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今回は『働き盛りの男性に多い「中心性漿液性脈絡網膜症」とは?』をご紹介させて頂きます。

本記事はこんの眼科(さいたま市浦和区)の今野 泰宏(こんの やすひろ)院長にご監修いただきました。

とても「長い名前の病名」だけれども…

中心性漿液性脈絡網膜症は、見慣れない言葉がたくさん並んだ病名です。病名を見ただけでは、どんな病気か想像できないでしょう。しかしこの名前を1つずつ確認しながら見てみると、どのような症状であるのかが分かってきます。

私たちの目は、瞳孔から眼球のなかに入ってくる光を刺激として網膜で感じとり、その視覚情報を脳の視神経に伝達しています。網膜はカメラでいうとフィルムに相当します。

網膜は9層の感覚網膜と1層の網膜色素上皮から構成されています。網膜色素上皮は、いちばん外側(奥側)に存在する層です。網膜剥離は、さまざまな原因によって感覚網膜が網膜色素上皮から剥がれる病気です。中心性漿液性脈絡網膜症(ちゅうしんせい ー しょうえきせい ー みゃくらく ー もうまくしょう)の「網膜症」とは、網膜剥離のひとつです。

中心とは「網膜の真ん中」

次に「中心性」について見ていきましょう。網膜には、光の刺激を感じて吸収し電気信号に変換する視細胞があります。視細胞がもっとも密集している網膜の中心部分を黄斑といい、さらに真ん中を中心窩といいます。

私たちが物を見るときは、黄斑に向かってピントを合わせています。中心性漿液性脈絡網膜症の「中心性」とは、「黄斑」のことを意味しています。

網膜に発生した「小さな水ぶくれ」

「漿液性」と「脈絡」についての話に入ります。網膜の外側には脈絡膜と呼ばれる膜があります。脈絡膜は血流が豊富で、眼球や網膜に酸素と栄養を供給し眼球からの老廃物を排出する働きをします。中心性漿液性脈絡網膜症は網膜の中心(黄斑)で、感覚網膜と網膜色素上皮のあいだに漏れた水が溜まり、網膜剥離を起こす症状です。

水ぶくれの水は、黄斑などに酸素や栄養を供給するために脈絡膜に流れる成分で、「漿液」と呼ばれます。そして漿液が感覚網膜と網膜色素上皮のあいだに溜まって盛り上がり、部分的な網膜剥離が起こっています。剥離の程度は軽いですが、最も敏感な部分に起こってしまうので視機能の低下が起こってしまうのです。

視野の中心が「暗く見えた」ときは

中心性漿液性脈絡網膜症の症状は、患者の多くは「見え方が変です」と受診されます。視力低下の程度は軽い場合がほとんどで、訴えとしては以下の通りです。

・視野の真ん中が暗く見える(中心暗点)
・物が歪んで見える(変視症)
・物が実際より小さく見える(小視症)
・物が実際の色と違って見える(色覚異常)

症状は明確ですが、病気の原因は明らかになっていません。今のところ、過労、睡眠不足、ストレスが挙げられています。そこには、30~40歳代の働き盛りの男性に多く発病していることが関係しています。仕事などで無理を重ねた体に起こりやすい病気といえるでしょう。

「自然に治る」ケースが多い

中心性漿液性脈絡網膜症では、片目だけに起こるケースがほとんどで、両目同時に発病するのは稀です。しかし片目が完治したあとに、反対の目に症状が出ることがあります。

疲れがたまったときに、中心暗点、変視、小視などの症状が感じられたら、早めに「眼科」を受診しましょう。OCT (Optical Coherence Tomography、光干渉断層撮影)や蛍光眼底検査(蛍光色素を腕の静脈から注入して、網膜からの漏れを確認する検査)によって、漿液が漏れているかどうかが確認されます。

自然に治ることも多く、「経過観察を続ける」との判断もあります。過労やストレスが関係した病気ですので、まずは体をゆっくり休めて、心穏やかに過ごすことが大事です。状態によっては内服薬で経過観察、漏出点が明らかな場合はレーザーによる治療が検討されます。再発も多く、その度に視細胞の機能が落ちていくので、しっかりと経過観察することも大切です。また、中心性漿液性脈絡網膜症の病歴がある人は、加齢黄斑変性を発病しやすい傾向があります。

【この記事の監修・執筆医師】

こんの眼科

今野 泰宏(こんの やすひろ)院長

〒330-0061 
さいたま市浦和区常盤10-7-11

TEL:048-830-0533

<参考>

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