今注目が集まっている医療や健康情報を病院検索ホスピタが厳選して分かりやすくお届け! 今回は『膝の痛み』をご紹介させて頂きます。
ここで紹介する50代の女性は、たったひとつの器官を除いて、健康そのものです。しかしその器官の異常が悪化すると、寝たきりになる可能性があるのです。
その器官とは、膝です。この女性は、左膝の関節に「変形性膝関節症(へんけいせい・ひざ・かんせつしょう」という病気が発症しています。痛みで10分間も立っていられません。車いす生活を余儀なくされ、それで手術を受けることを決意しました。

変形性膝関節症とは、加齢や肥満が原因で、膝関節の軟骨がすり減ってしまう病気です。軟骨はクッションの役割を果たしているので、軟骨がなくなると、太ももの骨と、すねの骨が直接ぶつかってしまい、強烈な痛みを起こします。

手術は、全身麻酔をかけて、膝関節を人工関節に置き換えます。人工関節の材料は、体への負担が少ないチタンという金属と、ポリエチレンでできています。ポリエチレンが軟骨になります。
手術はまず、膝の前側を15センチ切り、太ももの骨と、すねの骨、すなわち膝の関節を露わにします。これだけ広範囲に骨を大気にさらすと、感染症の危険が高まりますので、手術をする医師や、手術器具を医師に渡す看護師たちは、宇宙服のように、全身をすっぽり覆う特殊な手術着を着こみます。この手術に必要な清潔のレベルは、胃の手術などに比べると、格段に高いものです。

まず、太ももの骨の一部と、スネの骨の一部を削り取り、軟骨も取り除きます。骨を削る道具は、「のこぎり」です。医療用ではありますが、のこぎりです。手術室には、大工作業室と同じ音が響きます。
その後、人工関節を装着します。膝は、全体重の半分弱がのしかかるので、かなり頑丈に設置しないとなりません。それで医師は、トンカチを使って、骨に埋め込みます。医療用のトンカチですが、トンカチはトンカチです。手術室には、カンカンカンと、やはり、大工作業室と同じ音が響きます。

膝

人工関節とは・・

さて、ここまでの手術方式は、従来と変わりありません。ここで紹介したいのは、人工関節の進化です。
軟骨に相当するポリエチレンに、ビタミンEを配合したのです。ポリエチレンは、体内の酸素にさらされますので、酸化が起ります。酸化とは錆びであり、人工関節の劣化を意味します。それで、ビタミンEが配合されていない従来のポリエチレンは、15年しかもちませんでした。

15年は、人工関節の寿命としては、決して長い時間ではありません。例えば60歳でこの手術を受けた場合、75歳で使い物になってしまうのです。使い物にならなくなったら、再手術で人工関節を取り換えなければなりません。60歳の時点では全身麻酔の大手術に耐えられた人でも、75歳になるころには、どうなっているか分かりません。

ビタミンEは、抗酸化作用があることが知られています。サプリメントとしても飲用されています。抗酸化とは、酸素による劣化速度を遅くする効果のことです。耐久年数は最長30年まで延びたそうです。
高齢者の大手術は、その人の寿命との兼ね合いが重要になります。医師は「75歳で車いす生活になるのは可哀そうだけど、90歳で車いすを使うのは、やむを得ないのではないか」と考えます。
つまり、耐久年数が15年しかない人工関節であれば、医師はいくら患者が痛がっていても、患者の将来を考えて、60歳で人工関節を入れる手術を躊躇してしまいます。しかし耐久年数が30年であれば、60歳の人にも積極的に手術を勧めることができるのです。
この手術は、高額療養費制度の対象となり、患者の自己負担は10万円程度です。

人工関節の効果はかなり高く、この50代の女性は、手術の2日後には、歩行リハビリを始め、2週間で退院しました。もちろん、痛みから解放されました。
国内の変形性膝関節症の患者数は、約2500万人もいます。うち800万人が痛みに苦しんでいます。そこで、検査方法も進化しています。


MRIで撮影した膝関節を、特殊なコンピューターソフトを使って映し出すと、軟骨の中の「プロテオグリカン」という成分の量が分かるのです。軟骨はその7割が水分でできています。水分が多いので、クッションの役割を果たすことができるのです。
プロテオグリカンは、水分を軟骨にとどめておく作用があります。しかし、プロテオグリカンは、加齢とともに減少してしまいます。プロテオグリカンが減った軟骨は、すり減りやすくなってしまうのです。

筋トレをしましょう!!

この特殊なMRI検査によって、変形性膝関節症の早期発見が可能になります。早期発見ができると、体重を減らしたり、運動療法などに取り組むことで、変形性膝関節症の進行を食い止めることができるのです。

今回紹介した2つの医療は、いずれも最新医療です。しかし「人工関節のポリエチレン」も、「MRIという検査機器」も長年使われてきたものです。それに「ビタミンE」や「特殊なコンピューターソフト」を加えることで、バージョンアップを果たしたのです。
医療技術の進化は、「遠いお話し」などではなく、私たちの生活の質に直に関わっていることがよく分かる事例ではないでしょうか。

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