今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『虚血性心不全…。病気を知れば予防は可能!』をご紹介させて頂きます。

心臓病は死に至る恐い病気ですが、一方で死を回避することができる病気でもあります。今回は数ある心臓病の中で「虚血性心不全(きょけつせい・しんふぜん)」を取り上げます。
この病気の仕組みを知れば「予防は可能」と思えること間違いなしです。キーワードは「この病気で死なないようにする」です。
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心臓に血液が届かない

病名は病気の性質を表しています。「虚血」は「血液が届かない状態」という意味です。血液は体を構成するすべての細胞に酸素と栄養を送っていますので、血液が届かないと細胞は死んでしまいます。
虚血性心不全は、「心臓に血液が届かなくなり、心臓を構成している細胞が死んでしまって心臓の動きが悪くなった状態」という意味です。
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2種類の血管を知ろう

ここでもうひとつ知っておいてもらいたいことがあります。それは、「心臓には2種類の血管がある」ということです。

1つめの「心臓の血管」は、血液を体内の隅々まで巡らせる血管です。心臓から飛び出した血液は肺に行き、肺から酸素を受け取ります。血液はその酸素をすべての細胞に送り届けます。酸素を細胞に引き渡した血液は、同時に細胞から二酸化炭素を受け取ります。この二酸化炭素は呼吸を通じて体の外に出さなければなりません。二酸化炭素を含んだ血液は、心臓に戻り、心臓に勢いよく押されて、再び肺に到達します。そこで血液は「二酸化炭素を吐き出し、酸素を受け取る」ことをします。

2つめの「心臓の血管」は、心臓に酸素と栄養を届ける血管です。心臓も細胞でできているので、心臓自体が酸素と栄養を必要としています。つまり「1つめの心臓の血管」を使って心臓を飛び出した血液のうち、一部の血液は心臓の細胞に向かうのです。

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冠動脈は命にかかわる

虚血性心疾患を引き起こすのは、「2つめの心臓の血管」です。この、心臓に酸素と栄養を届ける血管のことを「冠動脈」といいます。心臓は握りこぶしより少し大きいくらいの臓器です。冠動脈は何本もの枝状の血管に分かれていて、心臓の表面にまとわりつくように張り巡らされています。

「動脈」は「冠動脈」以外にもたくさんあります。しかし心臓は人の生死を決める臓器なので、わざわざ特別な名前が付けられているのです。「冠(かんむり)」の由来は、「心臓に冠が覆いかぶさっているから」とされています。

細くなったり、詰まったり

それではなぜ、虚血性心疾患が起きてしまうのでしょうか。つまり、なぜ冠動脈が「虚血」してしまうのでしょうか。それは血管が細くなったり、完全に詰まったりするからです。血管は、中が空洞になっているチューブ状の臓器で、その中に血液という液体が流れています。なので、チューブが細くなったり詰まったりしてしまえば、チューブの中の液体は流れなくなります。
冠動脈の流れが悪くなった状態を「狭心症」といいます。冠動脈が完全に詰まり、詰まった先の心臓の細胞が完全に死んでしまった状態を「心筋梗塞」といいます。
つまりこういうことです。
「虚血性心疾患には2種類あって、軽い方を狭心症、重い方を心筋梗塞と呼んでいる」のです。
心不全というのは、心臓の動きが悪くなって、心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態を言います。虚血性心不全とは虚血性心疾患が原因で起こった心不全状態のことです。

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救急車を呼ぶ

虚血性心不全の代表的な症状は、激しい胸の痛みです。専門用語で「苦悶感」といいます。いかにも苦しそうなネーミングですよね。
痛みは胸にとどまらず、肩から腕にかけて広がり、顎が痛くなることもあります。嘔吐したり、腹痛を起こすこともあります。
そのまま放置していると、発熱や汗が出てきます。心臓の動きが悪くなると、脳が「このままではまずい!」と判断し、自律神経に「頑張れ!」と命じます。発熱も汗も、自律神経が働いている証拠なのです。このような症状が起きたら、すぐに119番通報してください。治療は一刻を争います。心臓の動きが悪くなっていますので、動悸や息切れ、呼吸困難と言った症状が出る場合があります。足が浮腫んできたり、顔が腫れてきたししたらお近くの循環器内科の先生に相談してみる必要があります。

突然死も

虚血性心不全は突然死を招くことがあります。異常が起きて1分以内に死ぬことも珍しくありません。仕事中や、歩いているときや、テレビを観ているときでも、虚血性心不全によって倒れて意識を失い、そのまま亡くなってしまうのです。
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血管を詰まらせないように

いかがでしょうか、虚血性心不全が「単なる血管の詰まり」であることがご理解いただけましたでしょうか。血管は簡単に詰まります。しかし、生命に大きな影響を及ぼさない臓器の血管が詰まっても、健康被害は大きくありません。ところが、冠動脈という心臓を養っている血管が詰まると、簡単に命の危機に陥るのです。

虚血性心不全の予防は1にも2にも、高血圧予防です。肉や脂を中心とした食生活になっていませんか? 野菜はたくさん食べていますか? 運動は「1日20分の軽い運動」は行っていますか?
きちんと年1回、健康診断を受けていますか? そのとき「脂質異常症の疑い」や「血糖値が高い」と言われたことはありませんか? 脂質異常症も高血糖も、簡単な治療で済みます。
これらはすべて、「簡単なこと」です。しかしこれこそ、虚血性心不全の予防につながります。

【この記事の監修医師】

医療法人清和会 松尾医院
松尾 信郎 院長

〒573-1152
大阪府枚方市招提中町1-1-1

 TEL:072-851-3434

診療内容:内科・循環器内科・小児科・皮膚科

<参考>
松尾医院公式ホームページ
WEB初診予約ページ

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