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今回は『加齢にともなう「サルコペニア」を予防しよう!!』をご紹介させて頂きます。

「栄養」と「老化」に関する造語

サルコペニアとは、加齢などの理由によって筋肉量が著しく減少し、体の筋力が低下する状態のことです。聞き慣れない言葉と感じるのも無理はありません。1989年、臨床栄養学を研究するアーウィン・ローゼンバーグ博士によって、栄養と老化の視点からアメリカ栄養学会雑誌にはじめて紹介された言葉だからです。

サルコペニアは、ギリシャ語で筋肉を意味する「sarx(サルコ)」と、減少を意味する「peni(ぺニア)」を合わせて作った新しい単語です。日本では、「加齢性筋肉減弱症」という名前が付けられています。メタボリックと同じように、人々が予防する意識を高めるための病名と考えてよいでしょう。

65歳以上の「約20%」がサルコペニア

総務省統計局が2016年に発表した人口推計のデータによると、日本に住む65歳以上の高齢者は「約3461万人」で、総人口の約27.3%になります。この数字は過去最高の割合です。前年と比較すると、約73万人増えています。さらに、70歳以上の高齢者は「約2437万人」で、総人口の約19.2%を占めています(前年から約19万人増加)。

日本では、65歳以上の高齢者の約20%が、「サルコペニア」にかかっているといわれています。そして年齢が進むごとに、その割合は上昇しています。サルコペニアは、進行するとその症状は上半身よりも下半身にあらわれやすくなります。すると、歩行障害が心配され、転倒による骨折するなどの事故が増えることになるでしょう。また、体を動かす機会が減少すると、感染症、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中など大きな病気へのリスクが高まります。

筋肉量は「30歳から」減少する

現在、高齢化社会の日本では、「個人がいかに健康寿命を伸ばすか」が大きなテーマです。サルコペニアは、高齢者によくみられる症候群ですが、そもそも筋肉量の低下は30歳を越えると1年に約1〜2%ずつ減少します。そして80歳になる頃には全身の筋肉の約30%が失われてしまいます。

筋肉量の低下は、高齢者になってから注意するのではなく、若いうちに意識して対策を取ることが大事です。サルコペニアがきっかけで、寝たきりや要介護の状態になる可能性があると指摘されています。早い段階でサルコペニアを予防し改善することが、健康寿命を伸ばすことにつながるでしょう。

日本人向け「サルコペニアの判定基準」とは?

サルコペニアかどうかの判断は、欧米人やアジア人向けの基準では、体格や生活習慣の違いがあって正しい判断が難しくなります。そこで、EWGSOP(European Working Group on Sarcopenia in Older People:ヨーロッパ人によるサルコペニアを研究するための作業部会)と、AWGS(ASIAN working Group FOR SARCOPENIA:アジア人によるサルコペニアを研究するための作業部会)の基準をもとに、日本では国立長寿医療研究センターが定めた簡易基準が利用されています。

65歳の高齢者を対象に、
(1)歩行速度
(2)握力
(3)BMI値の低下、あるいは下腿囲(ふくらはぎの周りの長さ)の減少を測定し、サルコペニアを判定します。
次の判定基準(数値)を下回ると、サルコペニアと診断されます。

<歩行速度>
男女とも:秒速0.8m以下

<握力>
男性:26kg未満
女性:18kg未満

<BMI値>
男女とも:BMI値(体重 ÷ 身長 × 身長)が18.5未満、あるいは下腿囲が30cm未満

予防は「適度な運動」と「良質な栄養」

サルコペニアは、
(1)体に合わせた適度な運動
(2)良質な栄養摂取でかなりの予防が期待できます。
運動では、上体起こし、お尻上げなどの「体幹筋」や、足上げ、もも上げなどの「下肢筋」を習慣的に(日課として)トレーニングすることが大事です。

食事は日本人の体のバランスに合わせると、やはり一汁三菜(あるいは一汁二菜)といった和食中心の生活がよいでしょう。そして、豆腐や納豆などの大豆類や、適量の肉や魚を定期的に摂ることで、良質なたんぱく質を体に取り入れるようにしましょう。