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今回は『子どもの脱腸「小児鼠径ヘルニア」の症状』をご紹介させて頂きます。

乳幼児の約5%に発症する病気

「ヘルニア」は、体の中にある臓器などが、本来の場所からはずれて飛び出してしまった状態をいいます。「鼠径」とは、足の付け根あたりを指します。つまり、「鼠径ヘルニア」とは、足の付け根から恥骨(生殖器のすぐ上にある骨)にかけての「筋膜(皮膚の下にある薄い膜)」に穴があいてしまうことで、小腸などが皮膚のしたに飛び出す症状の病気です。昔からいわゆる「脱腸」と呼ばれている症状です。

大人では、加齢で筋膜がゆるみ始める40代以降の層に見られる症状です。子どもは、乳幼児の約5%が発症しています。定期検診(1歳6ヶ月や3歳)に、医師から指摘されるケースも少なくありません。男の子に多く発症し、男女の発症率は「4:1」といわれています。男の子はだいたい「小腸」の一部が、女の子の場合は「卵巣」の一部が出てしまうことが多いようです。

足の付け根に「腫れ」が見つかったら

オムツ替えや入浴時には、できるだけ(体を冷やさないようにして)、赤ちゃんの体の状態や様子を確認するようにしましょう。男の子なら片方の陰のう(睾丸を入れる袋)が、女の子なら足の付け根が、普段より「腫れている」と感じたら、それは「小児鼠径ヘルニア」かもしれません。

また、小児鼠径ヘルニアは、出たり入ったりすることがあり、ママやパパが気がつかないこともあります。出やすい(見つけやすい)のは、
(1)泣いてお腹に力が入ったとき
(2)オムツ替えでいきんだとき
(3)お風呂に入ってリラックスしたとき
(4)歩きはじめたときです。
第一子の赤ちゃんでは、ママやパパも新米のため子育てに不慣れで、どうしても見逃すことがあります。できるだけ、子どもの体を確認する習慣を持つとよいでしょう。

赤ちゃんが「いつもより、よく泣く」様子が見られたら

小児鼠径ヘルニアでは、痛みが出ることが多く、赤ちゃんが頻繁に泣く様子が目立ちます。さらに、嘔吐をくり返すことも特徴の1つです。寝つきが悪くなり、眠りが浅い状態が続き、不機嫌な状態が増えるでしょう。

症状がごく初期であれば、ヘルニア部分(ふくらみ)はグニュグニュと軟らかく、指でそっと押すと元に戻ることがあります。そしてなかには、うまく収まって治ることもあります。しかし、稀な状況といえるでしょう。

小児鼠径ヘルニアは、戻ったり出たりをくり返すのが特徴です。そして、ヘルニアの症状が長く続くと、鼠径部(足の付け根あたり)が硬くなって、小腸(あるいは卵巣)が戻らなくなります。これは「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる状態です。

嵌頓した症状が悪化すると、飛び出た腸などが締め付けられて、血行障害を起こすことがあります。また、ヘルニア部分が固くなると、手術などの処置が必要です。昔から「自然に治ることもある」と言われますが、放置するのは危険です。すみやかに、「小児科」や「小児外科」を受診に、専門医に相談しましょう。

原因のほとんどは「先天性」なもの

小児鼠径ヘルニアの原因の多くは「先天的」なものです。お母さんのお腹の中にいるときに、腹膜の一部が閉じられないまま生まれたことで、鼠径ヘルニアの症状が起こります。

男の子に多いのは、生まれる少しまえの過程に理由があるようです。「睾丸が陰のう内に降りてくる」プロセスで、陰のうといっしょに腹膜も引っ張られ、伸びたときにできた穴が、その後に自然に閉じられず、生まれてから「鼠径ヘルニア」が起こりやすくなります。

女の子の場合は、「ヌック管」と呼ばれる管が出産が近づくタイミングで降りてきます。すると、男の子と同じように腹膜が引っ張られて、伸びたときにあいた穴が閉じられずに、生まれてきたときに、小児鼠径ヘルニアを引き起こします。

「約30%」の子どもは、自然に治る

子どもが1歳未満であれば、自然に治ることが可能です。実際、小児鼠径ヘルニアの約30%は自然治癒しています。しかし、過度な期待は禁物です。鼠径部に「ふくらみ」を見つけたら、すみやかに「小児科」や「小児外科」を受診しましょう。

症状にもよりますが、年齢が1歳を超えていると、外科手術を検討することになります。手術は、「開腹手術」と「腹腔鏡手術」のいずれかによって行われます。どちらも、「ヘルニアのう」の根元を糸で縛り、小腸などが外にはみ出さないようにする処置です。

どちらの方法で行うかは、医師の説明をよく聞いて、相談して決めます。医療機関によっては、日帰り手術を行うところもあるようですが、一般的には2〜3日の入院が必要となるでしょう。

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