、親から子へと遺伝でしますが遺伝子を持つ人全員が発症するものではありません。
遺伝性出血性毛細血管拡張症を発症すると鼻血、血痰、頭痛、けいれん、貧血などの症状が現れます。症状は異常な血管がどの臓器に生じているかによってさまざまです。
最も多く見られる症状は鼻血で、全体の約8割に見られるとされています。重症なケースでは血管破裂、脳 膿瘍 、 敗血症などの合併症も見られます。
治療は手術、レーザー治療、薬物療法などが用いられます。重篤な合併症を起こさなければ、予後は良好と言えます。
遺伝性出血性毛細血管拡張症の主な症状は?
遺伝性出血性毛細血管拡張症を発症すると、消化管、尿路、脳、脊髄などさまざまな部位の毛細血管で出血がおこり、現れる症状も多岐に渡ります。唇や舌で血管の拡張が見られる他、最も典型的な症状とそては鼻血、貧血が挙げられます。
これは鼻腔の粘膜に異常が生じたために起こるものです。その他にも脳の動静脈に関連する脳出血、痙攣、肺の動静脈に関連する脳梗塞、脳膿瘍、呼吸不全、肺出血、喀血、肝臓の動静脈に関連する心不全、肝機能障害、肝性脳症、消化管の粘膜に関連する貧血、吐血、下血などが挙げられます。
また、脊髄の動静脈に異常が現れた場合には下肢麻痺、四肢麻痺も見られます。頭痛、手指・口腔粘膜・口唇・舌からの出血なども頻繁に見られる症状の一つです。
これらの症状は大きく分類すると鼻出血、皮膚粘膜の毛細血管拡張症、内臓の血管病変に分けられます。鼻出血は自然に生じ、何度も繰り返し起こる点が特徴です。
内臓の血管病変には毛細血管拡張によるものと、動静脈奇形によるものとがあります。
遺伝性出血性毛細血管拡張症の主な原因は?
遺伝性出血性毛細血管拡張症は遺伝子の異常が原因で発症します。親から子へ遺伝する常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式で、50%の確率で親から子に受け継がれるものです。常染色体優性遺伝をする疾患の中でも最も高頻度とされています。原因遺伝子として代表的とされているものがENG(エンドクリン)、ACVRL1(ALK1)、SMAD4です。遺伝子の異常が親から遺伝している場合でも、症状が必ず現れるわけではありません。
血管形成に異常が生じることで血管がもろくなって出血を起こします。主に皮膚や口腔、鼻腔、消化管の内側などで毛細血管の拡張がみられるのが特徴です。また動脈と静脈の間に異常な経路ができるケースも多くみられます。このような動静脈奇形は脳や脊髄、肝臓、肺などに生じることもあり、結果としてけいれんや脳卒中、麻痺、肝不全、心不全などを引き起こす原因となります。出血が頻繁に生じることで血球の数が減少し、貧血を引き起こすことも多いです。
遺伝性出血性毛細血管拡張症の主な検査と診断方法は?
遺伝性出血性毛細血管拡張症は問診で家族歴を確認する他、視診によって顔や口、手足に特徴的な血管の拡張が認められた場合に診断されます。血管の拡張が明確に現れるため特別な検査などを行わない場合も多く、比較的容易に診断が可能です。可能性が疑われる場合には血液検査を行うことで貧血の程度などを確認します。遺伝性出血性毛細血管拡張症と診断された後に、さらに詳しく全身の状態を把握するために脳、肺、肝臓、腸などの画像検査が行われます。
これによって症状が現れていなかった部位の動静脈奇形の有無なども確認できます。
遺伝性出血性毛細血管拡張症の家族歴がある場合にはスクリーニング検査が推奨されています。
主に思春期を迎えた頃に行われ、血液検査、肺、肝臓、脳の画像検査が行われる場合が多いです。
これによって症状が現れていない場合でも、静脈奇形などを発見することができ、発症に備えることができます。スクリーニングの多くは思春期頃、青年期後半頃の2回に渡って行われます。
遺伝性出血性毛細血管拡張症の主な治療方法は?
遺伝性出血性毛細血管拡張症の治療は主に薬剤療法、手術、レーザー治療などが行われます。基本的に治療の第一目的は止血と予防です。血管を圧迫する、外用薬によって血管を狭くする方法が用いられます。レーザー治療は鼻や消化管で出血している血管を破壊することができます。
出血が重度になるとこれらの方法では対応ができないため手術による治療が検討されます。
肺や肝臓の動静脈奇形で行われることが多いカテーテル手術では、動脈からカテーテルを挿入し、問題が生じている血管にコイルやプラグを入れることで出血を止める治療方法です。
また遺伝性出血性毛細血管拡張症では出血が繰り返し起こることで鉄欠乏性貧血になりやすい点も特徴の一つです。
このために鉄剤を経口または静脈内投与する治療も一般的です。
また薬物療法ではその他にもイプシロンアミノカプロン酸、トラネキサム酸などの血栓の分解を阻害する薬や、ベバシズマブなどの出血の発生頻度を減らす薬も用いられます。
遺伝性出血性毛細血管拡張症の初診に適した診療科目
- 血液内科 ( 血液内科の病院一覧 )