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進化するがん治療機器(下)

医療ニュース
今回のホームページ制作に役立つコンテンツは、1月30日(金)日経新聞らいふプラスに掲載の「進化するがん治療機器(下)」をご紹介させて頂きます。

昨今、がん治療の方法として画像で体内の様子を確認しながら、細長い針やカテーテルを差し込んで治療するケースが増えてきています。
これは「画像下治療(IVR)」と呼ぶ手法で患者の負担が軽く・高齢でも受けやすく、またがん細胞を死滅させる治療の他に患者の痛みなどの症状を和らげる緩和治療としても使われています。

国立がん研究センター中央(東京・中央)は2014年12月、「IVRセンター」を開発しました。最新のコンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)などが並び、すでに多くの患者が利用しています。
病巣を切除する外科手術はがん治療の柱の一つですが、腹部などを大きく切除する手術は患者の負担につながります。全身麻酔が必要なケースも多く、体力が落ちた患者などでは手術を見送る例もあります。
 

翌日退院の場合も

これに対し画像下治療は、撮影した患部などを画面に移しながら、器具を使って治療を行います。患者は治療時にチューブなどを通す小さな傷が出来る程度で、局部麻酔で済みます。中には「翌日に退院できるケース」も多くあります。
今まで負担の少ない治療では、内視鏡手術が一般的には知られていました。そんな内視鏡が小さな鍵穴から中を覗き込むようなイメージだとすると、画像下治療は体の外から全体を見ながら治療するという点が異なります。
また、画像下治療では、肝臓がん向けと骨に転移した人向けなどが保険の適用になっています。
小さながんなら一般的な手術をしなくても治ることから、高齢などで体力が落ちた患者でも受けることができます。

一方、患者の生活の質(QOL)を大きく上げる要因となる痛みの緩和でも、画像下治療は威力を発揮します。薬だとなかなか抑えられない痛みでも、画像下治療を活用すれば緩和できるケースがあります。
その他にも、がんが大きくなって血管や消化管を圧迫している患者に使われることもあります。腹部に水がたまる「腹水」も治療対象になります。
 

医師間では浸透せず

課題は普及が一部の医療機関にとどまる点です。その原因は、保険が適用される治療が限られている点が影響していると思われます。例えば、血管を広げるステント(金網状の器具)は動脈は保険がきくが、静脈では基本的に自費診療となり、数十万の費用がかかります。日本IVR学会では、効果や安全性に関するデータを蓄積し、保険適用の拡大を目指すとともに、緩和治療でも画像下治療が浸透していくように状況の改善を目指していこうとしています。


画像下治療を検討したい患者は、まず主治医に相談することが大切です。
治療を受けている病院で実施していない場合は、日本IVR学会のホームページで専門治療が受けられる施設などが確認できます。